オーストラリアの日本語教育

 

オーストラリアの日本語教育と言っても、州によって制度が違うため、ここではビクトリア州の制度について説明します。

 

ビクトリア州の教育制度
勉強できる科目
外国語教育
日本語教育
教師の仕事
日本語教師になるために
就職状況
さいごに

 

 


ビクトリア州のの教育制度

オーストラリアには大きく分けてプライマリースクール(小学校)とセカンダリースクールという日本で言う中高一貫校があります。小学校が一年生(Grade 1)から六年生(Grade 6)までの六年間、セカンダリーも七年生(Year 7)から十二年生(Year 12)までの六年間と、就学期間は日本と基本的に同じです。ただし小学校には一年生になる前にPrep(プレップ)と呼ばれる一年間の準備期間があり、この間に友達を作り、学校という環境に慣れて、一年生になるための準備をします。

新学年が始まるのと入学のための年齢を分ける時期が違うため、Prepに入る子供たちは基本的に4歳半以上ということになっていますが、親の意向で子供がまだ学校に行くには早いと判断した場合は入学を一年遅らせることも一般的で、同じ学年に二歳ほど年の離れた子供がいる場合がよくあります。そのため十二年生を修了した時点で普通は17歳から18歳ですが、19歳の子がいることもあります。

また義務教育は学年ではなく、子供が15歳になった時点で選択できます。15歳という年齢が大体十年生の時期に当たるため、大学進学を目指さない場合、十年生で学校を終え、仕事を探したり、あるいはもっと専門的な教育を受けるため、TAFE(テイフ)と呼ばれる、日本の専門学校のようなところに行く子もいれば、何もせずぶらぶらと過ごす子もいます。

セカンダリースクール最後の二年間は基本的に大学進学のためのコースで、VCE (Victorian Certificate of Education)という日本で言う高校卒業資格を得るためにかなり専門的なことを勉強します。

新学年は1月の末に始まり、年にもよりますが普通は一学期10週間の四学期制。各学期の間に2週間の休みがあり、第二学期と第四学期の終わりには成績表が渡されます。12月に学校が終わると、約5週間の夏休みがあります。

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オーストラリア(ビクトリア州)の教育制度
プライマリースクール(小学校) セカンダリースクール(中学、高校)
Prep Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 5 Grade 6 Year 7 Year 8 Year 9 Year 10 Year 11 Year 12
  一年生 二年生 三年生 四年生 五年生 六年生 一年生 二年生 三年生 一年生 二年生 三年生
小学校 中学校 高校
日本の教育制度

 


勉強できる科目

ここではセカンダリースクールで勉強できる科目を紹介します。主要な教科が八つあり、英語、数学、社会科(歴史、地理、地学を含む)、理科(化学、物理、生物など)、体育、美術、技術、外国語となっていますが、学校によって提供している科目は大きく変わり、たとえば私の学校、エメラルドセカンダリーカレッジでは写真学、コンピューターグラフィックス、法律学、会計学など日本では大学か専門学校に行かないとできない科目が多々あります。また日本にない科目で人気があるものの一つに演劇の授業があります。

これも学校により変わりますが、セカンダリースクールでは普通七年生の時に全ての科目を必修として学び、八年生から徐々に好きな科目を選べるようになっています。英語と数学は必修です。

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外国語教育

オーストラリアは多人種国家ということもあり外国語教育が盛んで、ビクトリア州では主要八教科の一つになっています。どの外国語を教えるかも全く学校次第で、たいていの学校では二つないし三つ教えています。昔から人気があるものにはフランス語、ドイツ語、イタリア語などがあり、オーストラリアとアジアの結びつきを反映して日本語、中国語、インドネシア語などを教えている学校も数多くあります。ちなみに我がエメラルドでは日本語のみを教えています。

州の教育省の方針で、一応十年生までは外国語は必修ということになっていますが、守っている学校は少なく、エメラルドでも七年生のみ必修で、八年生から選択科目となっています。外国語習得は難しく、全ての生徒が興味を持ってやってくれる科目ではないため、全くやる気のない生徒の興味を保ちつつ、授業を続けるのが不可能に近いというのが八年生以上で必修にしない主な理由です。やる気のある生徒も授業妨害をされてやる気がなくなってしまいますので。

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日本語教育

外国語教育のところで書きましたが、外国語としての日本語はまだまだ人気があります。理由としては日本とオーストラリアの文化的、経済的な結びつきの強さが挙げられます。第二次世界大戦時には日本が侵略したという苦い経験もあり、年配の方には日本に対していい感情を抱いていない人もいますが、新聞を読んでいても、アジアの国の中で特に日本の取り上げられ方は大きく、電化製品、車などの日本製品から、日本式庭園、アニメ、日本食(特に巻き寿司)など日常生活の色々なところで日本に触れることができるため、ほとんどのオーストラリア人は友好的です。

日本語を学習する生徒も、文化的な興味から続ける子や、日本で英語を教えてみたい子、将来的に日本語を生かした職業に就きたい子など動機は様々です。ただ、最近の日本の景気停滞から、最後の理由で日本語を勉強する子は少なくなってきているような気がします。仕事に生かしたい語学で今人気があるのは中国語でしょう。

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教師の仕事

教室の前に立って、授業をするだけが教師の仕事ではありません。というよりも、教室の前に立って授業をできる先生はかなり幸せです。低学年の場合は椅子に座らせて、ちゃんと授業に参加するようにさせることから始まり、授業の準備、採点、成績表書き、担任のクラスの世話、校庭の見回り、放課後の職員会議、研修など様々です。時間的に言えば、日本の先生と比べて学校にいる時間は少ないかもしれませんが、それでも教える以外のことにかなりの時間を取られるのが実情です。特に成績表は各科目ごとに生徒一人一人コメントを書く欄があるため、かなりの時間を取られます。

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日本語教師になるために

オーストラリアの学校で正式に教員として採用されるためにはGraduate Diploma of Education(通称Dip Ed ディプエド)という資格が必要になります。教員免許を自分の専攻科目と並行して取れる日本と違い、学士号取得後、一年間大学に通い、資格取得に必要な科目を履修します。この一年間の間にビクトリア州では最低45日間の教育実習が必要となります。私はシドニーにあるシドニー工科大学(University of Technology Sydney、通称UTS)でこの資格を取得しました。この大学と日本の出版社のアルクが提携していて、特に日本人のためにコース作りをしていたので選んだのですが、他の大学よりもかなり実践面に重点を置いたコースで、実際に教え始めてから役に立つことを多く学べた気がします。他の大学卒業者の話では、理論中心のコースが多いようです。ただし、ビクトリア州で仕事を探すことを考えると、教育実習中のネットワーク作り(コネ作り)も兼ねて、メルボルンにある大学に行ったほうがいいのかも知れません。

このGraduate Diploma of Educationを取得するために日本の大学を卒業してからでも入学はできますが、かなり高いレベルの英語力が必要となるため、英語学校に通ってから大学に行く人も多いようです。でもUTSの求める英語力はかなりいい加減でしたが。

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就職状況

上に「日本語はまだまだ人気がある」とは書きましたが、就職に関しては現在かなり厳しい状態です。はっきりとした理由は分かりませんが、ビクトリア州にある大学がここ四、五年ほど、ものすごい数の日本語教師希望者を受け入れているためだと思われます。外国人である日本人にとっては、永住権がない場合、就職時にオーストラリア人が優先される、就労ビザ取得のためにはフルタイムの仕事でなければならない等、制約があるため実際に仕事を手に入れるのは難しくなっています。それでも、本当にやる気のある人は何とか数少ない機会を逃さず、仕事を見つけているので、必ずしも不可能ではありません。オーストラリアは実力主義社会に見えますが、結構コネや時の運も必要です。私の場合、一年間アシスタントをしていた学校で仕事をもらえるという幸運に恵まれました。

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さいごに

以上、自分の経験から色々なことを書いてみました。自分で言うのも何ですが、オーストラリアで日本語教師になるのは決して簡単な道のりではありません。でも、生徒の成長を通して、自分の仕事の成果をはっきりと感じることのできるやり甲斐のある仕事だと思っています。ここまで読んで、日本語教師を目指そうと思う人、是非あきらめずに頑張ってみてください。何か質問があればメールでどうぞ。

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