消えた記憶


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私は彼を見つけた瞬間、足が自然に彼の元へと向かっていた。
私はその時泣いていたかも知れない。
彼にとってはそんなに時間が経っていないかも知れないが、私には永遠と言っていいほどの長い時間を費やしていた。
会えない日が辛すぎて、本当に辛く長く感じた。
私の足はすでに走っていた、彼と話したい、彼に見て欲しかったから、彼の元へと走った。
だが、彼女は大切な事を忘れていた、周りが彼女のことを見えていないという事実を・・・
ということは、雀丸にはすでに果の記憶が無いということをものがたっているということを。
私は彼の前に立ち止まり声をかけた。
「急に消えてしまって、そしてそして、いままで連絡もしないでごめ・・・」
果の声も姿も見えない雀丸は、果の体をすり抜けてそのまま気づかずに進んでいってしまった。
「そっ、そうだよね・・・覚えてるわけないよね、感じてくれるわけないよね・・・分ってたのに、分ってたのになんで涙が出てくるんだろう・・・」
果はその場に崩れ落ち、泣き声だけがもう一つの空間に悲しく響いていた。

その時、後ろから声をかけられた気がした。
そんなことがあるわけがないはずである、彼が認識出来ていない以上この世界で姿が具現化させるはずないのである。
しばらくすると、やっぱり後ろから呼んでいる声が聞こえ振り返って見ると!そこには老人が一人立っていた。
「やっぱりそうか、君は未来の人間だね?」
私はその質問に頷くだけで精一杯だった。
「事情は知らんが正規のルートで来た人じゃないね、そういう奴はたいてい無視しとるんじゃが、若い女性が泣いているのは無視できなかったんでな。」
「そうじゃな、ここに来てから何も食っていないじゃろ、取り敢えず私の家に来ないかね。」
私は驚いたのと、もう希望を失ってしまっていたから素直に後についていくことにした。

老人の名は幻風老と言う事以外は何も言わなかった。
そして、幻風老の家につき今までの経緯を話した。
「ふむ、君も愛するもののためとは言え無茶なことをする子だわい。」
「知っていると思うが、未来の人間がただ過去に来ても何にもならないと言うことを知っておって来たんじゃな・・・こまった子だ。」
「でも!でも・・・」
果はそのまま言葉を失っていた。
幻風老はやれやれと言った表情をしながらも、優しい瞳で果のことを見ていた。
「この世界はそう簡単に未来の人間を受け入れてはくれない、だからこの世界は未来から来た人間をちゃんと判別し異空間へと送り込んでしまうんじゃ。」
「だから、こちらからこの世界を見ることは出来ても、干渉することは出来んのじゃよ。」
「それを未来の人間はテクノロジーってやつでこの世界に期間限定で干渉する事の出来るように、無理矢理してるだけなんじゃ、永遠ではないのじゃよ。」
「それだからこそ、正規のルートでない奴は犯罪者か、悲しい思いをする者にきまっとる・・・」
そう言った時の幻風老が一瞬寂しげな表情をしていた。
「この世界には心霊写真と言うものがある、あれがいい例じゃ。」
「未来の人間はこの世界に干渉出来ないものの存在は出来ている、そんな姿が無機質な写真には写るんじゃよ。」
「さてと、お嬢さん、君はこれからいったいどうするね?永久じゃないにしろこの時代の人間に干渉する手が無いわけじゃない。」
「その方法はわしらも食わねば死んでしまう、そんな時に食料やらを調達する時に使い、一時的に干渉するというもんじゃ。」
「じゃが、君の話しを聞く限り有効な手段ではない。」
「えぇ、でも私は戻ってきたの、彼と一緒に過ごしたい、生きていきたいから・・・どちらにしろ、もう戻る気はないわ!」
「そうじゃな、君ならそういう気がした。」
「わしもな、若い頃同じ理由でここに来たんじゃよ、ある方法を試しにな。」
「ある方法?」
「あぁ、この時代に永遠に存在出来る、この時代の人間になる方法じゃよ、しかしな、これには相手の想いがとても重要なのじゃよ、私はそれに失敗してしまったがの。」
私はその時、さっき見せた寂しい表情の理由が分った気がした。
「この方法は危険ではない、しかしな、それが失敗した時はもう永久にこの異次元の住人となり、彼のことはもう・・・」
「でも!私はその方法に賭けてみる!いえ、その方法しか前に進む道はないもの、もう後ろには戻れないのだから。」
「幻風老さん!教えて!」

つづく

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