話 :500円玉自

 あれは四年程前の話。

その頃私は広島にあるイベント会社で働いていた。
イベント会社の夏ははっきり言って、休みがない。
その夏もうちの会社はめちゃくちゃな話を受けてきた。
島根県にあるスーパーで毎週土曜日に客寄せの夜市をやるから金魚すくいなどの夜店をやってくれという。
夜店の時間は6時から9時まで。これがひと夏続く。
念のため言っておくが、広島から島根のその店に行くのには、高速道路なんてモノはない。準備に2時間かかるから
広島を出るのは昼前、終わって片付けてから帰ってきたら
夜中の2時過ぎてな具合のしんどい仕事であった。
(もちろん次の日も早朝からイベントはある。)
 しかし、楽しい事もあった。それが今回のお題である。


 片道4時間半のドライブの途中で、その道には唯一存在するファミレスもどきに寄った時のこと、駐車場の端に自販機があったのでコーヒーでも買おうと200円を入れ、ボタンを押した。
大きな音がして缶が出てきたので、取出口に手を入れようとしたら蜘蛛の巣がはっていて、これは相当長い間、誰も買ってない事が容易に分かった。
 さて、おつりが出てるはずなので返却口に手を入れると
「!!!!!!!!」
なんと500円玉が2つと100円玉1つ50円玉1つ10円玉6つがあったのである。
「らっきー。」
そう、誰かがおつりをとり忘れたのだと最初は思った。
 だが、そこで私はある事に気がついた。その自販機には千円札を入れるところがないのである。さらに500円を受け入れられる程硬貨の口も大きくなかった。つまり、誰かが、返却口に直接お金を置いていったとしか考えられないのである。
 でも、ま、返す必要も感じなかったし、有り難くいただいた。


1週間後、またその自販機でコーヒーを買った。その時はちょうど小銭を持ってたのでおつりが出ないはずだったが、念のため、返却口に手を入れた。
「ええええええええっ!」
またもや500円玉1つと100円玉がいくつかあったのだ。
もうこれはどこかにテレビカメラでも置いてあって、人間の正直度でも観察してるに違いないと思って、私はお金を握りしめて走って逃げた。


 これで終わりではなかった。
翌週とその翌週は無かったが、最終週はちゃんと500円玉が2つあったのである。気持ち悪さを通り越して、嬉しかった。

 その後、あの自販機のある道を通る機会が無く、残念ながら謎は解けないままなのだが、いつか訪れてみて、返却口にもし、500円玉が四年分ざくざく入ってたらどうしようかと今から楽しみである。 
 




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