その日の朝は、7:00に目が覚めた。いつも、夜中の3時に寝て昼の1時に起きる、という生活に慣れてしまっていたので、前日はなかなか寝付けなかった。そのせいで、尾瀬に車で移動する1時間も、すっかり熟睡してしまった。
着ていった服は、PPFMのコットンのTシャツとリーバイスのジーパン。両方とも、素材的に、山登りには適さないものだったらしいが、そんなこと知らなかったので、見た目重視で行った。長袖のユニクロのシャツも持った。
まず、御池という場所に車を止め、そこからバスで15分ほど行くと、沼山峠に着く。そこから山歩きがスタートだ。ザックには、簡単な着替えと簡単な雨具、フィルムと電池の切れたカメラが入っており、それはオレが背負った。水筒は父親がコンビニの袋に入れて持っていたが、山を歩くにあたって、両手を空けておくのは重要なポイントだったらしいが、そんなワケで、服装共に、初心者丸出しの1行はかなり速いペースで尾瀬沼に到着。コースは、写真で見たより全然空いていて、平日だからか、非常に快適だった。5分に1回すれ違うくらい。途中、へりが道を整備する為の木の板を運んでいて、うるさかった。尾瀬沼にはたくさんの店があって、そこで駅ソバみたいな昼食を済ませ、午後の天気を確認して(降水確率50%)、人気の少ない山道目指して出発したのであった。
燧ヶ岳への道は、全部で5つある。長英新道という山頂まで5k程度の道を選んだが、麓のほうは道がぬかるんでいて、非常に歩きづらかった。父親のバッシュは泥だらけになっていた。3つの集団とすれ違った。たいして勾配も無く、最初の1時間は楽に進めたが、途中から道が険しくなってくる。岩場が多くなり、手を使って体重を支えなければならない。いつのまにか、土質は変わっており、固い黄土色の土が覗いている。道の中央は、水流でえぐられたような跡がある。どうやら、雨が降ったらタイヘンなコトになるらしい。
ココで重要なコトに気が付いた。水筒の水が残り少ないのである。さらに、雲行きまで怪しく成ってきた。自体は悪い方向へと動き初めていた。
が、これこそまさにハードコア、ハードコア登山の真骨頂である。トラブルは付き物である。苦難を乗り越えてこそ、達成感もまた大きいものだろう?
そして出発してから2時間、午後1時、とうとう雨が降ってきた。母親が持ってきた雨具を着る。山頂まであと少しだったが、やむなくルート変更。当初の予定では、山頂を過ぎて、そのまま車の留めてある御池に降りる予定だったが、一番麓までキョリの少ない、しかし一番険しいルートで下山するコトが決定。折しも、最終バスが出るまであと3時間半、1時間半で降りなければならない。コレはヤバイ。
また、その道、というのがマジでハードコアで、デカイ石がひたすら斜面にそって積んであって、それを降りる。不用意に勢いあまって足を着いた石が不安定だったりしたら、そのまま落ちて死にかねない。しっかりと手を付いて、慎重に降りるのだが、父親のペースが異様に速く、その分良く転倒してヒヤヒヤさせられたが、さすがに疲れて来た。足もそっと降ろさないとダメなので、ももの筋肉がこわばってくる。歩き始めて既に5時間が経過していた。やはり、初心者にはキツいコースなのか。
途中、2つのグループを追い越した。一つは小さいキティーちゃんの雨具をつけたガキが一緒で、こりゃヤバいんじゃ無いか、足下は小さい川みたいに水が流れているのだ、コケが生えていて滑る岩もある、心配しつつも、先を急ぐ。
雨具は安物だけあって浸水して来て、カラダも徐々に冷えて来る。槍ヶ岳だと、あと700m高いから、気温にして約4〜5度、さらに低いワケだ(ちなみに、燧ヶ岳は山頂が2356m、スタートした場所からの標高差は約700mである。槍ヶ岳は3180m)、また、燧ヶ岳のほうは木が生えているので風はそれほど気にならなかったが、槍ヶ岳のほうは吹きさらしである、風速が1m増す毎に、体感温度は1度下がると聞く、槍ヶ岳に行く時は、しっかりとした装備で行かねばならないだろう、そう思った。
さて、すっかりカラダも冷え切ったところで、やっと麓に出た。PPFMのTシャツを絞り、帰り道を急ぐ。尾瀬沼のビジターセンターで、服を着替え、靴下を絞り、御池のバスに乗り込んだ時は、思わず安堵のため息が出た。
帰ってから温泉に入って暖まったが、槍ヶ岳にはそんなものは無い。テントの中で、じっと耐えるしか無いのだ。ストーブも持っていかない予定なので、雨に関しては死活問題だろう。
燧ヶ岳の山頂に立つコトは出来なかったが、そんなコトはどうでも良かったのだ、眠る前、ストレッチをして、充実した気分で布団に入った。
