話:金魚屋さん繁



私は総合広告代理店という名のイベント屋の社員をしていたことがある。
スーパーなどで夏の客寄せといったら閉店時間を遅くして夜店をするのが人気。
うちが店内イベント契約をしていたところも夜店をしたいと言い出した。
スーパーボールすくいとか水ヨーヨー、簡単なゲームとかは準備も簡単なんだけど金魚すくいはつらかった。
一番大変なのはすくう道具「ポイ」に紙を張ること。経費削減のため、自分で張る。
薄いからすぐ破れるし、丈夫に張りすぎると商売あがったりになる。
ひと晩に使う「ポイ」は500枚程。その店では週1回夏の6週間夜店をしたから、3000枚。うちが金魚すくいをするのはここだけじゃないからひと夏で5000枚くらい作った。気分は傘貼り浪人。内職をする主婦。
その苦心の「ポイ」を、当日はみんなで次々と破るんだ、下手くそーーーーっ!
「残念だったねー、また頑張ってねぇ」
なんてニコニコ笑いながら、複雑な涙を心の中で流していた。
でも、大変だったのは実は当の金魚たちだったかもしれない。
その会社は広島県にあり、金魚は山口県境の山奥にある金魚養殖場に買いに行く。
すると大きなビニール袋に水とたっぷりの空気と一緒に金魚を百匹ほど入れてくれる。
その袋をバンの荷台に数袋積んで、現地に向かうのだ。
その現地は島根県にあった。(その途中に「500円玉自販機」があるのだ。)
昼過ぎに出発して到着するのは夕方4時前くらい。私もぐったりだが、金魚もぐったり。
心情としてはすぐに新鮮な水に放ってあげたいところだが、それは厳禁。
まず金魚すくいのボートに水道水を張ったら、塩素を中和する薬剤をぶちこむ。
それから金魚達をまずは袋ごと水に浮かべる。水温に慣らしてやるのだ。
これをしないと、せっかくはるばる運んできた金魚ちゃん達がプカプカ浮いて来て大惨事になるっちゅうわけやね。
で、本番になるとガキんちょから逃げ回り、くたくたになりつつも逃げおおせたら私から「けっ!売れ残ったぜ。どうしてくれよう」などど罵声を浴び、結局小袋に入れられて買い物帰りのじい様ばあ様に「プレゼントですー」とかいって、押し付けられるのが関の山という怒濤の1日を送ったのだよ、哀れなり金魚達………。
お片付けをして帰途につく頃には私の口数も少なくなり、自分のベッドに倒れ込むのは午前2時から2時半すぎ。翌日も昼からイベントの手伝いに行ってたんだから、やっぱり私が一番つらかったのだと思うんだけど、金魚達どう思う?





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