「巣」



「暑さ寒さも彼岸まで」今年もそろそろ冷房とお別れだろうか。
しかし、今年の暑さは酷かった。エアコンなしでは生きていけなかったかもしれない。
だがこの暑かった夏、私の実家に恐ろしい事件が起きたのだ。

「ん?このエアコンおかしいぞ」
それはお盆の真っただ中の暑い熱い日の事、父が寝室のエアコンの異常に気付いた。
寝室と言っても寝たきりの母の為に父が一日のほとんどを過ごす居間のような部屋で、エアコンはフル回転だった。
「えええ?おかしいって、どういうことよ」
見に行くと、なんかランプが点滅している。こんなのは見た事がない。おまけに電源を入れてもすぐ停まってしまう。やばい状況だ。取り扱い説明書を引っ張り出して見てみた。
「えーと、このランプが点滅してる時は、なんらかの異常が発生してますので電器店に連絡して下さい、だって〜?!」
「なんだとぉぉお?今はお盆だぞ、お盆!」
実家はパニックになった。

なんせ母は体温調節機能が麻痺しているので、ただでさえ室温管理にひどく気を使うというのに、頼みの綱のエアコンが動かないのである。室外機に草がからまってるんじゃないかと草刈りをしてみたり、2日ほど前にやったフィルター掃除を再度してみたり、手を尽くしたがやはりダメ。もちろん電器店はお休みだった。

そうこうしている内にもどんどん室温は上がってくる。しょうがない、奥の手だ。
隣のLDのエアコンを最強モードにして、さらに部屋の境に扇風機を置き、風の流れを作ってみる。
「おお、すこし涼しい風が入ってきた」
父は喜んだが、LDにいる姉と私は強風直下に震えていた。
「やっぱり寒いからあっちの寝室に行こう」
姉と私は両親のいる部屋に避難した。
しかし、人間は熱を持っている。
「やっぱり人間が集まると暑いのね」
私はLDに追い出された。
「さ、寒い……」
外に出れば炎天下、家に入ると冷蔵庫、身体をこわしそうな数日が過ぎた。

そして、やっとエアコンの修理に来てくれたおじ様は、ものの数分で故障の原因を教えてくれた。
「いったい、何が原因だったんですかっ!?」
「うーん、ナメクジがね……」
「はあ?」
「だからナメクジがね、室外機の中に巣くって、マイコンの基盤をショートさせちゃったんですわ」
「巣くうって、……ナメクジが」
「はい、ナメクジが」
しばらくショックから立ち直れなかった。
おまけに部品を取り寄せになるからまだ数日は動かないままだという。
だぶるしょっく。

「……あのぉ、こういう事ってよくあるんですか?」
気を取り直した私がおじ様の助手青年に聞いてみると、彼はとても言いにくそうに「ま、他の例えばゴキブリとか、が入るのは、よくあるんですけど……」
たたみかけるように私が
「ナメクジはあまりないって事、ですか」
と聞くと
「いや、あの、まあ、そうですね」
と言葉を濁し、彼は去っていった。
そうか、レアケースなんだ。
数年前までお風呂場に多数出没していたナメクジたちが、なぜエアコンの室外機に目(あるのか?)をつけたのかわからないが、そもそもそんなに出没する事自体、ウチが田舎って事?
ねえ、そうなの?

そんなに田舎?
ねえ……。

教訓:ナメクジにとって魅力的な浴室を復活させよう。





もどりますか?

<indexへ><じんせいまいにちべんきょーじゃへ>