☆ノーサイドの笛が
鳴るまで――vol.4
〜ラグビー日本選手権・準決勝観戦記〜
18日に東西で行なわれた準決勝の2試合をふりかえってみたい。結果は、興味を持ってこの
ページを開いてくれた人なら既にご存知であろうが、秩父宮のサントリーVSトヨタ戦は
31−17でサントリーが、花園の神鋼VSNEC戦は57−36で神鋼が、其々勝って
決勝にコマを進めた。スポーツ観戦をする場合、やってはならぬこととは知りながらも
どうしても、下馬評や自身の先入観にとらわれてしまう。それは‘予想’と書けば見てくれは
いいが、‘偏見’なのであって、‘そんなもの’を腹の中に持ったまま試合を見るのは
真剣な時間を過ごす選手達にはかなり失礼なことではないかと基本的には考えている。
が、しかし、どうしてもやってしまうのが、この‘予想’である。‘予想’を覆されて
嬉しいゲームがあれば、‘反したこと’をやらからされて愕然とするゲームもある。
今回はこの‘予想との落差’を中心に2試合を振り返ってみたい。
☆サントリーVSトヨタ戦☆
‘予想’は失礼かもと前述したが、それはゲームを見て、「ああでもない、こうでもない」と
俄か解説者になるフリークにおいての話であって、ゲームメイキングの必要がある監督や
コーチ、主力選手においてはもちろん例外である。それは彼等の中にあっては無責任な
‘予想’ではなく、‘戦術’であり、「勝つための条件」ですらある。即ち、敵をいかに
崩すか、敵からいかに守るか、戦うプランなくしては勝負は成り立たない。この試合の結果に
ついては両首脳の戦術の違いが如実に出たのではないかと感じた。
★臨機応変★
試合を見ていて両チームの戦い方が或る観点で違っていたことに多くの方が気づいたの
ではないかと思う。この準決勝までと同じ戦い方で臨んだトヨタに対し、サントリーは
それまで継続してきた‘戦術’をいともあっさりと放棄してきたのだ。「打倒・神戸!」を
スローガンに1年間(神戸に敗れてからの1年間)キックを使わない継続ラグビーを展開して
きたというのに、この日の戦術はチャンスでの徹底的なまでのPK選択。しかもそれを
キッカーである永友が確実に決めて行った辺りにサントリーのこの試合に対する、つまりは
「打倒・神戸!」に燃える意気込みが感じられた。前半こそ13−17とトヨタにリードを
許したものの、後半開始早々に吉田が決めたトライを皮切りに、結局後半だけではトヨタを
零封する完勝ぶりには驚いた。元々スタミナで勝ると見られたサントリーが、戦術面でも
トヨタを圧倒したことになる。土田監督と選手の勝ちたい気持ちが見事に結実したと見られる
このゲーム、サントリーにとっては会心の出来、トヨタにとっては読みの甘さを露呈した
苦いゲームになったと言えるだろう。
☆神戸製鋼VSNEC戦☆
「嗚呼、もう少しで王者の失態を見せられるところだった!」というのが正直な感想で
ある。(苦笑)フリークだけでなく、マスコミという巨大おせっかい勢力の餌食に、
本当になってしまうところだった。もちろん、マスコミばかりが悪いわけではなく、選手達の
間にも‘慢心’という空気は絶えず流れていたことは否めないだろう。それにしても
ドタバタした試合であった。本当に下馬評というものは罪なものであると改めて感じ入った。
★目に見えぬ敵★
大小様々のミスの積み重ねから、簡単にトライを奪われる展開にそれまでも焦れて
いたであろう、萩本ヘッドが矢も盾もたまらずスタンドから駆け降りてきたのは後半途中
2点差に詰め寄られた時だった。結果的にはこの直後から4トライを重ねて突き放し、
21点差で勝利を収めるのだが、本当に一時は彼も気が気ではなかったことだろう。
試合後彼は語った。「元木が復帰して、周囲の‘戦う前から勝ったような扱い’に選手が影響
され浮き足立たずにはいられなかった」と。持ち上げた後のこきおろしに備えたのかヘッドは
選手をかばった。「ずっと気持ちを張り詰めてやれと言うのは酷です」肯かざるを得ない。
☆そして…☆
結局この試合は取られたら取り返す点の取り合いになった。こうなれば神鋼の優位は動かず、
去年並みに点差が開いて終了したが、内容は去年とは明らかに異なるものであった。NECは
確実に‘4強’の座をモノにしようと目論んでいる。NZから参戦している選手の能力の
高さを生かし、彼等を中心にしたチームとしての強化を図って神鋼、サントリー、トヨタに
続く4番目の地位を確固たるものにしようという心意気が随所に見られた。こういううねり
こそがジャパンラグビーの底上げにつながる。NECの挑戦を歓迎したい。
同時に、マスコミに持ち上げられたりこきおろされたりしながらも、優勝戦まで
こぎつけた神鋼。ミレニアムから新世紀を駆け抜けた今シーズンの総決算(決勝)では、
目に見えぬ敵である周囲の雑音などに振り回されず思う存分暴れまわって欲しい。
無論これは神鋼だけでなくサントリーにも期待すること。首脳が同校の先輩・後輩対決
となるこの試合、リベンジを達成するのか返り討ちにするのか、25日は注目あるのみ!(笑)
連載4回目になりました。準決勝はかなり気合入れて見てました。
あと1回、目が離せない
ようなゾクゾクするゲームが見たいなぁ。両チームの選手のみなさま、よろしくね♪(笑)