まっこと靴屋さん。

 

彼と出会ったのは夏でした。

そもそも彼は、私の勤めている店(テナント)の近くに店を構える、

「銀座か●まつ」の社員さんで、夏に異動してきた模様。

販売歴4年。推定年齢26,7ってとこか。

言葉を交わしたのは2,3回だけ。でも結構痛い思い出ばかりです。

 

@8月某日 夏の終わりに

ウチの店の正面に並んでいた「ROPE」と「HIS MISS」が、揃って閉店になり、工事が始まりました。

どうやら、このフロアーも、かなりの模様替えをするらしい。殺風景な仕切りをされ、

中からガタゴト、ギギーガガ―と、すごい音が聞こえてきていました。もう会話もできないくらい。

すると、…これが彼との最初の会話になるのですが、彼が現場を指差し、顔をしかめて

「うるさくないですか??」

と、訊いてきたのです。私はちょっと緊張して(なにしろ始めての会話だったので)、強く同調しなければいけないと思い、

彼に聞こえるよう、なるべく大きな声で

「仕事にならないですよねぇー!?」

と、言いました。

彼は、変な間を置いて、去っていきました。

……か●まつの現場監督の社員さんから、お詫びにお菓子をもらったのは、数日後。

今ではウチの店の正面に、工事を済ませ増床した「銀座か●まつ」が……。。。

 

きっ、きまずい。

 

こんな特別にページを作ってまで、なんで彼を語らなければいけないのか。

なんか今日はそんな日なのです。彼をもっとよく知ってもらうために、もうひとつ話しましょう。

 

A9月某日 彼の販売道。

私の勤めてるル●ネでは、店対抗で、接客コンテストがあります。

そこで入賞したら、関東大会とかがあるらしく、しまいには日本一が決定するそうです。

ちなみに去年は、なんと我が社の社員が日本一になったようです!それはさておき。

コンテストの当日、サクラの要請があったので、勤務中にも関わらず、私はそれを見学できる事になりました。

行ってみるとなんとそこに!彼が!!彼も勤務中なのに…クツを持って。

ん?クツ???

彼は、出場するのか?!!

(そう、出場する人達は自分の店から商品を持参しなければいけないようでした。)

何故私がここで過剰反応したのかと言いますと、

彼はいつも、呼びこみをするのに、ちょっと芝居がかっているんですね。でも元気がいいんですね。

「いらっしゃいませいらっしゃいませいらっしゃいませ〜 さっ、ブーツが人気で〜す。」

なんか、例えると、エレガントな魚屋みたいなんですね。

だから、そんな彼の接客を見るなんて……

見てるほうがはずかしいっ。近所だし。

そんな自意識過剰なサクラを尻目に彼は、接客演技を始めました。

そこで彼は、すごいサンダルをチョイスしてきていたのです。彼はムーディな声で囁きました。

「これはですね、あの、エベレストと言う名前なんですね。」

エベレストって。

会場は隠れ笑いの渦に包まれ、彼は見事準優勝。関東大会へ勝ち進む事となりましたとさ。

 

 

ちがうんです。こんな事はもうどうでもいいんです。

だから今まで書きませんでした。でも今、こうして書いていると云う事は、

今まで書いてきた事が、全てこれからお話する事の前振りでしかないと云う事なのです。

このことで私は精も根も尽き果てて、明日が休みで本当によかったと心から思っているのです。

 

B本日 とうとう彼とまともに会話する日がやってきてしまいました。

今日はヒマでヒマでしょうがなかったのです。もうサンザンです。

でもそれはウチの店だけではありません。ル●ネと云う建物に、人気がないのです。

もう人っこひとり歩いてません。犬は喜び庭駆け回り猫はコタツで丸くなってるはずです。

先輩が休憩へ出て、私がひとりで店番をしていると、さりげなく彼が

彼が 近づいてきました……………………

さぁ、私は、彼と上手く話せるんだろうか…。普段はたまの挨拶にも目を合わせられない私が。

まったく…ヒマですねぇ〜」「そうですね…。」

「イヤになっちゃいますねぇ〜」「そうですね…」

「セールも、期待してたんですけどねぇ〜」「あ、ダメでしたね…。」

「さっぱり売れないで…出るのは…」

……この時期の靴屋さんは何が売れるんだろう?やっぱブーツかな…

「何が……いちばん出ます?」

 

ハァ〜〜〜(息)。」

?!

「出るのは 溜め息ばかり☆」

 

「………うまいこと…言いますね」

 

 

それ以上会話は続かなかった。

 

 

 

 

さようなら。