あの少女と出会ったのは、もうかなり昔の話しになる。
そうあれはまったくの偶然だった、素敵で悲しい偶然からだった。
私の名前はヨーコ、夢先案内人の九段 ヨーコ。
私は仕事の帰りで路地裏を歩いている時のことだった。
目の前に黒い大きな塊が目に付いた、今は町に明かりがポツポツとつき始めた頃で遠くからではあの黒い塊が何かは判別しにくかった。
私はどちらかと言うと怖がりでは無いため、気にせず近付いていった。
そして、その黒い塊に近付くにつれ、だんだんと何であるかが見えてきた。
その黒い塊の前まで来て確信した、この黒い塊の正体は黒いコートに見を包んだ少女であった。
いや、少女であったかは確信がなかったが、綺麗な顔が汚れてはいたがそうだと感じた。
しかし、何故こんなところに?一番最初に思ったことである。
そして、とりあえず怪我か病気かどうか気になった。
「あなたこんな場所でどうしたの?どこか痛いの?」
とりあえず、私は聞いてみた。
その少女はな力なく首を横に振った。
私はとりあえず大丈夫らしいことにホッと胸を撫で下ろした。
私はその他気になったので色々聞いてみた。
「なぜこんな場所で、しかもそんなに泥だらけで・・・」
そこまで言って、それ以上言うのを止めかわりにこう言った。
「ねぇ、私と一緒に来ない?今仕事に帰りで温泉にでも行こうと思ってるんだけどさ、来る?」
少女はいきなりの誘いにキョトンとした表情をしたが、少し表情を緩め大きく頷いた。
「よかった!それじゃいきましょう。」
余計なことを色々聞きそうになった自分に嫌な感じを覚えたが、少女が来てくれると頷いてくれて妙に嬉しかった。
そして、二人で温泉のある通りまでやってきた。
「ここがね、私のお気に入りの穴場の温泉なんだ!露天風呂からの太陽の塔の眺めが最高なんだよ!」
「家にお風呂があるけどさ、フッとたまに入りに来たくなっちゃうのよ。」
そういい少女の手を取り中に入っていった。
ガラガラ、扉を開くと元気な声が響いた。
「いらっしゃ〜い♪・・・あら、ヨーコさんじゃないですかぁ!」
「久しぶりですね!ゆっくり温まって疲れを取っていってくださいね!」
この元気な女性は温泉の主の猫浮さんである。
「う〜ん、そうだね仕事が忙しくってさ、で、久しぶりに太陽の塔を見ながら露天風呂に入りたいからきてしまったのよ。」
「ごゆっくり〜・・・あれ?ヨーコさんの後ろにいる女の子どなた?」
「まさか・・・隠し子だったりして(笑)」
冗談混じりで猫浮が言った。
「まさかぁ〜、知合いよ、し・り・あ・い♪」
馴れた私も旨く相手をした。
「なんだぁ〜、つまんないなぁ〜」
ニッコリ悪戯っぼく笑って見せた。
そんな会話をして、少女を温泉に入れるため脱衣所へと向かった。
「それじゃ、服を脱いではいろっか。」
そう言い、少女のことを気にしながらも服を脱ぎ始めた。
それを見た少女も、私の後を追うように服を脱ぎ始めた。
そして、少女があの黒いコートを脱いだ瞬間、脱衣所にいるすべての人の動きが止まった。
なんと、黒いコートを脱いだ少女の背中に純白の綺麗な翼があったのだ。
皆の動きが止まったのは驚きもあったが、なんとも綺麗な翼に、その少女の姿に見取れてしまったからである。
少女はそれに気づいたらしく、キョトンとした表情で首を傾げていた。
我に返った私は。
「さあ、はいろっか?」
多少声が裏返っていたかも知れないが、仕方がないことであるあの姿を見たら誰だってこうなっただろう。
「あの子は・・・天使だったの?」
猫浮は綺麗な少女の姿を見て、いささか興奮気味だった。
そして、太陽の塔が見える露天風呂に着いた。
「ここがね、私のお気に入りの場所なのよ。」
「遠くに見える太陽の塔がなんとも良い感じでしょ?私は好きなんだ。」
私はお湯に浸かりながらボ〜ッと見ていた。
「うん、いい場所だね、私も好き。」
「そうでしょ!いいのよねぇ〜・・・」
そう言い、フト気がついた、少女が喋ったのである!
そういえば、まだ声を聞いていなかったことを思い出した。
それにしてもいい声である、姿から想像した通りとても澄んだ綺麗な声をしていた。
そんなことを考えていると、奥の方から声が聞こえた。
「そうですわね、ここはいい場所ですわね。」
声の主は最近結婚した宝井 雅だった。
「あら、こんな場所で会うなんて珍しいわね。」
珍しい人に出会い、ちょっと驚いた。
「えぇ、夫の幻風老もこの場所が好きなんで、たまにくるのよ。」
「それにしても、綺麗な方ですね、脱衣所で見かけてびっくりしてしまいましたわ。」
少女はなんとも言えない表情でモジモジしていた。
そんな時、反対の男湯から声が聞こえた。
「お〜い!雅ぃ〜そろそろ帰るとするかのぉ〜?」
声の主はさっき話した幻風老みたいである。
「はぁ〜い、それじゃあがるわね、あなた。」
「そういうことなので、お先に失礼するわ。今度どこかでお会いしたらお茶しましょうね、お二人さん。」
そういい嬉しそうに露天風呂から出ていった。
そして、ゆっくり景色を堪能して上がろうとしていると、少女が驚いた声をあげた。
「きゃっ!」
目線を落とし見てみると、少女の綺麗な翼にじゃれている黒猫がいた。
「クロ!だめじゃないの!ごめんなさいね・・・」
そう言い走ってきたのは風禄だった。
しかし、そばにきて少女の姿をみた風禄は脱衣所の時同様、動きが止まっていた。
少女はニッコリ微笑みクロを抱え言いました。
「だめだよ、これはね私の大事な翼なの、だからね悪戯しちゃだめだよ。」
「私は大丈夫ですのであまりこの子を叱らないでね。」
そう言い、風禄にクロを返した。
「えっ?えぇ、ほんとにごめんなさいね、ほんとに。」
やっと、我に返りクロを受け取った。
「そうだ!お詫びと言ってはなんだけど私ね、風鈴屋をやってるの。」
「だからね、あなたに風鈴をプレゼントするわ。」
そういう会話をしながら、三人と一匹は脱衣所へと向かった。
そして、服を着てくつろいでいる時、さっき約束した風鈴を風禄が持ってきた。
「これね、最近とっても売れてる『落ち葉』と言う風鈴なの、もしよかったら受け取ってくれるかしら?」
少女はとても嬉しそうな表情をした。
「うん!大切にするよ!うわぁ〜、きれいだなぁ〜」
そう言い風鈴を眺めている姿はとても綺麗で絵になるぐらいであった。
「それじゃね、もし機会があったらうちの店にもよってね!」
「今度はコロッケもご馳走しちゃうからさ!」
そう言い、風禄はクロと連れて帰って行った。
私たちも帰ろうとすると、猫浮が声をかけてきた。
「ねぇ、あなたまたここにきてね!あなただったら安くしちゃうからさ。」
「それじゃあ、私も安くしてよ。」
「私は可愛い子にしか安くはしないのよ。」
なんて会話をしていると、少女がクスクスと笑った。
そんな姿を見た私たちも、何だか温かい感じさえした。
そして、温泉を後にした私たちは私の家へと向かっていた。
「どこか帰る場所あるの?」
少女は首を力無く振った。
「んじゃ、私のとこにきなよ、それじゃ決定だね!」
私は半場強引に言ってみた。
少女は目を輝かせ私の顔を見ていた、そして嬉しそうに。
「うん!」
っと頷き私にくっついてきた。
私はこの少女がほっとけなかった、翼があるなしにかかわさずそう思った。
そして、可愛くて仕方がなかった、妹が出来たようなそんな感じだった。妙に嬉しかった。
そして、私は翼のことなぜあんな場所にいたのか、どこからきたのか、をあえて聞かなかった。
いつか、言ってくれるか、話す時がくるのを待つことにした。
そして、家につき少女を横に寝させて二人深い眠りへと落ちていった。
次へとつづく・・・