CALL1 Crank Call』 Chapter 5〜



 

オレはこの日を思いっきり楽しんだ。篠原さんといっしょに。

この先、篠原さんとの関係がどうなるかわからないから……………。

楽しい思いでを胸に焼き付けておきたかった。

そして………篠原さんとの絆を確かめて、自身を持ちたかった。

だから今日は篠原さんといろんな所に行って、いろんなものを見て、いろんなことを感じた。

 

コレから先、オレはどうなるんだろう………。

 

決心したものの不安だった。

もっともっと楽しんでいたい。永遠にこの時間が続いて欲しい。

だけどこの1日も夕暮れ時を迎え、あたりのものは長い影を落としていた。

 

そういえばもう………秋は終わっていたな……………。

 

オレたちふたりはこの一面が燃えている瞬間を4人で見つけたあの丘で過ごしている。

 

「綺麗ね……………。現実じゃないみたい。」

「そうだね……………………………………。」

 

まわりがスローモーションのように思えた。

1秒が分、分が1時間になったような気分だ………………。

胸が破裂しそうだよ。そろそろ話さなきゃいけない。

決めたんだ。もう後悔はしたくない。そんな自分はもうイヤだ。

深呼吸をして……………よしっ! 言うぞ!!

 

「ねぇ、久保田くん? なんかあたしに話があるんでしょ?」

「へ?!」

 

意表をつかれた。篠原さんに出し抜かれてしまった。

 

「あたしになにか話があるから誘ったんでしょ?今日。」

「あ……………まぁ……………うん。」

「どんな話……………なのかなぁ………………?」

「たぶん……………聞くとつらくなっちゃうような話。」

「そっかぁ………………だったらあんまり聞きたくないなぁ…………………。」

 

さすが女のコってするどいな………。

だけど、これで話きりだしやすくなった………言わなきゃ。今日こそ言わなきゃ。

 

「オレ………ずっと前から……………篠原さんのこと好きだったんだ!」

「……………………………………………え?」

「好きなんだ……………でも…………………。」

「でも…………………なに…………………?」

「オレ、篠原さんにずっと悪いことしてきてた………。」

「………どういう………………こと?」

「……………………………………………………………。」

「……………………………………………………………。」

「篠原さんちにかかってくるイタズラ電話……………

 あれ…………………………オレなんだ………………。」

「…………………………………………………………!?」

 

凍った。凍りついた。

どれだけの時間が経っているんだろう。 

このまま、ときが止まったまま永遠に続くような気がした。

なんだか世界が時を刻むのをやめてしまったような気さえした。

張り詰めた緊張感。

ふたりの沈黙がふたりの均衡を保っていた。

重い……………動けない……………。

息が詰まる……………息苦しい……………。

 

空の紫。うっすらと月が浮かんでいる。

月が揺れる。ぼやける。かたちが定まらない。

 

ふたりの均衡を最初に破ったのは篠原さんの方だった。

 

「どうして・・・・・・どうしてそんなウソ言うの・・・・・・?」

「ウソじゃないよ、ほんとうだ。オレ、篠原さんにオレの気持ちわかってほしくて・・・・・・・・・

 だから何度も告白しようとしようとして・・・・・・・・・でもそのたびに肝心なところで大切な一言が言えなくて。

 オレ、篠原さん苦しめるつもりなんてなかったんだ。電話のことそんなに気にしてるなんて思わなかったから。

 ごめん。いまさらなに言っても許してもらえないよね。だけど、やっぱり言わなきゃいけないって思ったから。

 これ以上、篠原さんを苦しめたくないから・・・・・・・・・

 自分のせいで自分のいちばん大切な人が苦しんでるなんて、なんだか胸が痛くて、つらくて・・・・・・・・・。」

「あたし帰る。」

「…………………………。」

「よくわかんないよっ! なに言ってんのかわかんないっ!!」

「あっ………………………………………………………………。」

 

遠くに小さくなっていく後姿をただただ見送ることしかできなかった。

星も見えない薄暗い闇の中をただ立ち尽くすしかなかった。

 

完璧に嫌われちゃったな……………。

 

だけど伝えたかったことは全部言ったんだ。オレの気持ち、伝えたんだ。

仕方ないんだよ。自分で蒔いた種だ。こうするしかなかった。

これでいいんだよ……………これで…………………………………。

 

オレはしばらく丘の上で、その草むらの上に寝っ転がって夜を見つめていた。

なんだか空は哀しい色をしている。

 

忘れられるだろうか…………………。

あんなに好きだったあのコのこと、忘れられるだろうか………………。

 

風がつめたい。カラダの中も風が吹き抜けてる。

だけど今のオレにはなんだか心地いい気がした。

でもきっと………きっとこのままじゃ、………オレは凍り付いてしまうだろう。

このままじゃきっと……………。

 


 

To be continued→