講演会レポート

9月10日は、「みんな同じ」の著者で神奈川県立百合ヶ丘高校のもと教員、岩佐晴夫氏の講演会でした。知的障害児D.Mくんを受け入れることになった百合ヶ丘高校の当時のエピソードなどを中心に、これからの教育のあり方などを話し合いました。障害児を引き受けた経験のある現役の高校教師も来ていて、熱心な取り組みも感じられました。
D.Mくんは知的な遅れと体に軽いハンデのがある子供で、中学時代は英語や数学などはお手上げ状態だったそう。もちろん、他の教科も遅れていました。普通学級に在籍していたため、授業中はお客さん状態でした。
でも、D.Mくんの心の中には「もっと勉強したい、みんなのように高校に行ってみたい」という心が芽生えていたのです。
百合ヶ丘高校の文化祭に行った時、自由で明るい校風が気に入り、受験を決意しました。
その年は19人ほど定員をオーバーしていて、D.Mくんの成績は最下位でした。まだ障害児を受け入れる体制の整っていない学校では、どうするか会議が開かれましたが、多数の賛成派の教師の力で19人全員をを合格としたのです。
すぐにD.Mくんのためのプロジェクト・チームが作られましたが、何分初めてのことだったので失敗も多かったといいます。でも、教師達のD.Mくんへの試行錯誤の足跡は彼の詩や書記に鮮やかに刻まれています。


D.Mくんの詩
(NHKハート展入選作品 高校2年時)
「ちっとも変わっていなくて安心したよ」
と言われたり、
「変ったねー。たくましくなった」
と言われたり。
変った方がいいのだろうか。
変らない方がいいのだろうか。
そうか。どちらでもいいんだ。


(NHKハート展入選作品 高校3年時)
僕という人間
僕は僕に「障害」があると
思っていなかった
僕は僕が生きにくい世の中に
障害があると思っていた
でも、人は僕のことを
「障害」のある人と言う
僕は僕自身だけれど
「障害」ではない


(障害青少年世界大会日本代表)
一緒に頑張ってください
大学の入学相談に行った日
「『障害』のある人の設備はありません」
「他の大学へ行ってください」と係りの人は言い
ついでに
「頑張ってください」と言った

僕は頑張ってるぞ!
これ以上、何を頑張れというのですか?
僕たちが皆と一緒に生きていけるように
僕たちと一緒に
あなたも頑張ってください

いつも
「頑張れ、頑張れ」と言われる僕です
僕も頑張ります
どうかお願いだから
一緒に頑張ってください


僕の高校生活
たった3年間だけど
僕には10年生きたような充実感をくれた
長い3年間のはずだけど
ほんの短い時間だと感じるような喜びの時をくれた
たくさんの出会いがあり
たくさんの「ありがとう」があった
入学させてくれて「ありがとう」
話しかけてくれて「ありがとう」
サイン帳にメッセージを「ありがとう」
時には怒ってくれて「ありがとう」
いつも仲間に入れてくれて「ありがとう」
ノートを貸してくれて「ありがとう」
ディズニーランドは楽しかったよ「ありがとう」
文化祭の実行委員にしてくれて「ありがとう」

先生たちはいつも僕の存在を認めてくれた
面倒がらずに教えてもらって嬉しかった
先生はいつも僕の頼りだった
友達は支えだった
自分について語り合った
生き方を一緒に考えてくれた
かっこいい君はみんなの憧れだった
僕に親切な女子はみんな綺麗だった
アドバイスがきつくても嬉しかった
僕は百合ヶ丘高校が大好きだった
いつもみんなの中の一人だから
みんなも僕も輝いていた
神奈川県立百合ヶ丘高校は
僕の人生を後押ししてくれる暖かい目と手があった
いつも「ありがとう」と心から言える高校生活だった
「ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・・」


友達がDくんのサイン帳に書いたことば
・Dの笑顔がいいよ。一緒に頑張ろう。一緒に笑おう。
・障害のある人を始めは嫌だなあと思っていたけれど、一生懸命話そうとするDくんを見 て気持ちが変りました。
・自分の弟も障害があるけれど、俺はそんなこと惨めに思ったことはない。この先も話せる機会があったら、是非酒でも飲みながらゆっくり話したいな。頑張ろうぜ、なあD。
(
その他たくさんありました。)



Dくんの書記より
・・・(略)僕は友達が欲しくて、友達になってもらいたいですが、話が苦手です。それで去年はサインをしてもらいました。1年で500人くらいの人がしてくれて嬉しかったです。今年も沢山の人と話したいです。サインを頼みたいです。自分に頑張ってできることは今はこれです。苦手な勉強も頑張らないといけません。僕は勉強は好きなんだけど苦手です。僕は自分が勉強が好きだったとは気がつかなくて、去年初めて気がつきました。なんとか頑張りたいです。


教師がDくんに書いた言葉
何とたくさんの人の「サイン」を書いてもらったことでしょう。まずその多さにびっくりしました。その多くが、D君を応援し、D君を励まし、一緒に歩いていこう、と言っていることは、何と素敵なことでしょう。
D君を励ましている人達は、実は自分がDくんによって励まされ、勇気づけられているのだ、ということが「サイン帳」を読むとよくわかります。でも、そのことに自分では気付いていないのは事実でしょう。
これはとてもおもしろいことだ、と思いませんか。
人は1人では生きていくことができない動物です。意識するしかないかは別として、多くの人のおかげで生活していくことができているわけです。そのことに絶えず感謝することが大切です。
と、同時に、Dくんのおかげで生きている人間も数え切れないほどいることに気付いてください。
人の役に立つ、ということ程、嬉しいことはありません。頑張って精一杯生きることを通して、人に励ましを与えてください。
D君の仕事です。