そういえば、前に
女性の描いてある絵の話をしたよね。
その絵の話を聞きたがっていた人たちがいたよね、じゃあ今日
はその話をしてあげるね。
あの絵がなぜ生まれたのかを、ね。
あの絵が生まれた、いや、描かれたのはそう昔じゃないん
だ。
女性の肖像画と言ったら、どんな風に描かれるものがあると思
う?
ただの芸術として、綺麗な人を描きたいからっていうのは絵が
上手な、絵が好きな人がすること、思うこと。
でもね、その他に絵が苦手でも好きな人のために、そのために
描く絵もあるんだ。
この絵はそんな絵なんだよ。
ある男には好きな人がいました、とっても大事なとっても大切
な恋人がいました。
その女性もその男のことが大好きでした、二人はいつも一緒に
いました。
離れることが寂しいことにしか感じませんでした。
だからいつも一緒です、いつも一緒にベタベタなんてしたくな
いって人もいるだろうね、でも、この二人はいつも一緒にい
た。
だったら、結婚すれば?そう、二人もそう思っていまし
た。
ずっと一緒にいられる方法だから、でもまだだめでした。
理由?親の反対?そんなものはありませんでした。
ただ、そうただ、まだ、って感じがしただけ、そう想っていた
だけ。
なぜだかは、二人にも分かりませんでした、結婚しても今のま
までいる自信もありました、ずっと離さない自信もお互いにあ
りました、お互いを想う心の、想いの強さにも自信がありまし
た。
でも、まだ、って感じがしました。
そう、まだ・・・
それから、幾日が過ぎたある日突然恋人は言いました、私は遠
くに行かなくちゃならなくなったの、それはもう決まったこと
なの、どうすることもできないことなの。
私も離れたくない、でも・・・でも、ごめんね。
男は言葉につまった、なんて言えばいいんだ?ずっとずっと一
緒に居られると思った恋人が、突然遠くに行くと言っている、
それはもうどうすることもできないと・・・
止められる訳がなかった、相手も私と気持ちは同じなのに、そ
う言っているのだ、それなのに私になにが言える?
君達ならどうする?止めるかい?どこにも行くな!そんなもの
無視すればいい!って言えるかい?
君達なら、なんて言ってあげれる?
私は相手の、恋人の気持ちが痛いほど分かったから、なにも言
えなかった。
ただ、離れていても気持ちは繋がっている、そう、離れていて
も気持ちは、想いは一つ、だから大丈夫!
そう言った・・・だけど、本当はそうは想わなかった、離れて
いても気持ちは、一つ?・・・
それは、私には綺麗ごとにしか感じなかった、一緒にいなく
ちゃ伝わらないこともある、一緒にいるからこそ伝わることも
ある。
だから、一緒にいなくちゃだめなんだ、きっと・・・ダメナン
ダ・・・よ。
そんなことを言った自分が腹立たしかった、でもそう言うしか
なかった、それ以外になにが言えただろう?私にはわからな
かった。
彼女もそれを納得するしかなかった。
彼女はにっこり微笑んで、そうだよね、離れていても心が通じ
合ってるから大丈夫だよね!
って言った時の笑顔が妙に寂しそうだった気がした。
大丈夫すぐに帰ってこれるわ、その時は・・・ね。
うん、その時はずっと一緒にいよう、もう君を離さないでいい
よう・・・
彼女を抱き締め、その言葉を囁いた。
「結婚しよう」
やっと言えた言葉だった、まだ・・・その感じがやっと消えて
いた。
そして、彼女は遠いところへ行ってしまった。
この、太陽の塔の見える町から。
私は自分でいられる様、彼女の肖像画を完成させた、遠くへ行
く前から描き続けていた絵を。
その絵は自分でも驚くほどいい絵に仕上がった、私は絵が下手
ではないと思うのだが、苦手な方である。
そんな私の描いた絵が、まるで自分で描いた絵じゃないような
ほど素晴らしかった。
そう、今も彼女が私の直ぐそばに居るかのようだった。
嬉しかった、彼女がいつもそばにいてくれる気がしたか
ら。
それから毎日、絵を観て話をするのが日課となったぐらいだっ
た。
それだけで、彼女と話している気になれるから、寂しさをしの
ぐにはちょうどよかった。
そんなある日、一通の手紙がきた、送り主は聞いたことがな
かったが、宛先は私のとこで合っていた。
その手紙を早速読んでみた、一瞬で血の気がひいてしまっ
た。
彼女が・・・私の愛する人が・・・本当に遠くへもう2度と会
えぬ場所に・・・
私はオカシクなってしまいそうだった、すべてが終わった気が
した、私が私でなくなる気がした・・・
そんな時、あの絵が目に止まった・・・
絵、そう絵・・・彼女じゃない、ただの絵、温くもない、話し
もできない、そう、タダノ絵・・・
こんなものが彼女の代わりであるはずがない!代わりになれる
はずがない!彼女はもういない、私はこれから・・・どうすれ
ば?
外はなぜか嵐へと変わっていた、不思議な嵐だった。
町全体がなにか大きな渦に飲み込まれるかのようだった。
しかし、男は気にしなかった、そんな余裕はもはやなかっ
た。
あの絵はもうすでに捨ててきた、あの絵はもういらない、もう
二度と見たくはなかった。
そんな中、嵐はその強さを増していった、建物が人が物がすべ
てが飲み込まれていった。
その男も、あの絵も・・・すべてを飲み込んだ。
男はが次に目を覚ました時には、なにも覚えていなかった彼女
のこと、絵のことすべてを忘れていた。
心はカラッポだった、男はそのままこの町の奥へと消えていっ
た。
どこへいったのかは、もう・・・
そして、あの絵もこの場所に来ていた、そしてその絵は考えて
いた。
ん?絵が考える?間違ってる!って思った人、間違ってはいな
いよ。
その絵にはなぜか意思があった、自我が目覚めていた。
現世で想いを、すっごく強い想いを受けていたせいなのか
な?
男の純粋な、とても強い想いを、彼女同様の想いをこの絵に与
えていたからね、だからかもしれない。
その絵は、考えていた。
私がその彼女になればいい!そうすれば、あの人とまた一緒に
いられる!
あの人が望む人に、私がずっとそばに居てあげれる。
私はあの人を悲しましたりしないもの。
あの人のためにいれるもの、離れないし離したりしないも
の。
私がずっと一緒にいてあげる。
私なら、あの人を幸せにしてあげれる。
そう、想い・・・そう思い込み絵は男を探し始める。
そして、幾人もの人たちを絵の中に取り込んでみた、だが彼で
はなかった、だが男の想いを理解するためいろいろ試み
た。
前に話した男の話しもその一人なんだ。
そして、今もこの彼女は、いや、この絵はどこかに消えた男を
探し続けている。
一途にあの男を求めてさまよっている。
おしまい。