再び遡ること約三週間……
静まりかえった大地をいきなり黒い霧が覆い、その中から一人の青年が現れた。
青年は辺りを一通り眺めると、顔を歪め、
「どこだよ、ここ。」
そして、空に昇る煙をみとめ、
「とりあえず、あそこをめざすかな。」
彼は考えるよりも歩いていた。


ここに二つの影が認められる。一つは人のような、しかし一つは大きく異形のものだった。
「くっ、やはり『まだ』なのですね、デスフォッグ。」
ゼラメストは呻く。その傍らには、生まれいでたばかりにして体が崩れ始めている魔獣の姿。
一昼夜をかけて行った儀式の結果がこれではいやになる。
「一体、いつになったら…」
もしかしたら自分には『その時』が来たことを感じ取れないかもしれない。その思いからゼラメストはこうして定期的に、そう、実験として魔獣生成の儀を執り行っていた。


「すんませーん、誰か人いるんでしょう?」
青年は声をかけつつ煙の麓に近寄る。が、
「っと!これは少々取り込み中だったようだな。」
人と異形のモノがたたずんでいた。
ゼラメストも少々苛立っていたのか、冷静さを欠いていた。
「まさか人に見られるとは…しかし、このまま朽ちるより少しは役に立ってみせよ!魔獣よ!行け!」
熊を元にしたその魔獣は、青年に狙いを定めた。青年はしかし落ち着き、手にしていた本『古よりの魔導剣の極意』を確認するように開き、
「こんなに早く役立つときが来るとはね。」
パタンッと閉じた。
「グォォォォ!!」
魔獣の咆哮が耳をつんざく。
「悪いな、秘剣ライトニングスラッシュ!!」

ガッ!

鈍い手応えながら、崩れかけた魔獣など魔導の余波で十分だった。魔獣の咆哮が悲鳴と変わり、消えた。
「馬鹿な。仮にも魔獣を…貴様!名は!?」
「……リューク。」
「ならばリューク。時が満ちたその暁には、貴様を真っ先に血祭りにしてくれる!覚悟しておけ!」
ゼラメストはそう残し去った。
「なんだありゃ?」
そしてリュークは手元に目をやる。
「にしても新しい剣が必要か。」
リューク(どうみてもルーク)は折れた訓練刀を投げ捨てた。