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昭和天皇鯛網天覧
正面に見えるのが大槌島。 漁船よりもタンカーの往来の方がおおい。 かっては、この海域も漁船であふれかえった。
昭和3年,私が20歳の春であった。 春本番の九十九夜,好天に恵まれた御陵の海を舞台に鯛網の天覧が催された。 縛り大網三統が直島、香西,乃生より満鑑飾をひるがえし, 御陵の海へと漕ぎ出した。 待ち受けたる多くの漁船が歓迎する中, 両陛下を乗せた船が御到着, 歓呼の声が沸きあがる。 縛り大網三統は、総勢150人,赤銅色の健康美, 赤いタオルの捻り鉢巻,はっぴ姿姿もあでやかに, エーホエーホの掛け声に合わせて, 絢爛競い漕ぎ出した。 周りに集まる多くの漁船からは日の丸の小旗が振られ, 歓迎ムードは最高潮,これに両陛下も御手を振って応えられた。 綱いれの準備も整って,「カズラ」を積んだ2艘の小船がアジロに近づき, 指揮をとる船頭の合図を今か今かと待ち受ける。 潮時計り,小船の船頭の白毛采棒が左右に振られた。 「カズラ」を積んだ2艘の小船は大きくU字形に立ち別れ, 「カズラ」の沈み具合を見ながら,五丁櫓で漕ぐこと1時間。 これに恐れた大鯛小鯛がアジロに集結, 間合いを計って「カズラ」を絞る。 網入れ合図が出ると親舟2艘は立ち別れ, 小船を中心に大円形に網を入れ終え, 2艘は一体となり,エイホーエイホーと網をたぐる。 「ミソコ」が上がるにつれて銀鱗躍る大漁に歓声上がる。 船尾にあがった大漁旗、天皇陛下万歳と舟から上がる声, これに応えた両陛下,御手を振られて大満足。 天覧終わる午後5時,お召船は高松へと帰った。 この日の夕方、御陵の海に集まった鯛流瀬の船は, 地元香川で70艘、県外入漁30艘と合わせて100艘にも及んだ。 日没を合図に網入れ始まる。 好漁場「金出の石」周辺は,地元香川の船に独占され, 我等は県境にて蚊帳の外,網入れから2時間経過, 「タルミ」か返した午後の9時,各船点灯して網上げ始まる。 今宵の漁獲の楽しみは,昼の天覧鯛網での大漁を見てのこと, 期待を大きくして網をたぐること2時間。 やっと網を上げ終わる。 鯛90匹,かに,こち,かれい,大にべなど,昼に劣らぬ大漁であった。 このような豊漁は昭和20年頃まで続いた。 「我を育てた御陵の海に浮かぶ大槌島,映る英姿に手を合わす。」 老漁民の現在の心境である。 「カズラ」長さ700メートル,太さ1分5厘の細いロープに,2メートル間隔 で木札と鉛を交互に取り付けて,海底の鯛を一箇所に集める脅しの漁具 「ミソコ」網の中心の底の部分 「タルミ」引き潮から満ち潮に変わる間合い |