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響け! 人生の詩
石 川 湍 (いしかわ・はやせ) |
石川 喘 (いしかわ・はやせ) 1931年 北九州市門司区に生まれる 詩誌「たむたむ」同人 現在 北九州市門司区在住
詩集 「海峡の唄」目次 T.海 峡 (6篇) ●関門海峡 鯛 シンガポールのからゆきさん 亡キ母ノ胸ノ痛ミ 最後の孫への入学祝 鉛筆とハーモニカ
U. 憧れと哀しみ (6篇) V. 旅 愁 (5編) W. やがて秋 (5編) X. 美 季 (5編) Y. 生きて (5編) Z. 潮流れる (6篇)
●印は掲載分
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挿絵は関門橋 穴吹哲二郎画伯
鯛
二月の朝五時 私の進む足跡の無い付加雪 その上に雪が風の中から舞い降り 海峡を渡る汽船はうねりに揉まれた 下関の唐戸の魚市場はそれでも 光とざわめきと潮の匂いに溢れ 結納に使う鯛は鱗を煌めかせていた その鯛は仲人の手で運ばれて 婚約者の家族を喜ばせ そこから私の妻が来た
妻は 遠くに通う私の為に朝早く起き 酒を呑んで帰る私の為に夜遅くまで待ち 視力の衰える中心性網膜炎を押して 三九○○gの元気な子を生んだ
そして或る二月の朝五時 私の足跡だけの静かな深雪の中を 義弟が結納にする鯛を求めて海峡を渡った
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