00.2.13
アジアカップ2000予選
日本代表 3−0 シンガポール代表
格下のシンガポール相手に大量得点を求める声が高かったこの試合だった
が、結局3点を奪ったにとどまった。
高原 中山 得点
18 中沢HS(中村右CK)
小野 澤登 42 中山PK
中村 伊東 90 中沢HS(中村右CK)
稲本
交代
中田浩 松田 中沢 46 明神(←伊東)
56 奥(←小野)
川口 71 平瀬(←高原)
結果としては勝ったのだが、内容に不満の声が多かった。
一番多かったのが、プレイスキック以外でのゴール欠乏症である。
確かに勝つ気がないのかシンガポールは2点を奪われたあともゴール前を固
めていてカウンターも攻撃人数が少なく、日本GK川口がブラウン管に姿をあ
らわした回数はきわめて少なかった。
日本のほうはと言えば練習不足か、明らかにコンビネーションはかみ合って
いず、時期的に選手のパフォーマンスも低い。とくに小野信二のパフォーマン
スの悪さは気になった。
得点力不足といえば真っ先に矢面に立たされるのはFWの選手だが、僕は見
ていて、決定力というよりもゴールに向かう姿勢に物足りなさを感じた。
格が下の相手に対しても勝負が出来ない。
遠い位置からシュートを打つ。
クロスにタイミングが合わない。
いい形で前を向けない。
一度、澤登がエリア内でゴールに背中を向けてパスを受け、次の瞬間振り向
きざまシュートを放ったシーンがあった。
中村俊輔も正確なトラップから相手DFをかわしざまにたおれPKを得た。
しかし残念なことに、FWにこのようなプレーを見ることが出来なかった。
人数をかけてゴール前を固めるシンガポールを崩すことが出来ない。
なぜか。
まずひとつに、ドリブラーの不在が大きい。
左サイドに回ったときの中村俊輔や右サイドを深くえぐった時の伊東に対
し、シンガポールは人数をかけてつぶしに来ただろうか。
澤登や小野、それにFW陣は相手DFの連携を混乱させるほどの切り込みを
見せただろうか。
奥大介投入後ようやく、ドリブルで相手DFは早めにチェックするようになっ
たのでは。
思い出してみてほしい。
アトランタ予選で前園真聖が見せた、布を裁断するかのごとくフィールドを
斜めに切り裂いた突破を。
ワールドユースで本山雅志にボールがわたるたびに熱狂したナイジェリアの
現地の観衆を。
なぜ、前園のラストパスが、威力充分だったのか。
なぜ、ナイジェリア人は数いる日本人選手から10番を応援するようになっ
たのか。
それは、恐怖である。
そして、期待感である。
こいつがボールを持ったら何人抜くかわからない。
どこまで持つのかわからない。
なにしでかすかわからない。
目が離せない。
これは相手DFもいっしょで、前園のユニフォームや本山の前髪が風にゆれ
るたび、ハッとして身構える。スタジアム中の目が、彼だけに集まる。
そこに、スキができ、ゴール前のマークが曖昧になる。
ひとり二人抜いたあとだから、さらに1・2人チェックにくれば、相手の
数的優位はなくなる。
そういったチャンスのつくり方ができる選手が、この試合にはいなかった。
それが、まずひとつ。
次に、これはもう今さらどうしようもないのかもしれないが、トラップが不
正確であるのと、パスのスピードの遅さ。
自分のプレーゾーンにトラップが落とせないから、いい体勢でシュートに持
ち込めなかったり、ディフェンスに詰められたりする。
トラップがおぼつかないから、パスを出すほうも、連携不足も手伝って強い
パスが出せない。
DFをかき回すパスのやり取りが出来ず、相手にとってデンジャーでないエ
リアでボールは行ったり来たりする。
この辺が、実に歯がゆい。
むやみやたらにロングを放り込んでも、ポストプレーでそれを頭で落として
も、圧倒的な数のDFにすべて掃き出されてしまう。
しかし、再確認できた点がある。
中沢の制空力、中田浩二のロングクロス、そして左サイドよりも中央で活き
る中村俊輔のオフェンス。
例えば対等かそれ以上の相手と戦った場合、あまり敵陣深く切り込めないD
Fの中田浩二がハーフラインより後ろから繰り出すロングパスの正確さは大き
な武器になる。
今回の試合も2・3本中山の頭にぴたりと合わせたシーンがあったが、もっ
と密度の低いDFならば、威力のあるカウンター攻撃が可能だ。左サイドに突
破力のある選手、例えば本山などを使う場合も、彼らにアーリークロスは望め
ないだろうから、正確なロングパスの出所が最終ラインにあるのは頼もしい。
日本によくあるパターンに「1点差をがちがちに守られて敗戦」があるが、
これを破って得点するのに一番効果的な方法は、プレイスキックからのゴール
である。
PKを誘うのにはドリブルが要る。ここでもドリブラーが必要とされるが、
フリーキックのとき、直接蹴りこむには今の日本では中村俊輔がもっとも適し
た選手のひとりだろう。彼の左足から繰り出されるキックは力強さと華麗さを
兼ねそろえ、ゴールの枠を捉える確率が非常に高く、常に相手にとっては脅威
となりうるものだ。
そしてコーナーのときに中沢の長身が活きた。
この試合の2つのゴールはともに右コーナーからの中村のクロスボールを頭
で合わせたものだが、力強くとらえたと言うよりは出した頭にかすらせボール
の軌道を変えた、というものだった。
しかしながら相手より頭2つ分はゆうに高い位置でボールを捕らえていた。
コーナー時の攻撃参加の威力は秋田以上にあると見ていい。
そして左サイドでのスタメン起用ながら段々と中央に寄って、完全に澤登・
小野を食った中村俊輔。この試合のすべてのゴールを演出した。
もう、だいたいテストは終わって今は再確認のときだとトルシエは言う。
世間ではゴールラッシュを、と息巻いているが、僕は本戦に向けてコンビネ
ーションの質を高めるためにも、そろそろメンバーの固定化を期待する。
そのときには中村俊輔をぜひ中央で。