「桜」
ここが自分の場所だと
信じていたから
変わるわけがないって…
ずっといられるって…
永遠なんだって…
そう思っていた
…夏は
青々しく命に溢れ
ゆれる木漏れ日に
誰かがその身をよせていた
…秋は
色あせた葉を木枯らしに乗せて
くるくると舞いおりては
道を鮮やかに染めていた
…冬は
静かに白く眠り
誰かの命のぬくもりを
そっと抱きしめていた
…そして春は…
白い花びらはほのかに桃色に
ゆらゆらとそれはまるで雪のよう
さらさらと陽だまりに遊ばれて
やわらかに薫る風は甘くやさしく舞い踊る
…今…
季節は春
私はこの両手いっぱいの花びらを
最後にどの風に乗せようか悩んでいる
終わらないはずの季節が
もうすぐその姿を消してしまうから…
私が…消えてしまうから
そうして私は一つの風に身を任せると
そっと桃色の花びらを解き放した…