凧とわたし
あれはいつだっただろう・・・たしか…小学4年生ぐらいの12月だったと思う。わたしの住んでいた所では、町内会で子供会というのがあり、たまに子供相手になにかをする大人の集団があった。
そんなある日、その会の提案で『子供を集めて凧を作ろう』という事になった。竹ひごと包装紙や新聞、作業道具は、はさみ、のり、セロハンテープで作るという、ごく簡単な物だった。それでも子供にとって十分遊べる物に仕上がっていて、しかも簡単。わたしはこういう工作というか何かを作るのが好きな人。
「これは家に帰っても作らなきゃ」
と思い、作成方法をしっかりと覚えて帰った。
どうも大きな公園で、正月に凧あげ大会というのが開催されるらしい。その為に教えたのかは今となっては覚えてない。昔から人の話は聞かない方だった…それはいいとして…。
これは是非とも参加せねば。そうと決まったらどんな凧にしよう…。とにかく竹ひごを購入。包装紙は何処から入手したのか、何故かロール状になって家にあった。しかも某有名デパートの…。かなり大きい包装紙だ。新聞の2倍以上あったように思われる。これを有意義に使わない手はない。出来上がってみるとかなりでかい。150x100(単位cm)ぐらいあっただろうか…。(もっとあったような……)
大会当日がやってきた。従兄弟2人を引き連れ、さっそうと出発するわたし。そんなでかい凧を持って紙屋町(広島中心部)をねり歩くガキ3人。はっきり言って不気味だ。しかも某有名デパートの包装紙製。
とにかく現地に到着。さて、凧をあげよう……まてよ?テストしてないよ、これ……。ぶっつけ本番だ。だいじょぶか?これ・・・
そんな不安はすぐに消えた。想像以上にバランスがよかったのだ。みるみるうちに、どんどんあがっていく凧。どんどん出ていく糸。しまった…凧糸が足りない。従兄弟に言って買って来てもらうハメに…。幸い近くで売っていたらしく、従兄弟はすぐ戻ってきた。凧が大きい分、風の抵抗も大きい。少々の重みは大丈夫。凧糸を結んでいる棒ごと繋ぎ合わせる事にした。2人が凧に繋がっている凧糸を支え、もう一人が接続する。二人で持っていないと辛いほどの重みがあった。接続完了・・・みるみるうちに糸が出ていく。すぐに無くなった。もう1つ買って来てもらう。以下繰り返し…。
3つ目も使いきったが、もう接続はやめた。きりがない。それよりも持っている手が疲れてきたので、近くにあった植木に糸を結び付ける事にした。無事結び付けると、寝っころがってくつろぐ3人。少しすると審査員らしき人が来た。何かしていた様な気がするがその辺の記憶が薄い…。
わたし達の凧は誰の凧よりも上空にいる。他の人は目で明らかに確認できるが、こっちのはよく見ないと解らないほど上空を浮遊していた。もちろん包装紙だとは誰にもわからない。上位入選は確実だろう。
大会も終わりに近づいてきたようだ・・・って、おい。帰り始めている人がいるではないか。どうやらいつの間にか終わってしまったらしい。
「あまりにもあげすぎて見えなかったのか?」
「凧糸を持ってなかったから参加者に見られなかったのか?」
「凧を発見できなかったのか?」
などと色々と考えたが納得がいかない……。
(実際、凧は遥か彼方にあった)
主催者テントに行ってみると片付けを始めていた。納得いかないので、文句を言う。すると参加賞だとかなんとか言って、変な白いネズミの置物をくれた。その時のおっさんの表情はいかにも
「余って困ってたんだ、処分する手間が省けるぞ」
という感じだった……。
(たしか…まだ家にあったはずだ。今度探してみよう……。記憶が正しければ、背中の部分に穴が開いていた。おそらく、つま楊枝入れだろう。)
回収作業の為、凧糸を結び付けている場所へ戻る。1人が2つずつぐらい白いネズミを持って……。現場に着いてまず出てきた言葉…
「えー…これ巻き取るん?」
「たいぎいのぅ」(注:しんどい、面倒の意)
「すごい長いよ?これ……」
そう、長いのだ。なにしろ凧糸3本分もあるのだから…。自分でまいた種とはいえ、調子に乗って継ぎ足していった事を恨む。
愚痴を言っていても仕方がない。しぶしぶと回収作業に取り掛かる。風が強くなったのか、さっきよりはるかに重い。持っているだけでもかなり重いのに、巻き取るとなったら大変だ。継ぎ足した事をつくづく後悔した…。それでも何とか巻き取る事は出来るようだ…少しづつではあるが……。
なんとか1本分ぐらいは巻き取れただろうか……。その時急に軽くなった……。そう、切れたのだ。凧糸が風の重みと巻き取りの引っ張る力に耐えきれなかったらしい。一気に脱力感に襲われる……と同時に安堵感もやってきた。
「もう巻き取らなくていいんだ…」
切れた凧糸を楽々と回収。どうも…すぐ手前で切れたようだ。あの凧は何処に行ったんだろう………。
凧糸2本分もくっつけたままで……。
ともかく家に帰る事にする。白いネズミを持ったまま…。一応、戦利品だ。捨てる訳にはいかない。家に帰る時は凧がないから別に怪しくはない。わいわい3人で話ながら帰る。
従兄弟1:「そういや、番号札つけてなかった?」
従兄弟2:「なんか番号呼びよったよね?」
わたし :「え?なにそれ……?」
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