
プロローグ 1−2
| 「コン、コン、コン」 ここで所長室のドアを外側からこぎみよく三回叩く音がして、 「水谷所長、はいりますよー。」 そう声が聞こえたかと思うと、三人の内誰かが返事をするのも待たず、間髪入れずにドアが開き若い職員が一人入ってきた。 初めて合った人が一見すると、『外国の血が混ざっているハーフかな?』と思わせる彫りの深い顔立ちの若者で、特に目元は眉がはっきりしていることもあり、意志の強さが面に出ているようでもある。 「おっと!皆さんお揃いでしたか。何か打ち合わせ中かな…、じゃあ後ほど。」 そう言って後ろを向き、またすぐに部屋から出て行こうとするのを藤城副所長が、 「おーい、板垣。いいぞ、どうした?」 と呼び止められて、 「えっ、いいッスか?じゃあ、これ、皆で考えた今度の慰安旅行の予定案なんですけど、どうでしょうかね?結構、イケてると思うんですけど…。」 と、A4サイズで10枚位の書類を持ってきた。 「おっ、早いな。もう出来たのか。どれどれ……、おう!いいじゃないか、よく出来ているよ。所長、どうです?」 手渡された所長も副所長の反応に満足して、ざっと見るだけですませた。こういう所にも所長、副所長の長年培ってきた信頼関係を見る事が出来た。 「うん……、OKですね!じゃあ、板垣君これで話しを進めて下さい。でも、大人数の上に連休も重なるからホテルや交通関係等、どんどん予約していかないとね。」 「はい。では、失礼しま〜す。」 板垣はドアの所迄行って部屋を出ようとしてから、「ああ、そうだ。」と、もう一度振り返って、 「所長、ホテル・交通機関等、実はもう予約しちゃってますのでご心配なく。それとスーさん、ゴルフの組合せをこれから決めるけど、一緒に決める?」 それを聞いて鈴木係長も、 「しょうがないのう、ちょっと手伝ってやるかい。」 言葉ではそう言うながらも、 「おーい! 今度、ワシが優勝するためにも板垣ちゃんは、一緒の組でまわらないといかんぞ!」 と、嬉しそうに小走りで板垣の後について出て行った。 そのコミカルな動きと、まるで“孫を追いかけるおじいちゃん”を思わす雰囲気に、残った二人は顔を見合わせ思わず吹き出してしまった。 「しかし、スーさんもさることながら、あの板垣君のキャラクターも独特な物がありますね。言葉使いやマナーは決して素晴らしいとは言えませんが、それを相手に悪い印象とは与えず、…と言うか不思議と逆に見ていて気分がいい。さすが、藤城君直属の部下ですね。」 そう言う所長に対して副所長も、右手の一差し指でこめかみをコリコリと掻きながら 「いやー、お恥ずかしい。しかし、経理的な仕事に関しては他に優秀な部下が何人もいますが、何というか…例えば今回の旅行の予定案にしても、こういうことになると皆の意見をまとめて実にうまく作成するし、現場近隣住民の人達とのコミュニケーション、飲み会での接待等をやらせるとピカ一ですね。それに、社内でも板垣の先輩・後輩・同期、加えて所属署云々に関わらず、よく電話がかかってくるんですよ。変に人望があるというか、あいつには…う〜ん、人を惹き付ける何かがあるんでしょうね。」 と、ついゆるんだ表情になっていた。 その時、所長の手元にあった電話の内線音が鳴り、女子事務員から所長に支店から電話が入ってきた旨が伝えられた。 |
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