小話−ある夜行列車にて

両替ができずドルはあるのに貧乏な私。
夕食は諦めて、水だけ確保し列車に乗り込んだ。
クーペ(4人用)の下段寝台だった。横になってガイドブックを読む。

男が二人入ってきた。年配と若め。どうやらこの人達が同室らしい。
続いてもう一人、大荷物のおばさんがやってきた。
女3人組親子らしいが2人は別の部屋らしい。
てか、なんでこんな大荷物?
ベッドの下に荷物を入れるスペースがあるのだが入らない。
仕方ないので備え付けの小さなテーブルの下のスペースに押し込む。
私の荷物を置く場所が・・・ま、いっか。

若い方の男性はすぐ外へ出て行った。おじさんとおばさんが話を始める。
基本的にウズベキスタン人は話し好きらしい。初対面でもすぐに話し出す。

列車が動き出す。
とうとう私も話しかけられた。ウズベク語で・・・
「あの、ウズベク語はわからないんです」
「あ、やっぱり。外国人だと思ったよ。だって話さないから」と笑う。
なんだか面白いおじさんだ。

若い男性が戻ると、おじさんは食堂車で一緒に夕飯を食べようという。
「あ、でもお金(ウズベキスタン通貨のスム)がないから・・・」
「いいよいいよ。出会った記念だ、俺たちが出すからおいで。」
素直についていく。暑いしビールを飲みたかったし夕食も!

食堂車につくと顔なじみが多いらしく、おじさんはひとしきり
みんなと挨拶し、そのたびに「この子は日本人なんだよー」と触れ回る。
彼ら二人は弁護士(はじめは単に法律関係の人と思っていた)で、
タシケントでの国際会議に出席してたとのこと。
朝、ブハラについたらそのまま出勤だと言う。
この夜行列車は便利なのでよく使っているので知り合いも多くなったそうだ。

若い男性は寡黙でこのおじさんのハイテンションが気にいらなそう。
会議で疲れていて、ちょっと頭も痛かったらしい。
なかなか料理がこないし、ビールも来なかったし・・・なおさらかなぁ。
ビールで乾杯して、カツレツを食べる。
夕飯なしを覚悟していただけに、とても嬉しい。

おじさんが他の人達と話していたとき、この男性に「彼はお父さん?」
と聞いたら、心外そうに「親子に見える? 同僚だよ。」と言われた。
「あ・・・いや、年齢がそんな風に見えたので(汗)」とフォロー。
続けて「彼、非常に明るい陽気な方ですよね。」と話を振ってみる。
「あいつはいつもああなんだ。どんちゃん騒ぎばっかりさ。」と言い放つ。
「君もいやだったら無理につきあうことはないからね。キリがないから」

・・・うーん。なぜか親子だと思いこんでいた。
確かに、言われてみればキャラクターが全然違う。
“息子同席の父”が私に親切にしてくれるのと、“単なるおじさん”が
親切にしてくれてるのとでは、こっちの受け止め方もかなり違ってくる。
彼のアドバイスに従い、疲れるときは適当に流した。
だって、
「僕のアパートに是非招待するよ、泊まってってくれ」とか
「じゃ、せめて僕のアパートで朝食をとっていってくれ」とか
「みんなで君をバーベキューに招待するから明日のお昼は是非!」とか
延々とそんなのが続いたので・・・

食堂車を出ると、私は早々に横になった。
おじさんはその後も他の人と飲み続けて、だいぶたってから戻ってきた。
案の定いびきをかいたが、眠れない程ではなかった。

次の朝、おばさんの娘達がこっちの部屋に集まってきた。
持参した朝食を食べ、おしゃべり。身支度(お化粧)もする。

と、突然「黒のカランダシ(鉛筆)持ってる?」と聞かれた。
「えっと黒だとシャープペンシルならあるけど?」と言って現物を見せる。
「あ、それだったらいいわ。ありがと。」

なんだか不思議な気分だったんだけど、その後すぐに判明。
彼女は眉毛を描き出したのです。
あ! 化粧用ペンシルのことだったか!!!(恥)
だって唐突に鉛筆っていうからさぁ。思いつかなかった。
ま、どっちにしろ黒は持ってなかったんだけどね。

駅につくと、町の中心まで乗り合いバスが出ている。
おじさん達と一緒に乗る。彼らは新市街で下りて、私は終点まで。
一応泊まる予定の連絡先は伝えて別れました(結局連絡取れなかったんだけど)。
それにしても夕食のご恩は忘れません。ありがとうございました。
2004年01月
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