消えた記憶



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私はある男の人を探していた、いまからずいぶんと昔、いえ、ここでは数ヶ月前まで愛し合っていた人を・・・

私は彼を残してこの世界から強制的に戻されてしまった。
その時に別れてしまった彼を探している。
それは難しいことだった、理由はね、私はこの世界、いえ、この時代には存在してはならない人間なの。
そのため、この時代の人からは物体としての情報として私は認識されないの、ようは見えないってことなの。
そうだな、見えないって云うだけじゃなく、存在していないから触られることもできないな。
私を見ることを出来たら、そこで私はその人には認識された訳だからその人にはちゃんと私は存在してるわけ。
だからね、その人には触れるし触って貰えるの。

そんな理由と、彼はね私の記憶がなくなってるはずなの。
私がこの時代を離れるときに自動的にね、私が接した人達の記憶から居なくなってしまうの。
それは例外無くすべての生き物に適応されうる現象なの、誰がどうしていると云うより、この世界自体がそうしてるのかも。
この世界に起こりうるフソクの自体を回避するためにね。
それでも私は彼に合いたい一心で、掟に逆らってこの時代へと戻ってきた。
彼に会えたとしても、認識して貰えないこと、記憶が無くなっていることを承知で。
でも、心のどこかで覚えていてくれることを期待しながら・・・
私の名前は『果』未来からやってきた人間。

最初にやってきたのは、課外授業として昔の比較的平和だった時代を体験することだった。
そのため、特殊な機械によりこの時代の人間に溶け込むため、初めから物体として送り込まれた。
そんな理由から、この時代をいろいろと体験していた。
そんな時に出会ったの、彼と、そう、雀丸君と・・・
私たちは何か運命めいた感じからか、お互いに一目見ただけで恋に落ちていた。
そんなことないと思う?そうかもしれないね、でも、私たちは実際にそうだったの。
そして、私は課外授業の終わりが来て皆が戻って行くのに私は帰らなかったの、彼と一緒に居たかったから。
私はこの時代に留まることをきめてから数ヶ月が経った。
もう、離れなくてすむと思っていた頃、やはりそう思い通りにはいかなかった。
未来から強制的に連れ戻されてしまったのである、別れも言えぬままに・・・
連れ戻すのが遅れたのは、機械の故障から私を特定し捕まえることが出来なかったからだそうだった。
連れ戻された私はさっそく刑を宣告された、だが過去に重大な影響を与えたわけでもなかったらしく、以外に軽くすんだ。
永久に過去へのタイムトラベルの禁止と一ヶ月の禁固刑だった。
私はその間、ずっと考えていた、もう一度彼に会う方法を。

それから、やっと刑の期間が終わり外に出ることが出来た、私はその足である場所へと向かった。
闇の時間屋と呼ばれる、違法的なタイムトラベルを行っている場所へと。
「お願いがあるの!私を過去の20〇〇年〇月〇日へと送って!」
私はその場所につくなりいきなり話しを切り出した。
「うん?ここがどんな場所か知ってんのかい?お壌ちゃん。」
「それにな、仕事を頼むにはえらい金額が必要だ、用意できてるかい?」
私は鞄いっぱいに詰め込んだ紙幣を見せた。
「ほぉ〜、こりゃ話しが早いじゃないか、しかも用意してるのが電子マネー入りのカードじゃないとこがさらに気に入った!」
「カードはいけねえよなぁ〜、足が付いちまう可能性があるからな。」
「そこまで知っていて、この用意の良さ・・・本気なんだな?」
「えぇ、私はこの時代に未練はないわ、だから、この時代のカードに記憶されている数字には何の興味もがないわ。」
「ある程度の、過去の紙幣があればそれでいいんですもの、だからお願い。」
「それ以上は何も言わねえよ、それじゃあ機械に入りな、希望とは多少のずれはでるかも知れねえが、ちゃんと送り届けてやるさ。」
私は未練がないことを確認するかのように、もう一度入ってきたドアから外を眺め、機械へと向かって足を進めた。
「知っていると思うが、これは正規の機械によるタイムトラベルじゃないから、過去に戻ってもお前の存在は誰にも認識されることはないぞ。」
「えぇ、知ってるわ・・・それでも私は帰らねばならないの。」
「そうか、よっぽどの訳ありなんだな・・・よし!これをやるから持って行きな。」
「これは?」
「神経進化薬だ、優れモノって訳にはいかないが今のお壌ちゃんには十分だ、それじゃあ、いくぞ!」
「ありがとう・・・」

そして気が付いたら、初めて出会った思い出の場所に立っていた。
私はそれからしばらく町を探して歩き、今がどの時期なのかを把握していった。
それからしばらくした頃、昔よく二人で歩いていた通りへと来ていた。
懐かしく思っていると、偶然にも前から彼が、雀丸が歩いてきていた。

つづく。

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