飼い方のすすめ


 振り返ると、僕の通った学校は変人が目立った。

学校自体が変人の収容所であったのか、僕の世代が他の世代に比べて変人率が高かったのか、

あるいは年齢的に奇矯を呼ぶのかを知らない。

 ある時、別学科の後輩がやってきて、「困ったことになりま した。」と言う。

 なんでも、彼の属する研究室の美人の誉れ高い女子学生が、ゴキブリを飼いたいと言い出し、

熱帯魚の水槽やら藁やらを用意して、実験台の上に据えてしまったのだというのだ。加えて、

ゴキブリがかわいそうだから蓋をしないのだという。

 「そんなことをして逃げないのかねぇ」

と僕が質問すると、

 「水槽の壁にワセリンをしっかり塗っておけば、滑って逃げられないと本人は言っておりますが、」

と彼が言う。 専門外の僕は(といっても、優秀とはかなり言い難い僕には全てが専門外だったのだが)、

 「ヘェー、そうなんだ。」

と感心して、ゴキブリの餌のことや生態について教えてもらった。

数カ月経って彼と会ったとき、ふと思い出して聞いてみた。

 「そーいえば、研究室のペットのゴキちゃんはどうなった?」

 「それが、もう大変で」と、彼はその後を語った。

 ある日、研究室でお茶を飲みながら、暑さのせいかゴキブ リが増えたような気がするとかいう話を

していたら、彼女が部屋に入ってきて水槽を見るなり、

 「あれっ、太郎ちゃんがいない。」

とか言い出したそうで、その後

 「花子も次郎もヨースケも いない」

と行方不明者の名を連呼し始めたので、一同あわてて水槽へ走り寄ってみると、

昨日までゴチャゴチャ居た筈のゴキちゃんたちの相当数が脱走をしてがら空き状態。

 皆の見ている前で、一匹のゴキブリが水槽の長辺方向へブンと重い羽音を残して飛んでいったとか。

呆気にとられていたら、ゴキブリって羽があるんだよなと、誰かがつぶやいたと言う。

 自分の動物飼育の失敗も含めて考えれば、野生を飼うには、残念ながら、放し飼いは互いに

不幸な結果を呼びやすいということなのであって、互いに不幸を見ないで済むのは、

彼我の境界を守ることが必要であるなと思っている。

因みに、この研究室の所属者にゴキブリ駆除(サンダルで叩き潰す)の達人が多かったのは、

この事件の成果ではなかったかと思っている。


Sabbathっす。

飼っている人がいたんっすねぇ、、やっぱり、どこぞの研究所にはウジャウジャいるんだろうなぁー

おそろしいっす。


戻る