咲作:こなつ                      

第2話-その3    

 彼はさっきから将志と呼ばれていた。私より二、三才年下のようだ。先輩に連れられて今日の合コンに参加したらしい。
「ひろみさんって
あまり男に媚びないタイプみたいだね。」
「う〜んどうだろう・・・」
「だって俺のコップ、ビールが空なのについでくれようとしないんだもんな〜たいていの女の人なら横にいる男の
コップって気にならない?」
そう言って私の前にコップを突き出す。
その手を軽くはたいて、 「たいていの女って何?飲みたかったら自分でつげばいいでしょ。甘えるんじゃないの」
「あ〜冷たい・・・」
少し落ち込んだ様子で、自分でビールをついでいたが、次の瞬間、ぐっと私の肩を抱き寄せ、顔を耳元に近付けると、
「そういうひろみさんってかっこいいよね。」と、そう囁いた。
一瞬、彼の使っているムースの香りが私の鼻孔をくすぐり、彼の大きな手の感触にどっきと
した。
「こら、なれなれしいぞ!」
そう言いつつ、彼の腕をふりほどこうとしてさわった手は、やはり大きく、良く見ると
きれいな長い指をしていた。
『なんて大きな手なんだろう・・・。』
見とれている私がドキドキしているのをわかっているように、彼はクスクスと笑っている。
思わず、ふん、と横を向いたが、私の肩には彼の手の感触が鮮明に残っている。
横を向いてもその手が気になり、ちらっと見ると、彼はたばこに火をつけようとしていた。