私はしばしば鏡を見て立ちつくす時がある。
鏡・・・私を写した鏡・・・ほんとに同じ私?
いえ、もしかしたら私は、別の私が鏡やガラスなどに写った時に写しだされるために存在しているのではないかと・・・
鏡に写った別の私を写すためだけに、この世界を同じように動いているだけなのでは?と思いながら見ることがある。
そもそも、そんな事を考えること自体おかしいのだろうけどね。
「ふふっ、そんなわけないないよね。」
気持を切り替えて私は再び歩き出す。
しかし、最近妙なことが起こっている。と言っても普通なのかも知れないが。

よく直感という言葉が使われる。直感とは?それこそが鏡のむこうで生活している別の自分の考えだとしたら?
「私はこの直感を信じるわ!」とか「なんとなくこっちがいい気がする」なんてのは、別の自分に合わせるために動かされてるだけどは考えられないかい?
そんな時は大抵信じる、それが自分の考えとは異なっていようとね。けして逆らうことは出来ない時も・・・
そう!そこが彼女の妙に感じているとこなのさ。

私は最近直感やなんとなく、という感じで動くことが多くなっている気がする、ほとんいどいい方向に行くせいもあるのだろうが。

人間良い方向に進むなら直感重視になってしまう事もなくもない、神頼み、賭事での直感、考え中の閃き、それがすべて別の自分の考えだとしたら?
なんとも悲しいことである、しかし、幸にもそれを知る人はいない良いことだ、それを知ってしまった人は生きてることに意味なんて持てるかな?精神崩壊または・・・
人間なんて本当のことを知ってしまうと脆いもんだ、簡単に潰れちゃうんだよ、ふふっ
おっと、話しがそれたかな?

私も自分の直感が良い方向に働いているので、何かある度にその直感にしたがった。
「最近私ついてるよなぁ〜!なんか良い感じ!」

彼女が知ったらどうなるだろ?ふふっ。なんとなく悪戯したくならないかい?
今自分が信じている直感はすべて別の自分の行動でしかないという事実を耳打ちしたくなる、ふふっ
君は鏡に写る影でしかないんだよ、君に意思なんてないのさ!とね。
彼女はどんな壊れかたをするだろう!想像しただけでゾクゾクするよ!

でも、最近違和感が強くなっている気がする、直感に頼りきっている私に対して。
「最近自分の意志で決めたことがなかったわね。でも、直感を信じたほうがうまく行っているのも事実なんだし仕方がないのかも。」
そんなある日、道を歩いていると川に汚い仔犬が流されていた。
私は犬は好きなほうではない、しかも、水もあまり好きではなかった。
だが、私はその光景をみてしまったのだ、犬が流されているという光景を。
私は迷っていた、このまま更に下流に流されると流れが速くなり間違いなくこの犬は死んでしまうであろう。
その事を知っていたからこそ私は迷っていた。
犬はあまり好きではない、水もプールに行かないぐらいあまり好きではない。
この状況で、私の直感は迷うことなくそのまま見て見ぬフリをする、と告げていた。
確かにそうだ、そうだが・・・
私はそれでも迷っていた、が!動物が、あの犬が死ぬ!
そう思った瞬間、動物が死ぬのを見過ごすことは直感がどう言おうとできなかった。
私は直感を無視し川に飛び込んだ。無我夢中とはこのことだろうと、どこかで冷静に考えている自分も居た。
川が思ったほど深くないことも幸し、意外に楽に助けることが出来た。
犬を助けて思ったことは、私はなんで犬があまり好きではなく、水も好きではなかったんであろう?と疑問に思うほど、水が平気で犬も可愛くて仕方がなかったのである。
その時不意に見た水面に自分の姿が写っていなかった。そう、犬は写っているのだが私だけが消えていた。
私は驚きもう一度見てみた。しかし、それは見間違いだったらしく私の姿はちゃんと写っていた。
それからというもの、直感とかが働かなくなっていた。
自分の意志で行動し、歩き出していたのだ。不思議な気分だった、なんか新しい自分になった感じさえした。
私は今は助けた仔犬と共に暮らしている。

あ〜あ、全然つまらないよな!私が悪戯する前に彼女は影では なくなってしまったようだ。
え?それじゃあ、別の彼女の影はどうなったのかって?
う〜ん、それは簡単だ。新しい影が生まれたんだ、もちろん彼 女にもね。
たまに私の楽しみをぶち壊しにする奴が現れるときがある、今 の彼女みたいにね。
あの時直感にしたがっておけば!彼女が直感と違うことをした瞬間からすでに影ではなくなって、彼女もまた表となってしまったんだ。
ほんとに忌々しいぐらいだ!
だがそれはまれなこと・・・ふふっ!獲物はいくらでもいる。
そうそう!君はどうだい?鏡に写る自分が別の自分だと思ったことはないかい?
ふふっ、君はどっちだろうね?私が悪戯出来るほうかな?
待ってなよ、もうじき君のモトにいくからさ、ふふっ。

おしまい。

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