シンドラーのリスト
無機質な表情で次々と殺戮を繰り返すナチス兵たち。
自由な生活を奪われ、やがて殺されないことだけを幸せに感じ始めるユダヤの人々。
(なぜ? 同じ人間じゃない。一体どこが違うっていうの!)私は心の中で叫びながら
嗚咽をこらえるのに必死だった。
ハーケンクロイツの襟章を誇らしげに光らせていたシンドラーが、ユダヤ人を救おう
と思い始めた気持ちの変化が、今ひとつはっきりしなかったのは残念。
ても、残虐を極めたといわれるナチス兵(党員)の中に彼のような人間がいたという事
は、私にとって衝撃であり救いでもあった。
「戦争は人間の最も悪いところを引き出してしまう」と語るシンドラー。戦争は人を狂
気に駆り立てる。
私は今まで「反戦」というのはデモをしたり、大衆にアピールするなど、何か特別な
ことと思っていた。しかし、地球よりも重いといわれる命を、同じ人間の手によって、
いとも簡単にむしりとってしまう戦争の無意味さ、悲惨さを、次代を担う子供達に伝え
ることも「反戦」運動なのではないかと最近考えるようになってきた。
息子がもう少し大きくなったら、この「シンドラーのリスト」をぜひ見せたいと思っ
ている。そして、彼自身が戦争の無意味さ、悲惨さを感じとり、理解できるようになる
まで、私はささやかな「反戦」を続けて行くことだろう。
(平成6年4月 河北新報ティータイム掲載)


甲子園に思う
高校球児たちの長く熱い戦いが終わりました。全国の参加4,098チーム全てに惜しみ
ない拍手を送りたいと思います。
高校野球の季節になると、いつも初恋の人を思い出し、青春時代を懐かしんでいます。
鳥取から静岡へ転校した私に、そのボーイフレンドから甲子園出場の吉報が舞い込みま
した。大の野球ファンぞろいの我が家族、甲子園まで応援に行くことに異論の出るはず
がありません。
初めて甲子園のアルプススタンドに足を踏み入れた瞬間、何か訳のわからない感動が
全身を包んだのを覚えています。応援でさえこんな具合ですから、各地の激戦区を勝ち
抜き、血のにじむような思いで手に入れた甲子園出場権、選手達の興奮は計り知れない
ものがあります。
結局、試合の方は初戦敗退となってしまいましたが、捲土重来、翌年彼は主将として
再出場を果たし、初勝利を飾りました。
そのボーイフレンドともいつしか音信が途絶えてしまいましたが、今ではいいオジさん
になり、後輩の指導にでも当たっているのでしょうか。
今息子が少年野球クラブに所属し、泥と汗にまみれながら白球を追っています。
上手な子も、またそうでない子も、甲子園を目指し大リーグを夢見ながら、目いっぱい
野球を楽しんでもらいたいと思います。
頑張れ! 野球少年たち。もっと頑張れ! 昔の野球少年たち。
(平成7年8月30日付 河北新報ティータイム掲載)


プロの選手は子供の手本に
4月からのシーズンを前に、プロ野球選手の練習の様子が報道されているが、「これ
でいいのだろうか」と疑問に思うことがある。
若手の注目選手やルーキーのスター選手が、練習や何かの集合時間に遅刻しても、
「失態があった」ではなく、「さすが大物!」などともてはやすマスコミがあることで
ある。
遅刻は決して褒められることではないはず。確かに長嶋監督のように何かに夢中にな
るあまり、常識を超えた行動をとってしまう場合もある。「大物イコール遅刻」という
ことはあり得るかもしれないが、今の報道では「遅刻イコール大物」といった間違った
図式になってしまっているような気がする。
プロ野球選手は全国の子供たちの憧れの的。正しいお手本となってしかるべきだろう。
脱税事件などでプロ野球選手の権威が失墜し始めている現在、再度プロとしての自覚と
誇りを持ち、模範となって欲しい。
また、マスコミも事実を正確に伝えるよう努力してもらいたいと思う。
(平成10年2月21日付 河北新報声の交差点掲載)

