再び海に出る

仕事を探す人で、職安事務所は人の山、
親友知人を訪ねるも朗報はなし、
不況の風が身にしみる。
子ども5人と両親と我ら夫婦の大家族。
食べていくためには、
元の漁師に戻るしかないと決意はすれど、
4年前、県との約束で返した漁業許可証の事が
今になって悔やまれる。
しかし、万策尽きたる今、
許可証なしでの出漁は違法と承知の上、
操業を再開した。
陸の仕事と違い、身体が自然に動く。
危険はあるが、家族からは、
水を得た魚のようだとの声に苦笑いする。
また昔のように、鰆やまなかつおを追いかけて、
夜の瀬戸内海を走り回る。
年をとり、衰えた体力は船の機械化に頼るしかなかった。
違法操業の後ろめたさはあったが、
しばらくは食いつなぐことができた。
そして、ついに恐れていたときが来た。
違法による検挙2回、3回になると、
懲役がつくとの検察官の厳しい忠告に、
再度出漁をやめる決心をした。