リリィがそんな夢の事など忘れた頃(起きてしばらくしたら忘れた)、こちらに向かってくる二つの影を見つけた。
「カムロ兄ちゃん。誰、そのお爺さんは?」
「おう、ちょうどいい所に、リリィ。この爺さん、実は今朝遺跡の中で知り合ったというツワモノなんだが、これがまた迷子だっていうんだよ。そこでここいらで一番でかい町ミズリカに連れてってやろうかと思うんだが……」
「へぇ、あなたその歳で迷子なの。」
とリリィ。
「ああ、わしゃいくつになってもマイゴじゃ。」
とは爺さん。
「おい聞けって。それでだ。リリィも行きたがっていただろ、ミズリカ。なんか夢があるとか言ってなかったっけ?」
「う、うん。でもあれは……」
「一番近いといっても道も確立してないし、俺みたいな護衛もいないとリリィにはなかなか行けるところじゃないだろ?」
「でも、ルルが……」
「ルルちゃんのことを一人にしておくような人間がこの村にいると思うのかい?大体ルルちゃんだってリリィに行ってほしいって言うぜ?きっと。」
「そんなの……。お爺さんだって本当に迷子なわけでもないんでしょ?」
「わしゃ本当にマイゴじゃが、どうせミズリカには行くつもりでの。渡りに船じゃよ。」


5分後リリィは村の入口にいた。準備万全で。
決心したときの行動速度は常人を遥かに凌駕するというリリィの数少ない特技の一つである。
「……………………相変わらずはえーなぁ……」
と、カムロ。
「ほっほっほっ、行動力があるのはいいことじゃよ。」
「ありすぎるのも問題だと思うが……」
というわけで「超速行動娘」と「抜けてる遺跡荒らし」と「迷子のジジイ」の3人はミズリカに向けて歩き出した。
歩き出して少しすると、不意にリリィが尋ねた。
「ところでお爺さん、名前は何て言うの?」
「なんじゃ、さっきから何度も言っておろう。」
「えっ、それってもしかして……」
「そう、マイゴじゃ。」
リリィは目を点にした。その横ではカムロが完全に固まっている。
「ほっほっほっ、最近の若い者はだめだのぅ。この程度の事ですぐ白くなる。」
とほざくマイゴ。リリィとカムロは動けないでいる。
2時間後になってやっと3人はミズリカに向けて再び歩を進め始めた。


てなわけで、テクテクと行く3人であった。
「まったく、散々待たせおって。これならわし一人で行った方が早かったかもしれんぞ?」
「だってまさか、なぁ…」
「ねぇ…」
「人の話をよく聞かんからじゃよ。」
これと同じような意味のやり取りが数回あった後、カムロはふと思いついて、
「なぁ、ということはよ、爺さん。なんか目的があってあの遺跡にいたんだろ?あんな所に何があるんだ?」
するとマイゴは注意深く二人を観察した後、緊張を解き、
「そうじゃの。おぬしたちには話したとて問題は無かろう。」
(信用してもらえたみたいだな)
(なめられてんじゃない?)
「あそこにあった物とはな、これじゃよ。」
マイゴがそれを取り出そうとした、そのとき、

ズドォォォォン!!!

突然マイゴの背後で爆音が響いた。
「な、なんだ!?」
「行ってみましょう!」
と、駆け出すリリィ。
「おいっ、待てよ!」
カムロたちも慌てて後を追う。