4月の花:チューリップ
「博愛」「かなわぬ恋」
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(そういえば、昔はこのへんに花壇があって、今頃はチューリップが咲いてたっけ。)
本当に久しぶりに庭に出た。ついこの間まで無彩色だった景色が、いつの間にか眩しいくらいに色付いている。
でも、昔の庭とは違う。庭いじりの好きだったお母さんが倒れて半年で、ここはすっかり荒れ放題の野原になってしまった。
そして、私の心も。
今まで病気ひとつしたことのなかったお母さんが突然の病気で生死の境をさまよっていた時は、何をどうしたらいいのかわからず、毎日不安で泣いていた。お母さんの担当医であるK先生の優しい笑顔はそれだけで救われたような気がした。そして、お母さんが奇跡的に回復し、リハビリをするようになる頃には先生の声、瞳、仕草、すべてに彼の優しさを感じていた気がする。
(もしかしたら、私が相手だからこんなに優しいのかな。)
のぼせ上がるのにそんなに時間はかからなかった。お母さんが自宅療養をするようになってからも通院する時には必ず付き添って行った。
でも、知っちゃった。K先生にはちゃんと奥さんがいる。そう、彼はみんなに優しかった。<母親の世話を献身的にするいい娘>を必死にアピールしてた私がばかみたい。恥ずかしくて悔しくて、悲しくて、落ち込んで、思わずお母さんにもあたってしまった。
何にも悪くないお母さんを悲しませたことにもイライラして思わず外に飛び出してきてしまった。
しばらく庭をぶらぶらしてみる。
気がつけば、雑草にも、頬を撫でていく風にも、荒れ果てている庭のあちらこちらに春の気配。あたたかい空気で少しずつ心に突き刺さったとげが抜けていくような気がする。
(よーし、雑草でもとるかな。花壇の土を掘り起こして、そうだ!昔のように花いっぱいの庭にしよう。)
来年には、きっとすっかり元気になったお母さんとチューリップの花を見ることができるかもしれない。その頃にはもしかして、新しい恋も・・・。
もどりましょうか?