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小森まなみ (ラジオDJ)

 僕は人を特別扱いするのが嫌いである。おそらく僕自身が劣等感の多い人間だからかも知れない。
 だけど、この人は僕にとってちょっと特別な意味を持った人である。と、いっても別 に神様みたいに崇め奉っている訳でもない。本人もそんなふうに思われたくないだろう。

 小森まなみさんはラジオのディスクジョッキーである。 
 背が低くて大きな瞳のまん丸い顔。かわいい外見に子供みたいに素直な性格。
 でも頑固で感情過多で嬉しかったり悲しかったりするとすぐに涙が出てしまう。こんな女の子が瞳をうるうるさせて迫ってきたら僕の理性は0.1秒で焼き切れるだろう(笑)。

 でも、この人の本当の魅力は実は外見ではなく、その生き方や考え方にある。


 昔のまなみさんは本当にラジオを聴いてハガキを出すリスナーと同じ気持ちになりきったトークをしていた。辛いことが書かれたハガキを読んでいて一緒に泣き出してしまったりするくらいだったから、リスナーも、自分たちの気持ち理解してくれるこの人を他人のように思えず、自然と「マミちゃん」と親しみを込めて呼んでいた。

 この人が変わり始めたのは、世の中の歪みや人の死に直面してからのことだった。自分の番組を聴いていたリスナーが自ら生命を絶った事件、阪神大震災、世の中の理不尽や冷たさに直面 して傷ついたり悩んだりするリスナーのお便り、バブルの崩壊と共に泡沫のように消えて行くラジオ番組の理不尽、そして家族の病死…

 ある時は真っ正面からぶつかり、ある時は泣いて助けを求めたり、地団駄を踏んで叫んだり…

 そしてこの人の言葉は、いろんなものを経て、優しさと労り、強さとあたたかさを併せ持ったものに変わっていった。
 この人は10枚以上のアルバムを世に送り出しているが、最初の頃と今のアルバムを比較するとアイドルっぽかったファーストアルバム(個人的にはこちらも好きなのだけど)に比べて別人の観がある。
  この人の歌は、さすがに歌唱力が一流の歌手といったものではない。
 だけど、歌詞や歌の情感には人を素直にうなずかせるものがある。
この人が最近出した本も歌と同じように、人を素直に、誠実にさせるものがある。

 僕がこの人に感じる「不思議な感覚」とはそれである。カリスマ、癒し、哲学、とも異なるこの人の感性、ものの考え方。 クサイとかダサイとか面倒くさいとか言って世の中の流行に合わせている内にどこかに置き忘れてしまった大切なものを、この人の言葉は気づかせてくれる。

 僕はこの人に出会わなかったら、今頃どこでどんな人間になっていただろう…
 僕は、この人のように、大切な何かを誰かに伝えたくて、生きているのかも知れない。
 努力したらいつかかなう…そんな夢ばかりではないけれど…
 だけど、それでも…

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