ずっと健康でいると、入院生活なんて想像がつきません。
整形外科は命に関わる病気の人はほとんどいないので、病棟全体も明るい雰囲気です。
でも、6人部屋の狭いベッドの周りの空間で生活していくのはやっぱり大変です。
健康な人にはとても耐えられるもんじゃない!
でもだからこそできた貴重な体験だったなと思います。
いろんな人がいました。
術後はリカバリーというナースセンターのすぐそばの部屋に入る事が多いのですが、私は2人部屋に入りました。
そこで一緒だったSさんはとても面白い人でした。
脊髄の手術をした人で、やはり動いてはいけないのです。
寝返りは看護婦さんにきてもらって手伝ってもらわないとだめなのですが、なぜかたまに起き上がって何かごそごそとやっている時がある。
私も上を向いて寝たきりなので全然見えないのですが、どうも起き上がっているような感じなのです。いいのだろうか?
若い頃からとても苦労をしてきた人で、苦労話など聞かせてくれました。
娘さんが可愛いお孫さんをつれてお見舞いにきてくれます。なかなか立派な優しい息子さんもいます。
この自慢の息子さんがまだ独身らしく、Sさんはお気に入りの看護婦さんや薬剤師さんを息子に会わせたがっている。
「あなた、とってもいい人ですね〜。うちに息子がいるんだけど会わせたいわ。今日来るっていってたのに早く来ないかしら〜」
ある日息子さんが洗濯物を届けにきた時にちょうど美人の薬剤師さんがお薬を持ってきた。Sさんはそれはもう嬉しかったらしくて、その薬剤師さんの着ているシャツの色までほめまくって、、、一生懸命息子さんを紹介してる。
息子さんも困って苦笑い。
本当に可愛い人で、御飯だってちゃんと自分で食べられるのに、息子さんがくると甘えちゃって御飯が一人じゃ食べられないともう泣きそうな声で訴えて、優しい息子さんは一生懸命食べさせてあげてる。
ずっと我慢してたんんだけどどうにも我慢できなくて笑ってしまいました。
私はこんなによく喋る人は始めてみました。
その人は手術前からよく病室にきていました。どんなところに入院するのだろうと様子を見に来たのです。これはとてもいい事です。
しかしなぜか私のいた部屋にその人と同じ名字の人がいて、その人は気に入ってしまったようで、病院にくる度に必ず寄っていくようになりました。
とてもおしゃべりな人で、4人部屋のそれぞれの人にいろいろと話し掛けて、2時間はたっぷり話して行きます。
ついに彼女が入院してきました。手術後はしばらく個室にいたのですが、ある日隣の部屋に移ってきました。
彼女が隣の部屋に来たのはもう話声ですぐわかりました。
私達の部屋の4人ともベッドから全然動けないのですが、みんなで彼女がお隣に来たね〜ってすぐわかりました。
朝から晩までよくこんなにと思うほどずっと喋ってます!
その声がまた大きくて、、、
じっと聞いていたら彼女の生涯の出来事が全てわかるほど。同じお部屋の人はさぞかし大変だったでしょう。
ある朝など、なんと5時からもう喋り出して、、、さすがに看護婦さんにお願いしました、6時までは静かにしていてもらいたいって。
あんなにずっと喋っていられる人にはこれから先もきっと会わないと思います。
看護婦さんのカルテには 1日何回も看護婦さんはベッドサイドに来ていろんな事を聞いて行きます。
御飯はどのくらい食べられたかとか、トイレの回数は何回だったかとか、熱を計ったり、脈を見たり、血圧を計ったり、、、
そして厚ーいノートにいろいろ記入して行きます。
ある日の朝、回ってきた看護婦さんが
「よく眠れましたか?」
と聞くので、
「昨日は恐いテレビを遅くまで見ていたら、恐い夢を見ちゃってよく眠れなかった」
といったら、お昼に回ってきた看護婦さんが、
「昨日は何のテレビを見ていたの?」
と聞きます。
「あー私も昨日その映画見た見た。面白かったですね〜」
なんて話をしてました。
そして今度は夜に回ってきた看護婦さんがノートを見ながら
「今日は恐い夢見ないでよく眠れるといいですね」
看護婦さんってずいぶん細かい事まで引き継ぎをするものだと感心してしまいました。
ハ
動けない時の楽しみは ベッドの上で4週間、他にどこにもいけないので楽しみは廊下を歩く人を見ること。
整形外科なので腕や足に包帯を巻いた人、車椅子の人、松葉杖の人、いろんな人が通ります。
お見舞いにくる人がすいかなどぶら下げているのを見ては「すいか食べたいな」とか思いながら廊下を行く人を見ています。
話をしたこともないのに毎日見ていると友達になったような気になってきて、かってにニックネームなどつけては楽しんでいました。
同じ年ごろで、同じチャパツで、同じ腕に包帯を巻いていた青年は、そっくりに見えてなかなか区別がつかなかった。区別がつくようになった時1号2号と名前をつけました。
娘がきた時などに、自慢げに
「ほら今行ったのが1号でしょ。こっちからくるのが2号なんだよ」
なんていって、
「お母さんはいったい入院して何をやってるんだか、、、」
と呆れられました。
背の高い優しそうな目の青年は、首に包帯。その首の長いこと!
彼は「きりんさん」
彼は去年バイクで事故って死にかけたそうです。今回はその時首に入れた金具を抜くための入院。
股関節の手術をしたSさんと気が合うのか、いつも車椅子を押してあげたりしてました。
Sさんは事故で股関節を骨折。折れた骨があぶなく大動脈を突き刺すところで、彼もまた危うく死にかけた一人です。同じ股関節ということでいつも私達の部屋へきては、お話をしていきました。
きりんさんは抜糸も済み、退院して行ったのですが、次の日また再入院。
内出血していたということで、もう1週間入院になりました。
そして再度退院の日。回診の後退院ということで、着替えて荷物も整理して回診をうけたところ、またまた退院延期。
すでにみなさんさようならなんて挨拶もして回っていたのに、、、
「また帰ってきました〜」
いろんな事があります。![]()