僕は今こんなことを考えているんだ。
今僕らはコーヒーを頼んだとする。けれど僕らの前に置かれたのは紅茶だったりするんだ。君は言うよね。「コーヒーを頼んだんだけれど」って。僕はね、僕は間違っているとわかっていても、たぶん目の前に置かれた紅茶に口をつけると思うんだ。そして、こう言う。「ここの紅茶美味しいよ。なんだか得した気分だな」ってね・・・
 僕たちには2ページだけ真っ白で何も綴られてないページがある。僕は流れのままに日々を過ごしその日々を受け入れてきた。そしてその日々は決して空虚だったとは思っていないし、思えもしないだろう。僕たちはそれぞれがそれぞれなりに時を費やしてきた。それは君も僕も少しだけ大人になっているということだ、とも思う。あの頃、僕たちはまだ若くて、強がることで自分自身を支えていたのかもしれないね。不思議なことに、何万字も綴られたページを読んでも、僕にはその一つ一つがかなり曖昧で、それでいて記憶が色褪せているような気がするんだ。それより僕は、何も綴られてない2ページにとても興味があるし、何かを感じている。そう、目の前に置かれた紅茶のことを考えたときと同じようにね。いったい「何か」ってなんなんだろうな。まあいいさ。いつかその「何か」がきっとわかるときが来るだろう。
 今僕は君の目の前で頼んでもいない紅茶を飲んでいるし、君は僕の前でコーヒーを飲んでいる。これが僕らであって、僕らの価値観に違いない。