セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
商品名
トレドミン錠15
トレドミン錠25
貯蔵方法:室温保存
使用期限:3年
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.モノアミン酸化酵素阻害剤を投与中の患者{「使用上の注意 3.相互作用」の項目参照}
3.尿閉のある患者(前立腺肥大等){本剤はノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため。}
組成・性状
成分・含量・・・塩酸ミルナシプラン15mgあるいは25mg(それぞれトレドミン15、トレドミン25)
添加物・・・セタノール、ラウリル硫酸ナトリウム(共通)
色・剤形・・・淡黄色のフィルムコート錠(15mg)、白色のフィルムコート錠(25mg)
識別コード・・・111(15mg)、113(25mg)
効能・効果
うつ病、うつ状態
用法・用量
通常、成人には、塩酸ミルナシプランとして1日50mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、食後、分割経口投与する。なお、年齢、症状により適時増減する。
ただし、高齢者には、1日30mgを初期用量とし、1日60mgまで漸増し、食後、分割経口投与する。
使用上の注意
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)緑内障、排尿困難または眼圧亢進のある患者{本剤はノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため}
(2)心疾患のある患者{循環器系に影響を及ぼすことがある}
(3)肝障害のある患者{高い血中濃度が持続するおそれがある}
(4)腎障害のある患者{外国における腎機能障害患者での体内薬物動態試験で、高い血中濃度が持続する傾向が認められているので、投与量を減じて使用すること}
(5)てんかん等のけいれん性疾患股はこれらの既往歴のある患者「けいれんを起こすことがある}
(6)躁うつ病の患者{躁転、自殺企図があらわれることがある}
(7)脳の器質障害股は精神分裂病の素因のある患者{精神症状を憎悪させることがある}
(8)小児{「小児への投与の項目参照」}
(9)高齢者{「5.高齢者への投与」の項目参照}
2.重要な基本的注意
眠気、めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
3.相互作用
(1)併用禁忌(併用しないこと)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| モノアミン酸化酵素阻害剤 | 他の抗うつ剤で併用により発汗、不穏、全身痙攣、異常高熱、昏睡等の症状があらわれていることが報告されている。モノアミン酸化酵素阻害剤の投与を受けた患者に本剤を投与する場合には、少なくとも2週間の間隔をおき、また、本剤からモノアミン酸化酵素阻害剤に切り替える時は2〜3日間の間隔をあける事が望ましい。 |
主にモノアミン酸化酵素阻害剤による神経外アミン総量の増加及び抗うつ剤によるモノアミン作動性神経終末におけるアミン再取り込み阻害によると考えられている。 |
(2)併用注意(併用に注意すること)
| 薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
| アルコール | 他の抗うつ剤で相互に作用を増強することが報告されている。 | アルコールは中枢神経抑制作用を有する。 |
| 中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体等) | 相互に作用を増強するおそれがある。 | 機序は不明 |
| 降圧剤(クロニジン等) | 降圧剤の作用を減弱する可能性があるので、観察を十分に行うこと。 | 本剤のノルアドレナリン再取り込み阻害作用によると考えられる。 |
4.副作用
総症例中467例、150例(32.1%)に副作用が報告された。発現件数は236件で、主な副作用は、口の渇き35件(7.5%)、悪心・嘔吐28件(6%)、便秘27件(5.8%)、眠気19件(4.1%)等であった。臨床検査値の異常変動は、GOT、GPT、γ−GTP、トリグリセリドの上昇等が認められた。(承認時)
(1)重大な副作用
悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明):他の抗うつ剤で強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる悪性症候群が報告されている。本症発症時には、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。
(2)その他の副作用
5%以上
消化器系:口の渇き、悪心・嘔吐、便秘
0.1〜5%未満
循環器:起立性低血圧、頻脈、動悸、血圧上昇
精神神経系(注1):眠気、めまい、ふらつき、立ちくらみ、頭痛、ふるえ、視調節障害、躁転、焦燥感、知覚減退(しびれ感等)、不眠、頭がボーっとする、筋緊張亢進、アカシジア、勃起力減退、不安、被注察感、聴覚過敏、口部ジスキネジア、自生思考
過敏症(注2):発疹、かゆみ等
消化器:腹痛、味覚異常、舌異常、食欲不振、食欲亢進、口内炎、下痢、飲水量増加
肝臓(注3):GOT、GPT、γ−GTPの上昇
その他:倦怠感、排尿障害、発汗、鼻閉、頻尿、熱感、発熱、悪寒、関節痛、耳鳴、浮腫、息苦しい、トリグリセリドの上昇
注1:このような症状があらわれた場合には、減量又は休薬など適切な処置を行うこと。
注2:このような症状があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
注3:観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
5.高齢者への投与
高齢者での体内薬物動態試験で、血中濃度が上昇し、薬物の消失が遅延する傾向が認められているので、少量(1日30mg)から投与を開始するとともに患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1)妊婦又は妊娠している可能性のある可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。{ラットに経口投与した実験で、胎児への移行(胎児中濃度は母胎血液中濃度と同程度)が報告されている。}
(2)動物における周産期及び授乳期投与試験で、死産児の増加等が報告されている
(3)授乳中の婦人には投与しないことがのぞましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。{ラットに経口投与した実験で、乳汁への移行(乳汁中濃度は血漿中濃度の3倍)が報告されている。}
7.小児への投与
小児等に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。
8.適用上の注意
(1)薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)
(2)服用時:空腹時に服用すると吐き気、嘔吐が強く発現するおそれがあるので、空腹時の服用は避けさせること。
薬物動態
1.血中濃度
(1)単回投与
健康成人男子に塩酸ミルナシプラン12.5〜100mg(各n=5)を食後単回投与したときの血漿中未変化体濃度は、2〜3時間後に最高値に達し、半減期約8時間で漸減した。薬物動態パラメータは以下の通りであった。
| 投与量 | Tmax(hr) | Cmax(ng/mL) | T1/2β相 | AUC(1-24hr)(ng・hr/mL) |
| 12.5mg | 2.0±0.7 | 40.8±6.4 | 7.9±1.5 | 314.2±17.1 |
| 25mg | 2.0±0.0 | 74.7±9.4 | 8.2±1.0 | 601.0±61.6 |
| 50mg | 2.6±1.1 | 161.9±25.2 | 8.2±1.3 | 1253.4±227.1 |
| 100mg | 2.6±0.9 | 326.9±64.0 | 7.9±1.3 | 2532.1±396.2 |
Mean±S.D.
また、成人高齢者男子(66〜76歳、n=8)に塩酸ミルナシプラン15mgを食後単回経口投与したときの血漿中未変化体濃度(AUC)は健康成人男子に比し、有意な増加が見られた。薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
| 対象 | Tmax(hr) | Cmax(ng/mL) | T1/2β相(hr) | AUC(1-24hr)(ng・hr/mL) |
| 健康高齢者 | 3.0±1.2 | 45.1±11.4 | 9.2±1.7 | 445.2±97.6(t検定:5%) |
| 健康成人 | 2.4±0.5 | 39.3±8.1 | 7.8±1.1 | 344.7±49.5 |
Mean±S.D.
(2)反復投与
健康成人男子(n=4)に塩酸ミルナシプラン25mgを1日2回8日間、食後反復経口投与したときの血漿中未変化体濃度推移から、定常状態に達するのは5日目と考えられた。また、最終投与時のCmaxは初回投与時の約1.4倍に上昇したが、Tmax、T1/2β相に変化は見られなかった。
(3)食事の影響
健康成人男子(n=8)に塩酸ミルナシプラン15mgを空腹時及び食後に単回投与し、食事の影響を検討した結果、空腹時投与時のCmaxは32.3±7.3ng/mLと食後投与時の39.3±8.1ng/mLに比し有意に低かったが、Tmax、T1/2β相、AUCに有意な差は認められなかった。
2.蛋白結合率
健康成人男子(n=3)に塩酸ミルナシプラン100mgを食後単回投与したときの血漿蛋白結合率(限外濾過法)は、投与2時間後36.3%、投与9時間後38.5%であった。
3.代謝、排泄
健康成人男子(n=5)に塩酸ミルナシプラン50mgを食後単回投与し、代謝及び排泄について検討した結果、血漿中及び尿中ともに未変化体がもっとも多く検出され、その他にグルクロン酸抱合体、脱エチル体及び脱エチルグルクロン酸抱合体が認められた。
尿中には、投与48時間後までに未変化体と代謝物を合わせて約85%が排泄された。
4.腎機能・肝機能障害患者における血中濃度(外国人のデータ)
腎機能障害患者(n=8)に塩酸ミルナシプラン50mgを空腹時単回経口投与したときの血漿中濃度は、健康成人(n=6)に比し高く推移し、AUC及びT1/2β相などの薬物動態パラメータに有意な差が認められた。
| 対象 | Tmax(hr) | Cmax(ng/mL) | T1/2β(hr) | AUC(消失まで)(ng・hr/mL) |
| 腎機能障害患者 | 1.9±0.6 | 190.0±21.8 | 15.0±2.5* | 3102±430* |
| 健康成人 | 1.9±0.4 | 146.7±10.7 | 8.3±0.9 | 1363±142 |
Mean ±S.D.
*=t検定(5%)
また、肝臓障害患者における血漿中濃度は健康成人に比し、有意な差は認められなかったものの、Cmaxは約1.2倍、AUC(消失まで)は約1.6倍、T1/2β相は約1.2倍であった。
注意:
本剤の承認された用法・用量は、「通常、成人には、塩酸ミルナシプランとして1日50mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、食後、分割経口投与する。なお、年齢、症状により適時増減する。ただし、高齢者には、1日30mgを初期用量とし、1日60mgまで漸増し、食後、分割経口投与する。」である。
臨床成績
精神科領域及び内科・心療内科領域における、うつ病、うつ状態患者を対象とした臨床試験(二重盲検比較試験を含む)のうち、本剤の用法・用量に合致した症例の改善率(中等度改善以上)は56.4%(137/243)であった。また、そのうち65歳以上の高齢者における改善率(中等度改善以上)は59.1%(13/22)であった。
薬効薬理
1.抗うつ作用
ラット及びマウス強制水泳試験において、有意な不運動時間短縮作用が認められた(30mg/kg、p.o.)
2.作用機序
本剤のうつ病・うつ状態に対する作用機序は、以下の試験結果よりセロトニン及びノルアドレナリン再取り込みの特異的な阻害であると考えられている。
(1)ラット脳内セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み部位に親和性を示し、セロトニン及びノルアドレナリンの取り込みをともに阻害した(in vitro)。
(2)ラット脳内の細胞外セロトニン及びノルアドレナリン濃度を有意に増加させた(10、30mg/kg、p.o.)
(3)各種神経伝達物質受容体に対してもほとんど親和性を示さず、またモノアミン酸化酵素活性にも影響は認められなかった(in vitro)。
3.緑内障悪化、眼内圧亢進の可能性
外国の使用上の注意には、緑内障のある患者を慎重投与として記載されている。この緑内障あるいはこれに関連する眼内圧亢進についての作用機序は明らかではないが、本薬のノルアドレナリン再取り込み阻害作用によることも考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:塩酸ミルナシプラン(milnacipran hydrochloride)
化学名:(±)-cis-2-aminomethyl-N,N-diethyl-l-phenylcyclopropane-carboxamide monohydrochloride
構造式:こうじちゅうーーー
分子式:C15H22N2O:HCL
分子量:282.81
融点:約171度(分解)
性状:本品は白色の結晶性の粉末で、においはないか、又はわずかに芳香があり、味は苦い。
本品は水に極めて溶けやすく、エタノール又はクロロホルムに溶けやすく、アセトニトリルにやや溶けにくく、エーテルにほとんど溶けない。
本品の100倍希釈水溶液には光学活性がない。
承認条件
本薬の用量−反応関係の確認及び本薬の臨床的特徴の検証を目的とした市販後臨床試験を行うこと。また、高齢者を対象とした特別調査も実施し、これらの成績を再審査資料として提出すること。