悲しい怪盗


これはちょっと不思議な怪盗のお話しだよ。

町の人達が噂をしてるよ。
「最近ちらほらと妙な噂を聞くんだよ、なんでも変った怪盗が出るとかって話しらしいよ。」
「そりゃ、家も気を付けないと!」
「で、何を盗むんだい?」
「人の心らしいよ!」

さぁ〜さぁ〜、おたちあい!
ここからが今回のお話しの主役!怪盗のお話しの、はじまりはじまりぃ〜

町の人に噂されていた怪盗だが今日も一つの家へと目星を付けてさっそうと家の中への侵入に成功する。
家の中には可愛い女の子が眠っていた。

ここで、皆に一つ言っておきたいことがある!
この怪盗もちろん変態ではないし、吸血鬼でもない!
ではなぜ、この家に忍び込み何を盗むのか?
盗むものは最初に言ったね、そう人の心を盗んじゃうんだ!
それは、続きでね。

その気配に気づいたのか少女は起きてしまった。
その目の前には怪しい黒い影が一つ。
少女は悲鳴をあげそうになった・・・が!?声が出てこないのである。
そればかりか、その影、怪盗に想いを抱くほどにまでなっていた。
*
不思議だね?では、タネ明かし!
皆はチャームってのは知ってるかな?目を見ただけでまるで催眠術にかけられたように相手の意のままになってしまう力のことを。
この怪盗にはそういう能力があったんだ、その能力で相手の心を奪ってしまうんだ。
これが、このお話しを話すうえで大事なとこかな?
また戻すよ。

怪盗はその能力で少女の心を奪った。
だが、何をするわけでもなかった、ただ一緒に話しをしてお茶を飲んだりしてくれるだけで嬉しかったんだ。

鋭い子なら気づいたかな?
この能力には欠点があった。そう、心を操っているのだからとうぜんお話しなんてものは出来るはずがないんだ。
全ては怪盗しだいの会話しかできないんだ。
寂しいよね、それは会話とはほど遠いものでしかないんだから。
それを、怪盗も分ってるんだ・・・でも、そうでもしないともっと寂しいんだ。
虚しくなった怪盗は外へ飛び出した!
部屋にはまるでマネキンの様に動かない少女の姿があった。

怪盗は最近悩むことが多くなってきた。
「あんなのは、会話じゃない!分ってるんだ・・・けど・・・けど!」
私のこの目で、この能力のせいで皆が私から離れてしまった、何もしなくても私の周りから皆は居なくなった。
ある時、この能力を知った周りの人は急に警戒し始めた、変なことが起きると真っ先に私が疑われるようになった。
そして、私の周りから誰も居なくなった・・・ダレモ・・・ダレモ・・・
そう、私はただ寂しいだけ、人と話しがしたいだけ、ただそれだけなのに・・・
この目をえぐり出そうとも考えた、考えたが出来なかった・・・私は臆病なのかな?
その頃には日の光がうっすらと射し始めた。
そうして、朝が来て怪盗は姿を消した。

それからというもの、たびたび心の無くなった子供たちが出始めたのだった。
それから、幾日か過ぎた日のことだった。
怪盗が例によって決めた家には、初めの時同様少女が眠っていた。
その後も初めの時と同じく、心を奪った・・・が!?そこからが違った。
この少女は心を奪えなかったのである。
怪盗は驚いた、こんな人が居るとは思ってもいなかったのである。
いや、いままでの状況に馴れてきていたので対処に困った、が本当だろうか。
怪盗があたふたと考えている間に少女が話し掛けてきた。
「あなたが最近ここら辺で心を奪っているっていう怪盗さんね。」
「寂しい目をしてるのね・・・暗い瞳を・・・」
怪盗はいきなりの話しに戸惑いながらも話しを返した。
「君は私の目を見ても平気なのかい?」
「平気よ・・・私は目が見えないの。」
怪盗は少女の告白に驚きながらも、チャームが効かない理由を理解していた。
「でもさっき、私の目のことを・・・」
「それはね、見えなくても感じることが出来るのよ、あなたの心から直接ね。」
「私があなたの心を癒してあげるわ。」
「だから、他の子供たちの心を返してあげて、ね。」
怪盗には少女の申し出が嬉しくてしかたがなかった、人と会話ができるのだから。
「うん、私の話しを聞いてくれるかい?私に話しをしてくれるかい?」
「それだったら、もうなにも望まない何も奪わないよ、約束するよ。」
それを聞いた少女はニッコリと微笑んだ。
「私で良ければいいわよ。」
「あなたの話し相手になってあげる。」
「あなたの心が癒えるまでそばにいてあげる・・・」

その翌日、マネキンのように変ってしまった子供たちが元に戻ったのは言うまでもない。
それからというもの、怪盗の姿を見たものはいないとさ。
そして、その少女の話しを誰に聞いても知ってる人はいなかったんだってさ。

おしまい。


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