人形


この世界には人形と呼ばれるモノが存在している、人により作り出されしモノなり。
私は人形?人間?それとも・・・

ある日のこと私の生活を大きく変える出来事が起こった。
それは大きな怪我をした時のことだった。
私は、医者たちの会話を虚ろな意識の中で聞くことが出来た。
「先生!急患です、車にはねられ重傷だそうです。」
「それじゃあ、至急オペの準備だ!」
「先生、それが・・・」
「なんだ?急がないとこの子の体がもたんぞ!」
「この患者は人形で・・・」
「は?ならここの管轄ではないではないか!まったく、急患だと言うから急いで用意したのに!」
「私が人形?いったいどういう意味なの?」
私は消えゆく意識の中、複雑な感情を覚えていた。

人形、それはこの世界では表だって知るモノはほとんどいないであろう存在であった。

その裏では、クローンなどの技術も格段に進化しており、人工的に『人』を作り出すことも可能なのだが、手っとり早く自分の思う通りの子供などを作る目的で使われていた。
作り出された子供は、ほとんどが自分が人形であることを知らずに生きている。

私は夢を見ていた、幼い時の夢、パパやママと公園で遊んでいた時の夢を・・・
「パパ、パパ!!見てみて!私ね、坂上がり出来るようになったんだよ!」
「ママ、見て!二重飛びもできるんだぁ〜!」
それを見ていた両親は、とても嬉しそうに私のことを見ていた。
そして、今まで微笑んで見ていた両親が急に遠ざかって行った。
「パパ?ママ?どうしたの?急にどこへいっちゃうの?ねぇ、待ってよ!私を置いていかないでよぉ〜」
私は遠ざかっていく両親を泣きながら必死に追いかけた。
「待ってよぉ〜、なんで私をおいていっちゃうの?私いい子にしてるよ、ちゃんと言うこと聞いてるよ。だから、待って、おいてかないで。」
「あっ!」ばたん!! 私は何かにつまずいて、力一杯転んでしまった。
私は、それでも痛いのを我慢して急いで起き上がり、また追いかけようとした。
が、目の前にはさっきと変わらぬ笑顔の両親が直ぐそばにいた。
「パパ、ママ・・・」
「どうしたんだい?そんなに急いだら転ぶに決まっているだろう。」
「あらあら、そんなに急いで転んじゃったから、怪我しちゃってるわね。」
「おや?ほんとだ、おやおや、こりゃまたひどい、足のフレームががたがたじゃないか!」
「ほんとに、修理費がかさばりそうだわね。」
足のフレーム?修理費?一体何のことを言ってるの?骨?治療費?
私は不思議な感じを覚えながら自分の足を見た。
「なっ!これが・・・私の足?」
そこには、皮膚の中から見えている”カシャカシャ”と動く銀色の棒のようなモノが動いていた。
「きゃぁぁぁぁっ!!」

がばっ!・・・私は自分の声で目が覚めた。
「どうしたんだ?しっかりしろ!大丈夫、ここは病院だよ。」
「どうしたの?私よママよ、そばにいるから安心して。」
そばには、さっき夢で見た両親が心配そうに私を見ていた。
「夢だったのか・・・そうだよね、人形云々なんて話し聞いたことないもんね。」
私は両親に聞こえないような小声で呟いた。
私の横では真っ赤な液体が管を通して私に繋がれていた。「輸血かぁ、これも私が人形で無いことの証だよね。運ばれた時の話しもきっと夢だったんだわ。」
私は夢であることを納得し、その場はあまり考えなかった。

私はしばらくこの病院に入院することになった、そりゃそうだある、車にひかれたのだからね。
そして、しばらくして感じたのだが、この病院には他の患者はほとんど居ないであろう、ってことが分かったのである。
なぜなら、まったくと言ってよいほど人の話し声が聞こえてこないである、病院だからかもしれないのだが・・・

それから、数ヶ月が過ぎた頃。
「よし、体の方ももう平気なようだ、大丈夫!明日には退院できるよ。」
医者からの嬉しい報告である。
「やった!やっと家に帰れるし、学校へ行って友達と会えるんだね!嬉しいよぉ〜!」
「いやぁ〜、君は本当にラッキーだったよ!最近ではヨソではほとんど見かけない機材がここには置いてあたんだからね!」
「え?私の怪我ってそんあに大変なモノだったんですか?」
私は医者の言葉をそのまま受け取り、尋ね返してみた。
「う〜ん、そうだな、ある意味そうなるのかな?まぁ、退院できるんだ、おめでとう!」
医者はそれだけ言うと、さっさとこの病室から姿を消していた。
私は歯切れの悪い医者の言葉を多少気になりながら、「まぁ、いいや!」というように、気にしないことにした。
その後、医者から電話が行っていたのか両親から連絡があった。
明日迎えにきた後、家で退院パーティーをしてくれるというモノだった。
私はそんな両親がとても好きだった、それ故とても嬉しくてしかたがなかった。
「今日は早めに寝よう、そして明日からは今まで以上に両親を大切にし、友達を、そして自分を大切にしよう!!」
そう新たな決意をして、静かに眠りについた。

その夜、夢なのか現実なのか、外の方でいろいろな音が飛び交っていた。
ヘリ、大型の車、大勢の人の足音すら聞こえた気がした。
が、それはやっぱり気のせいだろうと思い、また深い眠りへと落ちていった。

次の日の朝、医者や看護婦の人達にお礼を言って帰ろうとしたところ、病院の中には人っ子一人居なかった。
「あれ?ここって特別病棟だったのかな?でも、先生や看護婦さんもいないのは、変よね?」
私は最初にここに運ばれていた事を思い出していた。
「まさか、あれは・・・夢じゃなかったとでも言うの?私が人形だとでも?ここはそのための施設だとでも言うの?」
私は怖くなり病院の外に出た。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・パパは?ママは?怖いよぉ〜、早く来てよぉ〜」
私はフト周りを見渡すと、外も病院の中と同じく人の姿は全く見当たらなかった。
「なに?なんなの?人はどこに居るの?誰かぁ〜!・・・返事をしてよぉ〜・・・」
私はいてもたってもいられず、家へと行くことにした。

そして、しばらく歩いていて、やっと家の近くまでついた。
その横を1台の車が通り抜けていった。
私は、退院後初めて動くモノを見た嬉しさからその車を目で追っていた。
が、その車の荷台には見知った顔の人間が乗っていた。そう、両親であった。
「なんで、パパとママが?」
私は無我夢中で車の後を追いかけていた。前に見た夢がフラッシュバックしていたのである。
「パパァ〜、ママァ〜、どこいくのぉ〜?私を置いてどこにいっちゃうのぉ〜?」
私は泣きながら、両親を乗せた車を必死で追いかけた。
私は何かにつまずき、大きく転んでしまった。
そして、車は無情にもそのままどこかへ消えて行った。
私はどうやら転んだ拍子に怪我をしてしまったらしかったが、私はそのまま泣きじゃくっていた。

すると、後ろから車に音が聞こえた。
私はそちらの方を見てみると、ジープに乗った軍人風の二人組が乗っていた。
「おい、まだあんな所に人形が残ってやがったぜ、まったく手間かけやがる。」
「いや、あの足をみてみろよ、まさかと思うが確かめてみよう。」
「おいおい、ここがどこか知っているのか?そんな訳があるわけ無いじゃないか!」
軍人風の一人がなにやら機械を取り出し、なにかしていた。
「やっぱりだ、熱センサーにハッキリ反応してやがる。」
「おいおい、マジかよ、どうやってここに迷いこんだっていうんだよ。」
「それよりも、保護しないといけないだろう?」

「なに?なにをあの人たちはしてるの?」
その二人は私の側までやってきた。
「君は人間かい?なんでこんな場所にいるんだい?」
「え?なにを言ってるの?私はもちろん人間よ!それよりもこんな場所ってどういう意味?」
「おやおや、ここがどんな場所かも知らずにいたのか?ここは人形と呼ばれる疑似人間の大規模な実験機関だ。」
「この人形たちが人間の社会でどう動くのか、共存はできるかの実験をね。」
「おい!言い過ぎだぞ!!なに、君はこれ以上知らなくてもいいことなんだよ。」
私は想像以上の事実に絶句した。
「う〜ん、子供には刺激が強すぎたようだ、なんせ、公式発表は未定の話しだからな。」
私は戸惑いながらも質問してみた。
「私のパパとママは?町の皆はどうしたの?」
「あぁ、この第一プラントは閉鎖だ、なにやらこの町の人形たちの間で不穏な動きが見えたとかって理由だったかな。」
「そういう訳で昨日の内にほとんでの人形は回収済みだ。」
私は昨日聞いた、ヘリや大型の車の音が夢ではなかったことを知った。
そして、動揺しながらも一番の疑問を聞くことにした。
「なっ!?じゃあ、じゃあ、この町の、大勢居た町の人たちは・・・どうなるの?」
「あぁ、そんな危ない人工知能をリサイクルする訳にもいかないってことで・・・全て廃棄だ!」
予想通りの答が帰ってきた。
「なっ!なんてことを、その中には私の・・・」
私はいろいろ起こりすぎたのと、疲労により気を失ってしまった。
私は消えゆく意識の中でいろいろな思いがよぎっていた。
私の大切な両親が人形?そんな、そんな、私はこれから・・・
そんな中、前の方で二人が話しているのが聞こえた。
「おい、この子は100%人間だというのか?もしかしたら、人形たちが作り出した新たな生命体かも知れないんだぞ!」
「ん?それじゃあ、100%人間てことだってありえるだろう?どちらにしろ俺たちじゃ判断できんよ、上にまかせるさ。」
最後に聞いた言葉だった。
そのまま、車に乗せられたらしく私の体は揺れていた、なぜか妙に気持ちがよかった。

今度目が覚めたら私はどこにいるのであろう?
前と同じでパパとママが心配そうに見ているのだろうか?起きてこれが夢でよかったと感じるのだろうか?
それとも・・・
私は、次にどこで目を覚ますのだろうか?

おしまい

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