窓に映る自分の影
その1(晃)
(なぜ、聡は、そんなに穏やかに笑っていられるんだ?)
晃は親友の顔を見つめた。
(いや、親友だったと言うべきだろうか)
晃と聡が出会ったのは、大学の陸上サークルだった。
趣味的な活動しかしていなかったが、それでも、形ばかりのマネージャーがいた。
それが、早紀子だった。
晃は一目見た時から惹かれていた。
彼女の表情がふと悲しげに曇る時、そんな顔は二度とさせないという保護欲にも似た感情が生まれていた。
新歓コンパの時に、早紀子が聡の高校時代からの恋人であることを知った。
晃は呆然とし、そして、耐えられなくなって、飲み会を抜け出した。
その晃を、気分が悪くなったものだと勘違いした早紀子が追って来た。
「何でもない、聡のところに戻れ」と、晃が心の中ではいやみまじりの言葉を言うと、早紀子は「何言ってるのよ、私マネージャーなのよ。ほっとける訳がないじゃない」と心配そうに言った。
「聡なら一人で大丈夫よ・・」そう言うと、いつものさみしげな表情をした。
多分、その時から晃は早紀子が離せなくなった。
そして、今。
3人が待ち合わせた喫茶店で、晃は聡を見つめていた。
なぜ、聡は穏やかに笑っていられるんだろう。
恋人を親友に寝取られたというのに。