第壱五回:小豆洗い

先日、なかなか眠れず夜中に部屋を掃除していたら棚の奥から幼少時代の蔵書が出てきた。3年ほど前に今の自宅に越してきたので、古い本は粗方処分したと思っていたのだが、その時に処分しなかったものもあったらしい。調べてみると「妖怪大全集」「妖怪百物語」「妖怪辞典」「ゲゲゲの○太郎」など、妖怪だらけであった。何故・・・こんなに妖怪が? そんなに妖怪が好きだったのか?と、驚きつつもその本達に目をとおしてみた。まぁ、いろんな妖怪がいるもんだ・・・

「小豆洗い」という妖怪がいるのだが、本によると夜中に川っぷちを歩いていると、川の中に小さな婆さまが立っていて、ザルで小豆を洗いながら「いまだにゴ〜シゴシ」と、言うのだそうだ。だからどうなんだと言いたくなるくらい無害な妖怪である。ひょっとすると、それは「小豆を洗っているただの婆さん」だという可能性さえある。ネットで「小豆洗い」を検索してみた。あった、あった!説明書きによると(谷川のほとりや橋の下で小豆を洗う音が聞こえたら、その正体は小豆洗いに間違いない)断言している。そうなのか?また、歌を歌う事もあるらしい。鼻歌歌いつつ小豆を洗う妖怪。ほんとに人畜無害な妖怪だ。本当に妖怪なのか?初めて「小豆洗い」と遭遇した人は何を根拠に妖怪と判断したのだろう?川っぷちで鼻歌歌いつつ小豆を洗ってるだけなのに。さらに御丁寧にこの「小豆洗い」に遭遇した時の注意書きまで出ていた。(面白がって近づくと、川に落ちるので気をつけた方が良い)それって「小豆洗い」云々ではなくて河原を歩くときには気をつけましょう、ということなのでは・・・。実はこの「小豆洗い」本によって出没する地域はまちまちだ。関東・奥羽・中部・関西・中国・四国・九州などほぼ全国。かなり広いテリトリーで小豆を洗っているようだ。出没地域によってセリフはまちまち「小豆とって食いやしょ〜か、ショキショキ」「毎晩ショキショキ、毎晩ショキショキ」などなど。全国に出没する妖怪はこの「小豆洗い」ぐらい。静岡には同じ婆さまの妖怪で「ほっちょ婆」なる妖怪がいるらしい。妖怪辞典によると

「熊切の青塔山に住む山姥である。ある日きこりが夕方の薄暗い頃、家路につく為に山道を歩いていると、杉の葉が気味悪くざわめいた。と、行く手に1人の婆さんが現れた。手拭いをだらしなくぶら提げ、あまり見栄えがしない。婆さんはきこりに近づき肩に手をかけた。きこりは恐ろしくなって大声で怒鳴り、二、三歩後ずさりをしたが、その時にはすでに婆さんの姿は消えていた」

妖怪「小豆洗い」
確かに人間っぽくはないが・・・(ハゲ談)。

山道できこりの肩に手をかけた「ほっちょ婆」・・・これってほんとうに「ただの婆さん」なのではないか? どのへんが妖怪なんだ?

思ったのだが、この妖怪婆さんシリーズは実は全部「ただの婆さん」が妖怪と間違われたのではないだろうか?そうだ、きっとそうに違いない。だからこの婆さんの妖怪だけ全国に分布するのだろう。う〜む、婆さんというだけで妖怪扱いとは・・・などと夜中に考えてみた。朝までまだ時間があったので掃除もそこそこに眠りについた。婆さまの夢を見た。

(2000/03/15 Written by SAMURAI)