第壱六回:山手線
昔から考えているアイディアがある。個人で活かせるアイディアであればここには載せないで特許でも請願し、ロックフェラーやビルゲイツと肩を並べる億万長者にでもなってやろうと思うのだが、如何せん個人ではどうしようもないのでここに載せる事にする。あっ!と驚くアイディアである。そのアイディアとは・・・
東京には山手線という環状線がある。誰もが御存知の環状型の通勤電車だ。通勤電車だけあってラッシュは凄まじい。アイディアとはこの山手線に関する事なのだが、環状線なのだから・・・いっその事全部繋げてみればどうだろう?つまり山手線を全部繋げて環状線を停まることなく、ぐるぐる回してみればいいんじゃない?当然の如く停まらなければどうやって乗るんだ?との疑問がでてくるだろう。もちろん停まらない電車には体力に自信のある一部の人間しか乗る事が出来ない。それをどう解決するか?その答えはこうである。電車にこだわる事をもうやめる。ようは移動出来ればいいのだ。都内環状型のベルトコンベアというのはどうだろう?グッドアイディアである。ただ、その際に問題になるのはやはりスピードである。山手線と同じ時速60キロのベルトコンベアにしてしまうとこれまた体力に自信のある一部の人間しか乗る事が出来ない。ということでスピードをぐんと抑える。だいたい時速10キロぐらいであれば体力にさほど自信がない人でも乗る事が出来るんじゃないかな。が、そうすると今度は目的地に着くのに時間がかかってしまうという問題点が浮上してくる。個人的にはそれでもいいかなとも思うのであるが(時間をかけてゆっくり通勤、それでゆとりのある社会が生まれないとも限らない)どうしても急がないと困ると言う人もいるだろう。そんな人にはやはり時速10キロでは困るだろう。そこでそういった事も想定して時速60キロのベルトコンベアも用意しておく。が、そのままでは急いでいても体力に自信のある人しか利用できない。そこで解決策はというと、用意するベルトコンベアは全部で6本。そしてそれぞれの速度が時速10キロ・20キロ・30キロ・40キロ・50キロ・60キロ。そしてそれを速度の遅い順に駅側から配置しておく。そうすれば隣のベルトコンベアとの速度差は常に時速10キロ。これであれば体力に自信のない人も利用できる。急ぎの利用客は時速10キロのベルトコンベアに乗った後、次々とベルトコンベアを移動していき時速60キロのベルトコンベアを利用すればよい。降りる時も逆の順序で移動していき時速10キロのベルトコンベアから駅に降りればよいのである。
さてさて、一部のスキもないこの計画。利点を挙げてみよう。この計画の利点はまずラッシュの緩和。電車のような限られた箱の中ではない、しかも留まることなくいつでも乗れるのであるから現在の山手線よりも収容出来る人数はぐっと増えるのでラッシュは現状より緩和されるはずである。また電車と違って待ち時間がない。駅に着いてすぐ乗れる。これまたかなり魅力的だ。そしてこの計画の利点はこれだけではない。とても急いでいる時、時速60キロでは間に合わない時、現在の山手線では到底対処できないような場面である。が、このベルトコンベアでは画期的な対処が可能である。走ればいいのである。時速60キロのベルトコンベアの上でダッシュ!さすれば時速70〜80キロの速度でもって目的地へと向える。(一般的な成人男性であれば時速25キロくらいまで走る事が可能)。この計画の利点はまだまだこれだけではない。時速60キロのベルトコンベアの上で時速20キロで走るという事は時速80キロで風をきる感覚を体感できる、つまりエイトマンの感覚が通勤途中に身を持って体感できるわけだ。これはかなり気持ちのいい事だと容易に想像できる。仕事では中間管理職として上司と部下との間の板挟みに悩み、家庭ではそろそろ訪れる倦怠期に多少疲れ、心に隙間を抱えだした中年サラリーマン。そんな彼等の子供の頃の憧れは、そう!エイトマン。彼等はこのベルトコンベアの上で全力疾走し、幼き時の憧れであったエイトマンに自分を重ね合わせ、会社に着くまで束の間の快感に浸るのだ。この通勤途中の快感が忘れられず、休日もこのベルトコンベアに乗り恍惚の表情で全力疾走をしている中年男性も多数現れるだろう事も容易に想像できる。「オレはエイトマンなんだぁ・・・」実生活のしがらみを忘れ、ヒーローと自分を重ね合わせる事により日々のストレスは解消され、仕事への活力となる。経済を支えているのは彼等、中年サラリーマンである。彼等に活力を与えるということは日本経済に活力を与える事に他ならない。この都内環状型ベルトコンベア計画は停滞気味の日本経済に活力を与える事にもなるのだ。これなど現状の山手線では到底考えられない利点である。政府は景気対策として財政構造改革などよりもまずこの都内環状型ベルトコンベア計画を実施するべきなのだ。
規模の大きいアイディアなので個人では実施できない。もしこの原稿を読んだ人の中にこの計画を実施出来るような立場(内閣総理大臣?都知事?JR東日本の社長?)の方がいればぜひとも実施して頂きたい。(もちろんその時は天誅剣宛てに御一報下さい。アイディア料は相談に応じます)
最後に現在の山手線にまつわる個人的体験を一つ。学生時代に都内で友人達と飲んでいた。気がつけば終電の時間も過ぎさり、皆で朝まで飲んで始発で帰ろうということになった。始発に乗り込んだ我々はかなり酔っていて上機嫌、また始発ということもあり電車内はガラガラであったのでそれぞれ好き勝手な所に寝転がった。自分はというと網棚の上に寝転がった。そして酔いも手伝いそのままうとうととしていつの間にか深い眠りに落ちていた。気が付くと・・・案の定車内は通勤時間真っ最中のラッシュに。環状線であるので終点に着く事もなくまたラッシュの最中なので下に降りていく事も出来ずにラッシュが空くまでの時間、大勢の出勤途中の人々の突き刺さるような視線に耐え、ぐるぐると都内を移動し続けてしまったとさ。
(2000/04/30 Written by SAMURAI)