第八回:幼き頃
幼き頃は工作が好きであった。親に紙工作がふろくについている雑誌をよく買ってもらい、せっせと作っていた。工作を作っているひとときはこの上ない至福の時であったが、実はそのひとときの中にどうしても気分を害してしまう瞬間がいつもあった。それは「のりしろ」。何故か? 当時幼かった自分は「のりしろ」を「のりしろ!」と命令形で読んでいた。お金を払って買ったのになんで命令されないといけないんだ?ふろくの表紙には「がんばってかっこいい飛行機をつくってね」とか、やさしいお姉さん口調なのになんでのりのところだけ命令形になるんだ?さっきまでのやさしいお姉さんはウソだったのか?気分を害しながら工作をしていたが幼き頃は「きっとこれは、はずれなんだ」と思っていた。はずれの工作は「のりしろ!」と命令形だがあたりの工作には「のりしてね♪」と書いてあるのだと思っていた。が、当然あたりの工作に巡り会う事はなくいつもはずれの工作で「のりしろ!」と命令されながら「ちきしょう〜、なんで命令されなくてはならないんだ!」と気分を害しながら工作をしていた。
幼き頃は結婚は見合い結婚しかないものかと思っていた。うちの母親は亭主(つまり拙者の父親)の事を冗談であろうがけっこうけなしていた。「おとうさんのようになっちゃダメよ」というやつである。そこで、「なら、何故そんな人と結婚したんだ?」という疑問がわいてきて出した結論は見合い結婚(拒否権無し)つまり男も女もある年齢に達するとだれか偉い人(幼い頃は偉い人=総理大臣であった)に突然「ではサムライはお膳と結婚するように!いいね!!」などと決められるものかと思っていた。だから幼い頃は極度に結婚を恐れていた。「もし○○と結婚させられたらどうしよう、断ったら死刑になるのかな?(幼い頃はいけない事=死刑であった)」ほんとに恐れていて当時夢まで見た。夢のなかで偉い人(鈴木総理大臣)に「では○○と結婚するように!いいね!!」と言われたのを今でも憶えている。断ろうかとも思ったのだが自分の後ろにはなんとギロチンが用意されていた(幼い頃は死刑=ギロチンであった)恐ろしくて断りきれずしぶしぶ承諾してしまった。結婚はしばらく恐かった。
幼き頃はご多分に漏れずやはりサンタクロースを信じていた。が、幼稚園の年少の頃だったか年長の頃だったか12月のある日酒に酔ったうちの父親が「サンタクロース? ふっ、そんなものはいねぇ〜」と言い出した。幼い自分はショックだったが、では今までプレゼントをくれていたのは誰だったのか?といった疑問がでてきた。そこでだした結論がやはり偉い人!日本中の子供にプレゼントを配るのだからそれはもう偉い人に違いない。偉い人といえば総理大臣!そうか、サンタクロースは鈴木さんだったのか!自分の頭の中にはソリに乗りトナカイにひかれて夜の空を滑空する鈴木総理大臣の姿が頭にうかんでいた。なんか違うなぁと思いつつも、でも偉い人だもんな、きっとそうだよ。と勝手に思いこんでいた。幼稚園のクリスマス会で得意顔で「鈴木さん、ありがとう!」とぼそっと言った記憶がある。
幼き頃はまわりの友達が好きだった特撮ヒーローモノはあまり好きではなかった。理由は非現実的すぎるから。非常に短絡的な思考をするくせにへんにリアリストな子供であった。地球征服を狙ってる悪の集団がなぜ幼稚園を襲撃するんだ?でてくる怪人達もものすごい能力の持ち主なのに。マッハ5以上で空を飛べる怪人なのだが移動はなぜか車(しかもこの怪人、渋滞に巻き込まれ、「ちくしょう!どうすりゃいいんだ〜」だって、飛べよ!!)ヒーローもヒーローだ。仮面ライダーだったか何だったか忘れたがピンチに陥り、ライダー危うし!その時おもむろにベルトバックルをあけるとその中に最終ボタンが、ボタンを押しライダーパワーアップ!事無きを得る。最初から押しとけ!まぁ、このへんを言い出したらきりがないのでこのくらいにしておこう。ヒーローもののかわりに当時自分が好きだったのは祖父の影響もあり仁侠モノ、網走シリーズといったやつ。出入りのシーンのアクションなど特撮ヒーローモノとは比べ物にならない。幼稚園児ながらほんとにはまってしまって幼稚園の先生との会話で「横断歩道を渡るときはどうするのかな?」と聞かれて「わからんのぅ、わしゃバカじゃけん!」と答えた。親が幼稚園に呼ばれた。
昔、年の頃が5,6歳の女の子が父親らしき人に「ここのお城みたいなホテルに泊まりたい、泊まりたい〜!!」と駄々をこねていた。女の子が指さしているホテルはたしかに外見はお城のようだがこのホテルは・・・、父親もまわりの人に見られて恥ずかしくて気が動転したのか、「もう少し大人になってからじゃなきゃダメだよ」と言っていた。なんか・・・やけにリアリティーのある答えだよね。いや〜幼き頃というのはいろいろあるよ。
(99/07/03 Written by SAMURAI)