スズキの一本釣り

-渋川青年の家の先生の話-

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  この魚はスズキといってなかなかおいしい魚なんだけど、

釣るのはとってもむずかしい。

このえらはするどくとがっているので、

釣られても体をくねらせているうちに

このえらで釣り糸をきってしまうんだ。

このえらはえらいんだね。(笑)

 


 

4月になると,水島灘藻場にスズキが産卵のためにやってくる。

しばらくの間,藻場付近で過ごした後,

藻の中に産卵する。

卵から孵った稚魚は7月の後半になると5センチほどに成長し,

「せいご」と呼ばれるようになる。

しかし,この「せいご」は鯛子と一緒に藻打瀬網漁に捕獲されてしまい,

その大半が船内で死んでしまい,塩干し用の魚にされる。

10月になると体長15センチ程に成長し,

「せい」となって,市場に出回る。

この頃の水島灘には,「あみ」の大群が押し寄せてくる。

これを餌にして「せい」はさらに成長し,

網にもたくさんかかる。

やがて,年を越して3月頃になると,

「せい」は2年もので「はね」と呼ばれるようになり,

3〜4年物は「スズキ」と呼ばれ,

藻場から次第に沖合いへと出て行くようになる。

瀬戸内海の釣りの中でも,スズキ釣りは大変難しいといわれる。

というのも,スズキは大変用心深く,

餌を見てもすぐに食いついてこない。

このスズキ釣りを専門にする船が,

大正から昭和にかけて呼松にも4隻いた。

中でも,海津喜十郎翁と息子の定夫の親子が一番であった。

その今は亡き定夫氏から、以前聞いた極意を紹介しよう。

まず,アジロは高島や下水島の藻場の沖,

中でも,上水島の端が本アジロ。

潮は小潮。

餌は撒き餌として,活きたガザエビを20匹ほど袋に入れて,

テグスで吊るして海底へ。

次に本虫や池エビをはり鈎につけて下ろし,アタリを待つ。

餌を見つけたスズキは餌に近づき,尾ひれであおり,

餌の反応を見て再び近寄り,慎重に見極めて食いつく。

素人は餌をあおった時にアタリと思い,慌てて糸を引く。

これでは釣れない。

玄人はわずかな餌の動きでスズキの接近を知り,

餌の動きを手元で調節し餌を底につける。

この瞬間のアタリにあわせる。

獲物の大小はアタリで分かるという。

逃がしてなるかとテグスを手操ったり,伸ばしたりしながら,

暴れるスズキを次第に浮き上がらせる。

いつの時代も釣り好きにとって,

魚が鈎にかかった時の手ごたえは何物にも替えがたき感触であり,

さらに獲物をたまで掬う瞬間も,

これまた何ともいえぬ満足感があるものだ。