| 俺は、自分に負けたのだ。 この無様な俺は、己に負けたのだよ。 確かに、精一杯、血へどを吐くまで唄ってきた。 有名になりたいとも思っていない。 金持ちになりたいとも思っていない。 教祖(カリスマ)を気取るなんてまっぴらだ。 俺は、ただ、俺を唄ってきただけなんだよ。 だけど、 そうだね、 己に負けた。 初めて負けた。 頑張れば頑張るほど、ため息ばかりを吐き捨ててきた。 つまり、 「悲しみ」や「孤独」を己自ら食らう度胸がなかったんだな。 「不自由」という錯覚から、本来の「自由」の本質を 見極める努力が足りなかったんだな。 だからこそ、全てを自分でしょい込み 「ひとりぼっち」を決めこみ がむしゃらに『一匹の侍』になろうとした。 しかし、 それこそが俺の傲慢さであった。 人生は、俺ごとき愚かな一人間が語れるほど浅くはなかった。 『悲しみこそが、その人間の深さである』などと、 この俺の唇が、切れ裂けてまでをも何の疑いもなく 信じ、俺を必要としている人間たちに精一杯、優しく 接してきたつもりだったが、先ずは、本当の意味での 『自己愛』というものを優先させなければ、誰もしあわせを 感じ得る事ができないのだなゥB 再度、初心に立ちかえり、『優しさ』『正義』『倫理』『常識』 『非常識』『悪』この六点を己に向けて矢をはなち 悔い改め、精進しようと心に決めている。 「男四〇にして立つ」あるいは「四〇の手習い」という言葉 にもあるように、 罪は罪として認識し、反省し、 社会的な制裁を受けよう。 しかし、これを己の人生の転機としてとらえる ことが大事だね。 「真理とは、活動なり」その事を警察の方々の 厳しい追及と人生の悟りの中で確信した。 良き友を何人もてるか。 良き人生の先輩と何人知り合えるか いずれにせよ、あたりまえの『人間』とどれだけ出会えるか。 これまた全部、己次第なんだね。 決して、他者をうらまず、にくまず,悪びれず 己や他者の悲しみを少しでもわかろうとする『人間』に 会いに行きたい。 厳しい現実の中に再度身をおき、良い作品を「今」の この瞳で書きたい。 まだまだ愚劣な俺ではあるが、あと10年だろうか? 死とういう原点回帰まで、生を燃やしたい。 そう、 己の中道を走らして欲しい。 そして、 俺は「弱き物たちへの瞳(まなざし)ある場所」へ、行かなければ いけないのだ。一日も早く、そう一日も早く。 誰が同じ過ちなどするものか。 今まで、俺と出会い、苦楽を共にした愛すべき友人や 先輩達、そして、現実社会に対して、深く深く謝罪します。 留置場約十一日間、ファンのみんなの声が深夜、 確かに俺の耳に届いたよ。泣いた、泣いた、泣いた。 「つよし!頑張れ!」とカーステレオだろうか『人間』を フルボリュームで流してくれた大馬鹿野郎を 俺はたまらなく愛している。申し訳ない、つらい思いをさせて。 留置場、朝六時三〇分。 鉄格子から見える閉ざされたかすかな空は、いつも澄んでいた。 ここらあたりは、屋根が低く、 かわらの上からは、きちんとあたりまえに 朝の輝きが、差し込んでいた。 実にきれいな、雲ひとつないひんやりとした空気で、 タバコ臭い私の痛い肺の中に、あぐらをかいていた 昨日までの薄汚れた英雄が完全に刺殺されて いくのをはっきりと体感した。 鉄格子ごしに飛び込んでくる太陽のアンバーの色とブルーは、 やがて燦燦と輝く生命力つまり『今』という厳しさを たたいてくれた。 何と素晴らしきせまい窓よ! 鉄格子よ! 空気よ! 私の薄っぺらい胸板に『今』肋骨が折れるほど 「清らか」という冷酷さを吸い込んだ。 そして、 二切れの黄色いたくわんとさ湯とこんぶのみそ汁に 心から合掌した。 |