第壱〇回:デカケルトキハワスレズニ
去年の夏のことである。とある長く熱い日の夕方、ふとハゲ丸邸忍者屋敷の妖怪ポストを開けてみると1通の手紙が入っている。宛名を見ると「多分」私宛のお手紙らしい。なぜ「多分」かというと、住所と名字までは確かに間違いはないのだが、名前の部分の漢字が違っている。少し説明がややこしいが、今更ここで実名を明かしてしまうのもなんなので、例えでいうと「忍者ハケ九様宛」てな感じ。ただ読みは拙者の本名と酷似していたし、以前も高校の卒業名簿に間違った漢字で名前が載ったことがあったので、今回もそのパターンであろうと考えた。
差出人は都内の某法律事務所。とーんと記憶に無い名前であった。まあとりあえず拙者宛であることは間違いなさそうだし、「法律事務所?拙者の優秀明晰な頭脳を見込んでスカウトがかかったか?」などと妄想を広げつつ封を開けてみる。中にはワープロで書かれた一枚の手紙が入っていた。その内容は次のようなものだった。
『エキスプレスカードの未納金の支払いをしてください。私どもはアメリカン・エキスプレスから債権の管理を委任されたものです。請求金額510305円』
......?......!?はい?一瞬にして血の気が引いた。51万円!!?なんだそりゃ!?俺そんなに高い買い物したか?いや、してない!!...もしやこれが噂のインターネット犯罪か!!?誰だ!俺の50万円使い込んだやつは!!ていうか「デカケルトキハワスレズニ(古い)」忘れるどころかエキスプレスカードなんか持ってない!。さらに想像力豊かな拙者の脳裏には屋敷に取り立てに来るヤクザさん、玄関には「金返せ!」の張り紙、崩壊してゆく家庭...そんな情景描写が通り過ぎた。
が、やはり落ち着いて考えてみると、どーにもこーにも拙者に落ち度はない。勇気を出してその法律事務所に問い合わせてみることにする。コールが1回、2回と進むうちに、また良からぬ考えが脳裏をよぎる。「ヤクザさんが出たらどうしよう...。とりあえず謝ってしまいそうだ...」
ガチャ。「はい△△法律事務所です。」どうやらカタギの対応。ほっとした少し強気に事情を説明する。「少々お待ちください、調べてみますので...」全く相手は動じていない様子。やはり強面の(電話だからわからないが)親分か何かが出てくるのでは?とまた余計な心配をしてみたりもした。数分後「...お待たせいたしました...」
話を聞いてみると、実に馬鹿馬鹿しいかぎりである。拙者の一族は隠れ里から5年ほど前に今の住所に移り住んだのだが、その以前にそこに住んでいた一家が、偶然にも拙者と同性で、さらにその中に拙者の本名と一字違いの阿呆な現在44才のオッサンがいて、そいつが借金をこさえて全国津々浦々逃げ回っているらしい、という事だったのだ。 結局全て、「ちょっとした偶然」を含む間違いであった。しかし人騒がせな!!
その後、お詫びに菓子折りの一つでも送られてくるかと思ったが、そんなことはなく、ただフツーの日々が戻ってきた。が、平穏が一番。皆さまもお金のトラブルには充分注意されたし。まして、偶然でも赤の他人に迷惑をかけるようなことは...ね。
マジでびびったんだから!!
(99/08/22 Written by HAGEMARU)