寝ジワ

 朝起きて顔を洗おうと鏡をのぞく。「ややっ、昨日まではなかったはずの
見慣れぬシワが!」 寝ボケまなこをこすりつつ、もう一度よく見ると、
なぁんだ枕カバーの跡がついたんじゃないの。
ホッとしたのも束の間、叩こうがつねろうが「寝ジワ」は一向に消える気配
がない。
聞くところによると、若ければ若いほど肌に張りがあるので消えるのが早い
そうな。
(白髪の出る年になったんだものしかたないよ)と自分で自分を慰めてみる。
 思えば十代ニ十代の頃は、自分が母親と同じ年になるなんて想像もできな
かった。それが、あれよあれよという間に熟女(?!)の仲間入りを果たし、
立派なオバさんになっているではないか。
年だけはずいぶんと重ねてきたが、中味は一体どうなんだろうと考えること
がよくある。
 私は母が自慢だった。尊敬していた。わからない事を聞くと何でも答えて
くれたし、料理は上手できれい好き、裁縫も得意で「こんなデザインの服が
欲しいな」とねだると、翌日には出来上がっていたこともあった。
完璧主義なのが玉にキズだったが、本当に母親らしい母親だったと思う。
 それにひきかえこの私、料理は苦手、掃除は嫌い、仕事から帰って時間が
あればパソコン三昧ときている。こんな母親を、我が息子どのはどう思って
いるのだろう。でも、真似をしようったって無理なものは無理。私は私なり
の母親像を作り上げていくしかないでしょう。
 それにしても、当面の問題はこの寝ジワをどうするかということ。
もっとも、熟女の時代を終えられた方々になると寝ジワすらつかなくなると
いうから、まだまだいけるという証拠として、堂々と熟女の主張でもしてみ
ようか。おっと、その前によだれの跡だけは拭いておかないとね。

                   (H.11.10.19付 河北新報 ティータイム掲載)