11月の花:スモールマーガレット
「ふたりの心を強くひきつける愛の喜び」




「で、誰なの?」
お昼休み。突然るいが顔の前に現れて、私は目を丸くした。
「えっ何?」
「だから、アンタの相手って、誰なの?教えなさいよ。」
「なんで・・」
「だって、そーんな眼をしてグランドの方なんか見つめちゃって、はあーーーーっとため息ついちゃってたら誰だって分かるってぇ!で、誰?」
相変わらず、るいはスルドい。
お弁当を食べ終わって窓の外をぼーっと見てたら、5限、1組は体育みたいで早いコはもうグランドに出てるのが目に入った。
その中に、彼がいた。
いつも元気いっぱいで、明るくって、笑顔がとびっきりカワイイ。いかにもクラスの人気者って感じ。でも私はそんなところに惹かれたんじゃない。

夏休み、るいの誕生日に花束を贈ろうと偶然入った花屋さんに彼はいた。
私がるいのイメージをたどたどしく伝えるのを一生懸命に聞いてくれて、店の奥にいたお母さんと一緒に、それはそれは素敵な花束を作ってくれた。その時の瞳にヤラレたんだと思う。
2学期になって、1組に彼がいるのを見つけた時はびっくりした。でも。
あの時が嘘のように、今は声すらかけられない遠い存在。思わずため息も出てしまう。

「るい、どーせ片思いだから、ね。」
「そんなことわかってるわよ。アンタに彼氏がいたらもろバレだもん。だからぁ、誰?」
「・・・。」
「あ、あれは、1組だっけ?」
るいがグランドの方を指す。
「そ、そうだけど!見てたからってあの中にいるとは限らないでしょー!!」
「あ、そう。あの中にいるんだ。アンタってホントにわかりやすいわねぇ。」
ニヤニヤ笑う、るい。
「もー、るい!」
食後だというのに胃をそっちのけで全身の血が頭にのぼってしまう。
「ご・め・ん・。 で、いつ言うの?ヤツに。」
「い、言うなんてとんでもないっ。話もできないのに。私なんか見てるだけでいいの。」
「うそつき」
るいが急に真面目な顔して私をにらむ。
「そんなこと本気で思ってないでしょ。私、知ってんだぞ。アンタがヘンな占いをやってんの。」
「!」
「そこの窓際の花瓶の花、なんちゃらマーガレットっていうんだっけ。その花びら、今朝むしってたでしょー。もー、古典的な花占いっ!彼は私の事が好き・嫌い・好き・・」
「いーじゃないっ、それぐらい。」
「いーわよぉ。別に。で、アンタまさか<嫌い>が出たからあきらめるとか言わないよね?」
「・・・(図星)。」
「あーっ、アタマ痛っ」
「だって!彼、女のコは苦手みたいで、うちの女子クラスの前を通る時なんか顔が真っ赤になってるの、見た事あるんだもん。」
「それが?どうしたの?」
「私はるいとは違うのー!」
「ま、いいけどね。私は1組にアンタのことが気になってるっていうコがいたからさ、ちょいとどうかなーって思っただけで。」
「嘘っ。るい、それって、誰?」
まさかとは思うけど気になる。
「ん?えーとね、あ、あの中にいるよ。」
るいが、だいぶん人の増えてきたグランドを指す。
「だから、誰?」
「アンタが彼の名前教えてくれなかったから、教えてあげない。」
「るいー」
「それがさー、笑っちゃうのよね。そいつ男のクセに毎日花を抱えて登校するのよ。」
「花?」
「そう、それで各クラスの花瓶に生けてるんだってさ。そのマーガレットも、そいつの。なんでも家が花屋で昔から花に囲まれてるのが好きとかで。」
別の意味で頭に血が集まってきた。もしかしてそれって、彼なの・・か、な。
「あんたたち、何となく傾向が似てんのよ。合うと思うよー」
るいは、私の疑問の答えを知ってるかのように、にんまりと笑ってこっちを見る。
「花占いでさ、<嫌い>で終わった時は<好き>で終わるまでまたやればいいのよ。自分を後押しできる小っちゃな口実作りなんだからさ。ほら、もう1回やってごらん。」
るいがマーガレットを一輪取って私によこした。
「るい・・・」
まっすぐ伸びた茎を持って、クルクルとまわしながら私は考えた。もし、これが彼の生けたマーガレットなら、もう1回だけやってみようか。そして、<好き>がでたら・・。


1枚目の花びら<好き>をとった瞬間、グランドの彼と眼が合った、ような気が、した。






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