第6話



システムセンターのソフトハウス作業室は大騒ぎになっていた。

桃子があまりに興奮してまくし立てるものだから「はぁっ?ちょっと落ち着いてよ、なにがあったの?」と由美子がなだめすかしてやっと事の次第が飲みこめた。

たまたま作業室に入ってきたユーザ側の担当者に、綾子が「事務室で、どなたかテレビ見てます?」と聞いたところ、「いやぁ、なにかあったんすか?」と聞いてきたので、桃子の話をしたところ、「えぇっ?ちょっと見てきます!」と目をらんらんと輝かせ、事務室へと走っていった。

正直なところ、実際に映像を見たわけではないので、興味本位なところは多分にあった。

インターネットのニュース速報でも見られればいいのだが、ここでは重要なデータを扱っているため、セキュリティ上、外部とのネットワークは開設されていない。夕方のスポーツ新聞を待つしかない。

主任が「携帯見ればなにか出てるかもよ」と、ニュースサイトに接続した。だが、「芝谷で母子がカラスらしき鳥に襲われ、病院へ運ばれた」旨の速報が出ているのみであり、目新しいことは分からない。号外が配られるような大きな駅も近くにないし、取り乱した桃子の電話で中途半端な情報を与えられたのみで、甚だ欲求不満な状態である。「俺って友達いねぇのかなぁ?誰もメールで画像送ってくれねぇ・・」と誰かがつぶやく。

「こないだ、カラスの話で盛りあがったばっかりですよねー。ホントに人を襲うほど大きくなってたんだ!」と綾子が口を開く。先輩が「でも、最近はカラスの話題は全然聞いてないけど・・・いくらテレビも新聞もネットも見てないとはいえ、スポーツ新聞とか週刊誌の見出しとかに出ててもいいはずなのに」と訝る。主任も「突然2羽だけ巨大になったわけでもなさそうだしね。人間に見つからずに密かに大きくなってたりして」と言えば、ドニーも「山奥に巨大カラスのコロニーがあるんじゃないの?」と、想像は膨らんでいく。

「わかった!変な新興宗教が飼育してるんだよ!」と誰かが言えば、「六島勉センセイの信奉者がナストラダムスを無理やり実現させようとしてるんだ!恐怖の魔王だよ!」「いやいや、テロリストじゃない?ボンラディンとかさ。」「狙われる理由は?腰抜け外交だから?」「そうそう。メメリカの奴隷だからさ、少し懲らしめてやれってんで。」「そりゃ大変だわ。カラス除去装置を取りに行かなきゃ。宇宙戦艦トマト出動!」「作りかけで放置してある地下都市の完成を急げ!」と、結局は下世話な方向に向かうのであった。


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