第参回:遠距離恋愛

さてさて、今回のお題は「遠距離恋愛」といっても別に恋愛の科学を語るわけではなく、これはあくまでお題。この国で昔から伝わる遠距離恋愛のお話といえば?、時期もちかいということもあって、そう七夕のお話。

七夕、皆さんご存知ですよね?織姫と彦星(織女と牽牛)の年に一度の逢瀬の日。もともとは中国の古い伝説(織女伝説)が日本に入ってきて日本古来の民間信仰と結びついて年中行事となったもので、始まりはかなり古く7世紀の持統天皇の頃には既に宮中で催し物がなされていた。もともと「タナバタ」とは布を織る機(ハタ)の事。織姫が織女なのでこの呼び名が七夕となったわけ。七夕はもともとは旧暦の7月7日のことで「シチセキ」と読んだ。(この説が全てというわけではなく七夕の起源については諸説あり、詳しい事は厳密にはわからない)

この日の行事で短冊に願い事を書いて笹の葉(竹の枝)につるすと願い事がかなうとされているのはご存知の通り。皆さんも幼き頃は願いを短冊に書いた経験もおありでしょう。もちろん拙者にも経験がありますが願いが叶った試しがありません。もっとも幼稚園の年長にして短冊に書いた願い事は「世界征服」だったので叶うはずもないのであろうが。ところでこの短冊の正式な書き方をご存知であろうか?正式な短冊の書き方は7月7日の早朝に笹の朝露で墨をすり、その墨で短冊に願い事を書くのです。ちょっと面倒くさいね。まぁ、願いは早々簡単にはかなわないという事かな。

さて、この織姫と彦星、実際にはどの星かというと、織姫はこと座のべガ、彦星はわし座のアルタイルという恒星。7月始めだと実は遅い時刻にならないと見えてこないのだが8月になると夜7〜10時くらいに真上に見えるはず。真上に天の川があってその左右にこと座とわし座。天の川に遮られてふだんは会えない2人なわけです。(お話では牛飼いの彦星が瓜を切った時に出てきた水で天の川ができてしまう)天の川の中央に白鳥座。白鳥座のデネブ、こと座のべガ、わし座のアルタイルで夏の大三角形。(ちなみに冬の大三角形は大犬座のプロキオン、オリオン座のベテルギウス、子犬座のシリウス)この3つの星は晴れていれば都会の空でも結構よく見える。

夏の大三角形
 右からデネブ アルタイル べガ

この2つの星までの距離は地球からアルタイルまでが約17光年、べガまでが約25光年。1光年は光が一年かかって進む距離。9兆4670億キロ、すごいよね。ちなみにこの2人の間の距離は約16光年。だから2人を遮る距離は9兆4670億×16キロ。ほんとに壮大な遠距離恋愛。これまたすごいよね。これではなかなか会えないわけだ。この2人に比べたら我々人間の遠距離恋愛なんて小さい小さい。遠距離恋愛中の人達は、この2人を見習って多少会えなくても、我慢しないとね。

ところがところが、ぎっちょんちょん!違った見方もあるんだな、これが。確かに一年に一回は少ないけど、それは我々人類の感覚。星の寿命は何十億年もある。太陽ぐらいの大きさの恒星で寿命は約100億年。という事はそんなに長い寿命の中で一年に一回という事は、実はこれはもう忙しなく会っている。もう寝る間も惜しんで会っているという事になるわけです。(寝る間を惜しんで会って・・・?)ですから、遠距離恋愛中の人達は、この2人を見習って愛しい人にもっともっと会いましょう!我々の命は短し、恋せよ乙女〜♪といったことですね。

「天の川 梶音聞こゆ 彦星と 織女(たなばたつめ)と 今宵あふらしも」

離れて住んでいても見上げる星空は同じ。でも七夕の夜ぐらい2人で一緒に星空を見上げて織姫・彦星を気取ってみるのもよいのでは? これはいつも寂しい想いをしている遠距離恋愛中の2人にしかできない事。

今年の七夕は笹の朝露で墨をすりすり、久しぶりに短冊に願いを書いてみるかな。「今こそ世界征服を叶えられたし!」。今回は「遠距離恋愛」七夕のお話でした。

(99/06/15 Written by SAMURAI)