第7話



豪華な応接室のようである。大理石の床には白黒の毛皮が敷かれ、大きな窓の向こうで、真っ赤な夕陽が大海原を染めている。

「どうだ、日本の状況は?」牛皮張りの大きなソファに身を埋めた、小柄な男が聞いた。「はい・・。パニックに陥っております。」と答えたのは、仕立てのいいスーツを品良く着こなした大柄な男である。履いている靴はよく磨かれているが、合皮である。

「第1段階はうまくいったらしいな。このまま計画通りに行けば、日本は自滅する。我々の思うままになるぞ。」小ズルそうな流し目で大柄の男に視線を送る。

「ですが・・・なにもここまでしなくても、と思うのですが・・・あの母子はたまたまそこを通りかかっただけですし・・・どうせなら政治家などを」

「腰がひけたか?日本が大嫌いだ。日本に思い知らせてやりたいと言ったのはお前たちだぞ。私は最大限の援助をする。だから邪魔しないでもらいたい。お前たちの言葉がきっかけだということを世界中に公表してもいいのだがな・・」

小柄な男の言葉に、大柄な男は顔面蒼白になり、「そ、それだけは・・・」と言ったきり、その場に崩れ落ちた。

「まさかお前たちのような団体のものが一国の破滅を願うようなことを口にするとはな・・私に知られたのが運の尽きだったな」と、傍らに立つ執事風の背の高いひょろひょろした体型の男と共に不適に笑った。

大柄な男が力なく立ち去ると、執事風の男が、鼻で笑った。「大男も、弱みを握られると哀れなものですね。」

「口は災いの元、という言葉が日本にはあるそうだ。バカなヤツだ。あの国にも似たような言葉はあるはずだがな。一時の激情にかられてあのようなことを口走った代償の大きさを思い知るがよい。我々にはもう逆らえまい」小柄な男は、血のような赤ワインのグラスを夕陽にかざし、口を歪めた。

ドアをノックする音がし、執事がドアを開けるとシェフが入ってきた。「旦那様、夕食にはなにをお召し上がりになりますか?柔らかい子牛などいかがでございましょう?それと、タイマイが手に入りましたのですが、スープにすると大変おいしゅうございます。」

「おぉ。子牛は大好物だ。ステーキでもシチューでもいいな。タイマイは久しぶりだな。よく手に入ったな。腕を振るってくれ。べっ甲は、日本から拉致してきた職人に加工させよう」シェフは、一礼して出ていった。

「あのシェフは忠実ですね」執事は感慨深げに言う。「あの男は私に恩義があるからな。昔、秘密警察に捕らえられて死刑になるところを助けてやったのだ。元々、腕のいい料理人だったのだが、もう国には帰れん。命が助かって、おまけに珍しい食材を好きなように調理できるのだから、私には感謝しているはずだ」小柄な男はワインを飲み干した。

「日本のことは、すべてエージェントにやらせて、我々は高見の見物、といこうではないか。」「さようでございますな。記事にすればますます富も転がり込んできますし・・・」

小柄な男は、莫大な富と権力を握っている。「ちょっと私がプレッシャーをかければ世の中はどうにでもなる」


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