CALL1 『Crank Call』 〜Chapter 3〜
―――P.M 7:35―――
やっと家に帰りついた。なんだかすっげぇ疲れてる…。どうしてだろう…。
あ、そうか………。オレはさっき篠原さんにフラレたんだっけ。
なーに落ち込んでんだよ。覚悟はできてたはずだろ?
あんなにかわいいもんなぁ………。やっぱりオレなんか手が届かないや………。
胸が熱いね………。顔も熱い………。
あれ? オレ涙がでてる………。
そんなに好きだったのか、篠原さんのこと。
泣くなよ………情けないじゃんか………。
オレに「恋をする」なんてことムダなんだよ。かないっこないんだから……。
よかったな………篠原さんに思われてるヤツ。
誰だか知んないけど幸せもんだよ、キミは。
誕生日プレゼントかぁ………。
………ちょっと待った………
もうすぐ誕生日って……………。
智哉だ…………………………。
篠原さんの好きな人って智哉なんだ………。
だったら辻褄があう。
『久保田くんには言えない』って、オレは智哉の親友だし近い人間だから。
中学んときから仲いいもんなぁ、アノふたり。
智哉を好きになるっていうの、わかるよ。
いいヤツだもんな、智哉は。
バンドやっててギターもうまいし、頭の回転だってはやい。
なにやってもコナシちまうもんなぁ………。
いっしょに居て楽しいし、話もうまい。
オレなんか篠原さんといっしょだと緊張してうまく話せないもんなぁ…。
きっとオレなんかといっしょにいても楽しくないよ。
それになによりアイツはかっこいい。
智哉なんだ………………………。
月が雲に隠れてかすかに輪郭だけ浮かびあがらせている。
寒く、澄んで なにかが張りつめたような空気の中、オレは存在している。
時間が進むのをやめたようでなんだかとても静かだ。
よかった・・・・・・・・・・・・あしたは祝日。
誰にも会わなくてすむ。
Trrrrr Trrrrr Trrrrr Trrrrr
電話だ……………。
Trrrrr Trrrrr
誰も出ないのか? そういえば、オヤジもかぁさんもまだ帰ってないんだった。
Trrrrr Trrrrr
誰だよ………いまは誰とも話したくないのに………。
Trrrrr Trrrrr Trrrrr Trrrrr
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕方ないな。
「はい、もしもし、久保田ですけど。」
「……………健輔……………?」
「? 佐野かぁ? どうしたんだよ?」
「…………………………………………。」
「……………………なんかあったのか?」
「……………………ちょっとつきあえよ。
中央公園で待ってるから………………。すぐ来いよ。」
おいっ、なんなんだ? 言うだけ言って電話切りやがって。
いまから来いなんて………オレは自分のことで精一杯だっていうのに。
でも、なんだかただごとじゃないカンジだ。
仕方ないなぁ………すこし気を紛らわせられるかもしれないし、
散歩ついでに行ってみるか……………。
外は小雨がちらついていた。
佐野の気まぐれはよくあることだけど、今日のはなんだかヘンだ。いつもと違う。
そう言えばアイツ、学校でもおかしかったな………。
妙にテンション高かった。
そうだ、アイツたしか『決戦の金曜日』とか言ってたな………。
なんのことだったんだろう? なんか関係あるのか?
うわっ! だいぶ雨が強くなってきた。 急ごうっ。
――――― 中央公園 ―――――
雨のせいか公園には人の気配はなく閑散としている。
道にはあちこちに水溜りができ、たくさんの波紋が浮かんでいる。
そしてその波紋の向こうには深く黒い空。
どこに居るんだ? 佐野のヤツ……………。
あっ…………………………。
「どうしたんだよ佐野っ! 風邪ひくぞっ!!」
「……………けんすけ……………おそいぞっ………なにやってたんだよ。」
「オマエこそこんな雨の中傘もささないでなにやってんだよ。
寒いだろ? はやく傘んなかはいれよ。」
「……………ありがと……………………。」
オレたちは屋根のあるベンチのところに行った。
佐野は一点を見つめたままハンカチで髪や服を拭いている。
佐野のスカートからは、雫がポタポタと音を立てて落ちている。
そう言えばめずらしいな………佐野の私服のスカート姿なんて………。
オレはベンチに腰掛けた。
佐野もハンカチがびしょ濡れになって拭くのをあきらめて座った。
静かに時間が過ぎている。
佐野は………ずっと黙ったままだ………。
ん? かすかに目が赤い………。もしかして泣いた跡?
「佐野…………………なにがあったんだよ……………?」
「……………………………………………………………。」
「どうしたんだ?」
「…………………………………バカみたい。
せっかくの服も………セットした髪も………雨で台無しになっちゃったな………。
めちゃめちゃ時間かけたのに……………。
がんばってオシャレしたのに……………。
やっぱりあたしには、こんなことしたってムダってことなのかな……………。」
「佐野…………………………………………?」
「あのさぁ………………………今日、あたし……………………。」