悪ふざけ架空戦記2   暦新島上陸作戦




第11回〜第20回









「一体全体、どうしてこうなるのよ!何であたいらが、大ボケ提督の指揮下に入らないといけない訳?更に性格破綻者の参謀長に、○○○○○○○○まくり○○○○ですって?!アッタマきちゃうわね、プンプン!!」

 空母「フューチャーシンキング」飛行隊所属の、スター・プラスチック少佐が怒っていた。通称「スタプラ一家」の親分、もとい隊長である。「百舌鳥」撃沈作戦の時に、首尾良く爆弾を「百舌鳥」の甲板上に叩き付ける事に成功したのだが、リョーゴ少佐の軍用物資横流し行為により、爆弾が何と花火にすり替えられていた為、何の効果もなく攻撃が失敗してしまった。その時も怒っていたが、今回はそれ以上に怒りが募っているようだった。

「むううううう(涙)、小生としては『不徳の致すところ』としか言えませんな。こんな事になっ てしまって申し訳ない」

 空母「フューチャーシンキング」「ヒストリー」の2隻で構成される、第一航空戦隊参謀として赴任してきた、ゲッカイ中佐が詫びた。以前は、大佐で艦隊司令部の参謀長だったものを、中佐に降等処分された上、戦隊司令部の平参謀に格下げである。しかも60日の「徴農」付き。懲罰としては相当酷いが、それも責任を取らされたのが一人だけだったので、そうなってしまったものである。もっとも、この件に関しては、ゲッカイ中佐は未だに「わ〜た〜し〜は悪くない〜、け〜っぱ〜くだ〜」と主張しているようだ。なお、本来なら一航戦は、機動部隊を組む以上、艦隊司令官直率になる筈だが、今回はヨン提督が旗艦を三航戦の「ドッグボード」に指定した為、一航戦司令部が別に必要になったのである。「ドックボード」は竣工したばかりなので、司令部施設と通信能力が充実している、ということが選定理由らしい。しかしそれが理由なら、二航戦の「ボッタクリー」や「モンキーボード」でもいいはずだが、敢えて「ドッグボード」を選んだ理由は、ヨン提督以外は知らない、ということである。

「いや〜ねぇ〜。ゲッカイちゃんのせいじゃないわよ〜。アナタを責めているんぢゃないの。ホゲホゲヨン提督や、コケコケテイラー提督みたいなのを、ホイホイ起用する上層部がいけないんじゃない。バッカは死ななきゃ治らない〜、って言うけど、あの二人ほどそれにぴったりハマるのはいないわ。あ、もっとも、死んでも治りそうにないと思うのだけど、ねっ!」

「オホホホホ」と、頬に手を当てて小指を立て(←ここ、ポイントです)、それからおもむろに口に出すスター・プラスチック少佐の言いように、ゲッカイ中佐は苦笑した。

『ホゲホゲ』『コケコケ』かどうかははともかく、確かに二人とも評判はよくないようですな。一応、こちらへ赴任する前に、統合幕僚本部にも寄ってきたのですが、今回の作戦の、艦隊司令部についてよく言っている人は、まるでいませんでした。少なくとも、小生の知っている範囲では。『何でこういう訳の解らない人事になるのか・・・・一体、誰が決めたんだ?』と首を捻っている人は大勢いたようですが」
(第11回終了)




 実際のところ、そうだった。統合幕僚本部でも、実は何でそうなったのかまるで知らない人間ばかりだったのである。どこからともなく、「司令官ヨン提督、参謀長テイラー提督」という天の声が降ってきて決まってしまったらしい。とは言っても、アンジェロ首相あたりが、「鶴の一声」で決めた訳でもない。事実、この件に関しては、アンジェロ首相は何も知らなかった。誰にも解らない摩訶不思議な人事がまかり通るのだから、ちゃちゃちゃ国も相当おかしなところはある。

「ホーッホッホッホッホッホッ、そんなの常識よ、ジョーシキ。歌まで作っちゃったくらいなのよ。披露しましょうか?」

 ゲッカイ中佐が可否を言う前に、スター・プラスチック少佐は勝手に唄い出していた。


「♪いいえ私は〜 パッパラパ〜のヨン〜 お気の済むまで〜 しばいて頂戴〜

 ♪アナタに遊びでしばかれて〜 アタマを打たれてパ〜になる〜

 ♪忘れてしもたら あれれ あれれ あれ何だったっけ?・・・・・・」



 ひどい歌もあったものだが、ゲッカイ中佐はそれ聞いてゲラゲラ笑っている。かなり面白がっているようだ。



「○○○○!○○○○○○ついては、○○○○○○を○○○○○○○のか、○○○○○○○!!」

 艦隊司令部の顔合わせから、いきなり○○○の○○○○○○である。すでに○を○○○○○○○おり、かなり○○○○○○しているようだ。○○が○○○○、○○○○も○○○○。

 しかし、○○○○○いる○○○○○○を見ても、ヨン提督はボケーッとしたまま、ブツブツ呟いているだけだ。

「今日の晩飯のおかずはなんだろうなぁ・・・・・」

 ヨン提督の側にいたウエスト中佐にはその声は届いたようで、中佐は思わず吹き出しそうになっていたのだが、○○○○○○には聞こえなかったようである。

「○○○○!!○○○○して○○○○、○○○○を○○○○○○!!!!」

 それでもヨン提督は、惚けた顔をしたままである。心ここに非ずといった風で、焦点の定まらぬ目で宙を適当に眺めているだけだ。○○○○○○の言っていることは、まるで聞こえないらしい。
(第12回終了)




「○○○○、○○こうやって○○○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○んでしょうね。○○○○○○を、○○と○○○○○○ですか!そんな○○○○○、○○○○を○○○○○○○○○○○○!○○、○○○○○○○○○○○○いるか、○○○○○○○○!!!

 ○○○○○○が○○しても、ヨン提督はまるで解っていない。その対比があまりに面白いので、笑いをこらえている幕僚が多かった。当人たちは大真面目なのだが、端から見ていると、ほとんど吉本新喜劇か何かのようなものである。

「ヤッ、ドモ。ドモドモ、ド〜モ。J.U.テイラーです。(^^)/  ヨン閣下は精神修行中(笑)なので、ここは一つ私が・・・・・」

 テイラー代将がそこまで言ったところで、○○○○○○が遮った。

「○○○○、○○○○。○○、○○○に○○○○○○○○○○○○んです。○○○○○○に○○○○○○ですよ。○○○○○○○○○に、○○○○○○○○さい!!

 いきなり怒鳴りつけられて、テイラー代将は気分を害したようだ。

「そんなことを言っていいんですか。私は○○会や××社に知り合いが多くいるし、活動自体を高く評価してもらっているんですけどね。『活動』をやっているのは、何もあなただけじゃない。今後、あなたはちゃんと活動をやりたいんですよね?でしたら、私の言うことは聞いておいた方がいいと思いますよ。以後、無事に暮らしていく為にもね」

 穏やかには言っているものの、相当「こわひ」ものがある言いようだった。

「ちょっと待って下さい。それではほとんど脅迫ではありませんか。『参謀長』という責任のある立場にある者が言うセリフではないのでは?」

 ウエスト中佐が、いくら何でもあんまりだ、と言わんばかりに口を挟む。しかし、テイラー代将は全く聞いていないようだ。

「どうなのです?○○○○○○!!」

 しかし、これくらいでへこたれる○○○○○○ではない。

「ああ○○○○○よ。○○○は○○○○て、○○○○○○○○○○○○○○○○いるのですね?○○○○○○○○すから、○○○○○○○も○○○○○○でしょう。○○○○、を○○○○から、○○○が○○○○を○○○○○○○○○○○さい。○は○○○○○○○○した。○○○の○○があれば○○○○○○です」

 何だか、どんどん訳の解らない応酬になっていくようだ。しかも、更に事態は悪化する。
(第13回終了)




「まったく、私の言うことを理解せず、結果的に酉国に荷担するような裏切り者が、こうやってここにもいるのですから、困ったものですね。いずれ、何が正しくて、何が間違いだったか判ることになると思いますよ。でわでわ (^^)/~~」

「○の○○は○○○○○でして、昔から○○○○では、○○○の○○に○○○○られています。その○が○○○○○○を○○○○に○○○のは、○○○○○から、○○にそう○○○○○○のだと○○○○ね。ですから、○○○○○○○○のように○○○○○○○○たちが、○○○○○○○を○に○○○○○を○○○いるのを○○と、○○○○○○○○なんですよ。○○○について○○○○○○○○○のに、○○○○○○○○○○のでは、○○○○○○○」

「どうも○○○○○○には、不可解なものを感じます。大声を張り上げて叫ぶだけで、自分が言っている事の根拠を何も説明できないようですし、『何も分かっていない』と言うだけで、具体的なことはやはり何も言っていない。感情的になって『自分が正しい』と主張しているだけです。どうも、精神のバランスを崩しているように思えますし、これは、酉国をして有利なからしめる為に、混乱を発生させようとしているようにも見受けられます。なかなか面白いプロファイリングになるのではないでしょうか。でわでわ (^^)/~~」

 ・・・・・・・・遂に、収拾がつかなくなってしまったようだ。対話と言うか、会話にもなっていない、単なる言葉の投げ付け合いでしかない。「人の言うことを、落ち着いて聞いて冷静に判断する・考える」ということが全くできない○○が、正面から衝突してしまえば、まあこんなものだろうか。

 しかし、このままでは延々と終わらないのだが、誰もとりなそうとはしない。ヨン提督は惚けたままで起きているのか寝ているのかよく解らず、たまにブツブツ意味不明の文句を呟いているだけである。「今日の晩飯のおかずも問題だけど、明日の朝飯のおかずもどうなんだろうなぁ・・・・」とか言っているようだ。何だかよく解らないが、飯のことばかりが気になるらしい。ウエスト中佐は、テイラー代将と○○○○○○の○○とヨン提督の独り言を聞き、腹を抱えて笑い転げているだけである。この二人の応酬とヨン提督の独り言が、余程面白いようだ。ムクマー少佐やショウナー少佐は、これもダベッているだけで、周りで何が起こっているかを全く気にしておらず、状況の改善には寄与する気は全くなさそうだった。

 どうにもならないまま、時間だけが過ぎていく、ということのようである。何ともまあ、無益な顔合わせもあったものだ。
(第14回終了)




ギャハハハハハハハー、どうデス、すかいらーくサン。我がルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団の新しい戦車は。この前は、脚の遅いケーニヒスティーガーで失敗しましたが、今度は機動力を兼ね備えた、V号戦車パンターです。この戦車で、妄言将軍麾下の鉄砲人足どもを、蹴散らしてご覧に入れましょう(キッパリ!)」

 またもや、ルドルフ将軍は、ナチス・ドイツの戦車を手に入れたらしい。今度は、1943年、東部戦線のクルスク会戦から戦場に投入された、V号戦車パンター(パンテル)である。重戦車のティーガー(ティーゲル)とは違い、こちらはかなり脚がある。少なくとも、歩兵に走って逃げられるようなこと(戦艦「百舌鳥」大作戦!参照)はないだろう。

「今度はパンターですか・・・・・・・・・・しかし将軍閣下は、何でこうマニアックなドイツ戦車ばっかり採用するんですか?もっと汎用性のある量産型戦車を選択すればいいのに」

 グラス・スカイラーク中佐の指摘はもっともである。二次大戦型のドイツ戦車は、確かに高性能なのだが、凝った新機軸を盛り込むのを好む傾向があった。その分故障も多く、整備がしっかりしていないと、稼働率が落ちてしまう欠点があるのだ。パンターやティーガーなら、半分ずつ重なって配置された転輪がいい例だろう。確かに、接地圧が下がるという優れた点があるのだが、その反面故障や戦闘で、奥の転輪を交換する必要が生じた場合、手前の転輪も外さないと、奥の転輪が取り出せない。結局整備や修理に手間がかかる訳である。実際、このような転輪を採用したのは、ドイツだけだった。

「すかいらーくサ〜ン、アナタはワタクシに、ガソリンをカブ呑みするのだけが取り柄のヤンキーの戦車や、下手に乗ると車内でコブだらけになるようなロスケの戦車を採用しろと?冗談ぢゃないですよ。このような文化を知らない野蛮人どもが作った戦車などは、とても採用デキマセン(キッパリ!)」

 ひどい言いようだが、ルドルフ将軍の言っていることは、ある意味では真実だ。もっとも、これには最初から否定的に評価しよう、という意図がアリアリではある。二次大戦型で言うのなら、「ヤンキーの戦車」の代表シャーマンは、確かにカタログデータ上秀でている訳ではないし、シャーマン5輌でティーガー1輌をやっつけよう、などという情けない戦術を採っていたのは事実だが、機械的信頼性は抜群だし、車高はあるものの比較的コンパクトに作られているので、輸送するのにも向いている。また、英国仕様のシャーマンの一種、主砲を17ポンド砲に載せ換えた「ファイアフライ」は、防御力は他のシャーマンと同じだが、強力な17ポンド砲の一撃で、ティーガーさえも葬る事ができたのだ。もちろん、量産性も高い。生産された数量が約50,000輌、とアメリカ軍がこの戦車に寄せていた信頼度がこれで解るだろう。ちなみにティーガーは、IとII合わせても、精々1800輌程である。
(第15回終了)




 また、「ロスケの戦車」の代表T34は、バルバロッサ作戦でロシアに侵攻したドイツ軍を「T34ショック」に陥れた実績を持っている。当時のドイツ戦車では、T34に全く歯が立たなかったからだ。傾斜を取り入れ、当時のドイツの主力、3号戦車の50mm砲弾を弾く装甲板は、それまでのドイツ戦車の四角い箱を組み上げたような形状とは異質の思想(しかもT34の方が合理的)のものだったし、76mm主砲の威力も絶大だった。更に、ディーゼルエンジンを採用しているので、燃費が良く、しかも速力もあり、接地圧を低めた幅の広い履帯は、柔らかい雪の上やある程度の泥濘でも行動力を確保できる、とロシアの気象条件や大地にも合った極めて優れた戦車だったのだ。また、後に主砲が85mm砲に換装されるなど、拡大発展性をも有していたのである。何しろ、その後の朝鮮戦争でも北朝鮮軍の主力戦車として使用されているし、何と1990年代の新ユーゴ紛争でも、まだ現役で戦ったT34があった、と言われている程だ。そこまで息の長い活躍を見せた戦車である。これも29,000両程生産されたT34は、ソ連にとっては「祖国を救った戦車」であった。歴史はそんな単純なものではない、と歴史家は考えるだろうが、もしT34が存在せず、ドイツ以下の戦車しかソ連が有していなかったら、独ソ戦争はまるで違った局面を見せていたに違いない。冗談ではなく、歴史が変わっていた可能性もあると言えよう。そもそも、パンター自体が、デッドコピーとまでは言えないものの、T34を相当参考にして設計されたものである。ティーガーIまでのドイツ戦車と、その後のパンターとティーガーIIのシルエットがまるで違うのは、設計が「T34ショック」の前か後か、という違いなのだ。

 なお、ルドルフ将軍は話にも出していないが、将軍が嫌っている「イタ公」の戦車などは、一応物自体は存在したことは間違いないが、もちろん論外である。論じるだけの価値がある「ヤンキーやロスケ」の戦車とは、レベルが違う。まあ、更に付け加えると、当時の日本戦車も、こういうレベルに比べると悲惨以外の何物でもない(シャーマンに全く歯が立たなかった代物しかない)が、まだまだ技術レベルやインフラに大差があったのだから、それはそれでも仕方ないだろう。下手に大きい戦車が通ると、道路は壊れるは橋は落ちるは、ではどうしようもない。

「はあ、そうですか。まあ、我が軍は整備部隊はしっかりしているから、パンターでも大丈夫だとは思いますけどね。それでも、整備のしやすい戦車の方がいいとは思いますけど」

 スカイラーク中佐としては、シャーマンあたりの方がいいと思っているらしい。何しろ、アメリカ製は実用一点張りである。堅実(すなわち、無闇に新しいものは取り込まない)、かつ部隊での運用を考えた設計。それが米軍流であるのだ。「燃料をガブ呑みする」に関しては、米軍の燃料補給が苦しいという事は先ずあり得ない(輸送力は絶大)ので、全く問題ではないのである。
(第16回終了)




「ハッハッハッハッハー、里在三よ、オマエの命はワタクシが貰ったも同然だ。酉京城を枕に、討ち死にしろ、討ち死に(笑)。腹をかっさばいて、檀君に詫びを入れろ(笑)。ナンキンの唐生智のように、一人だけ部下を見捨てて逃げる(爆笑)んぢゃないぞ。ギャハハハハハハハハー

 まあ、ルドルフ将軍はルドルフ将軍であって、それ以外の何者でもない、ということだろうか。全くもって、いつもの通りである。




「戦艦『家鴨』はこれより出港!暦新島への輸送船団護衛の任務に就く」

 図茂艦長の命令とともに、戦艦「家鴨」が動き出した。「家鴨」は百舌鳥級戦艦の二番艦であり、酉鳥港沖で沈んだ「百舌鳥」とスペックは同じである。基準排水量4万5千311トン。53.3口径42.195cm砲3連装3基9門。131.3mm連装両用砲16基32門。23.7mm機銃137門、最高速力29.88ノット。艦長室が二畳しかないのも前と全く同じだ。それでも若干変更点はある。啄木鳥電機製の55式キツツキレーダーが、56式にバージョンアップしていたのだ。何が違うかというと、これが実にくだらない。基本的な性能は何一つ変わらず(当然、「鳥目だから夜は弱い」もそのままだし、レーダー射撃能力も低い)、レーダー画面の輝点の表示を、啄木鳥のシンボルに変更できる、というだけである。明らかに、改良の方向性を間違っているとしか思えない、ロクでもないバージョンアップであった。何でも、啄木鳥電機のソフトウェア技術者の苦心の作なのだそうだ。それで調達費用は5割増しだと言うのだから、カラオケどころではなく、単なるボッタクリ以外の何でもあるまい。
(第17回終了)




 それにしても、相も変わらず「家鴨」も出港までの時間は長かった。図茂艦長が出港準備の指示を出してから、36時間かかってしまっている。前の時に「百舌鳥」が、出港するまで一日かかっているのに比べて更に多い。予定時間±1日まで許容される、いわゆる「酉国海軍時間」より半日オーバーしているが、これは「百舌鳥」の時とは違って、乗組員に新兵が多いことによるから、ということだろう。この行動の遅さには図茂艦長もホトホト呆れているのだが、これが酉国海軍の伝統なのだそうで、どうしようもないようだ。

「暦新島まで行くだけで一苦労だぜ。船団を組んだ途端に、衝突の危険性があるしな。どうなってもおれは知らんぞ」

 文句ばかりが口に出る図茂艦長である。

「まあまあ艦長、慎重に操艦すれば、何とかなるかも知れませんよ」

 この「家鴨」でも相変わらず航海長を務めている、街番五中佐が図茂艦長に話しかけた。

「ケッ。そんなに上手く行くもんじゃないってことは、お前さんだって良く知っている筈だろう。そりゃ、『家鴨』の操艦に関しては、お前さんに任せてあるから上手くやってはくれると思うがね。他のフネはどうなると思うんだ?」

 吐き捨てるように言う図茂艦長に対し、それでも街番五中佐は笑っていた。

「いや〜、艦長は相変わらず辛辣ですねぇ〜、やっぱりまだこの前の作戦のことに、腹を立てているんですか?」

「当たり前だろう。ロクでもない『作戦』を、田岡と田町の阿呆に問答無用で押しつけられ、その結果ちゃちゃちゃ国のキチガイどもの相手を延々とせねばならず、それでもようやく任務を果たして生還してきたと思ったら首都防空の不備で艦は沈められしたくもない海水浴をせねばならず、しかも田岡の馬鹿は、『百舌鳥』が沈んだのはおれの責任だから徴兵期間延長だ、と言いやがった。これで腹を立てない奴がいたら、顔を拝んでみたいところだな」

 意外に根に持つ図茂艦長である。とは言っても、ここまでロクな目に遭っていなければ、それもそんなものだろうか。



 間もなく、「家鴨」は酉鳥港港外で待っていた船団と合流した。輸送船六隻に駆逐艦十隻、「家鴨」を中心に、すぐに輪型陣を組むことになる。しかし、やっぱり図茂艦長が思った通り、陣型の構築が上手くいかない。輪型どころか、四角形に組みあがってしまい、しかもそれも微妙にずれているので正確に言えば四角にもなっていないのだ。結局隊列はバラバラで、どこが輪型陣なのか?と言える状況になってしまった。ごちゃごちゃした密集隊形、とでも言ったら実際のところと近いだろうか。

「ケッ。思った通りじゃないか。輪型陣など組める筈もないんだ。まあ、衝突しないだけマシなようだがな。おれのせいじゃないから、知らんぞ」

 図茂艦長は艦橋から周囲の様子を眺め、毒づいた。「家鴨」は「輪型陣」の中央にいるだけなので、隊形の整備についてはあまりやることがない。衝突しないよう、他のフネとの間を保っていればいいだけである。問題は輸送船と駆逐艦の艦隊運動だった。どのフネもヘボ船長とヘボ艦長ばかりだったので、マトモにフネを動かせず、綺麗な輪型を築くことなどできない、ということである。
(第18回終了)




「航海長、どうせ『輪型陣』など組めはしないと思うが、ジタバタと悪あがきをする奴がいるだろうから、衝突だけはしないように注意しろよ。操艦は言ったとおり任せるので、しばらく頼むぜ」

 図茂艦長はそれだけを言うと、艦長室に戻ってしまった。二畳しかない艦長室でも、一応横になることくらは出来る。そのうち、寝息を立て始めた図茂艦長であった。馬鹿馬鹿しくてやっていられない、といったところであろうか。



「『百舌鳥』級戦艦一隻、駆逐艦十隻、輸送船六隻酉鳥港を出港。目的地等は不明」

 酉国に潜入させている諜報員からの報告に、ルドルフ・ナンバー将軍は目の色を変えた。

『百舌鳥』級戦艦ですと?だとすると、これは新造艦ですネ。まだ酉国の戦艦は他には『鶏』が残っている筈ですが、かなり旧式なので見間違うことはないでしょう」

 何と言っても、「オペレーション・バードウォッチング」では、ルドルフ将軍のSS装甲擲弾兵師団は、「百舌鳥」一隻の為に大損害を受けている。最後は「報復兵器1号・キンドン」を撃ち込んで「百舌鳥」を撃沈したものの、それがなかったら無為な作戦で損害を被った責任を追及されかねなかったところだ。「百舌鳥」級戦艦と聞いて、将軍の気がはやるのは仕方あるまい。

「将軍閣下、それよりは、輸送船の方を問題にすべきではないでしょうか?一体何を積んでいて、どこへ向かっているのか。小官はそちらに関心がありますね。『百舌鳥』級戦艦の方は、仮に暦新島に来るにしても、対処は海軍の担当です。我が陸軍が頭を悩ますような話ではないでしょう。さすがにもう、艦砲射撃で一方的にやられるのが御免ですよ」

 グラス・スカイラーク中佐が釘を刺した。放っておくと、ルドルフ将軍は自分が言い出しっぺの「暦新島上陸作戦」をうっちゃっておいて、「百舌鳥」級戦艦攻撃の方に突き進みかねない。下手をすると、またもや戦車で戦艦と撃ち合う、とか言い出すかもしれないのだ。さすがにそれではたまったものではないだろう。

「とにかく、『暦新島上陸作戦』は将軍閣下が言い出したことなんですから、途中で作戦目的を違えたりしないで下さいよ。上陸作戦の方をうっちゃっておいて、『百舌鳥』級戦艦に突き進むのは止めて下さい」

 スカイラーク中佐にはっきり言われて、ルドルフ将軍は不満そうだ。

「すかいら〜くサ〜ン、シャ〜ラッ〜プ!!戦場というものは、刻一刻と変化するもので〜す。状況の変化に臨機応変に対応せねばならないことは、当然の話ぢゃないですか。場合によっては、この『百舌鳥』級戦艦を先に排除せねばならないことも、当然あり得ます。その『百舌鳥』級戦艦に手を出すことはない、とお約束することはデキマセン(キッパリ!)

 それでも屁理屈をこねるルドルフ将軍であった。「百舌鳥」に手を出して散々ヤラレたのにもかかわらず、まるで懲りてはいないらしい。「機会があったらもう一度」と考えているようだ。
(第19回終了)




「どうしてもやるにしてもせめて、『キンドン』『ポテドン』を使用することくらいにしてはくれませんか?戦車や野砲で撃ち合ったって、勝てる訳ないんですから。また同じことやって失敗しても知りませんよ」

 更に苦言を呈するスカイラーク中佐だが、ルドルフ将軍はまるで聞いていない。なにやら鼻歌も飛び出しているようだ。


「『ルーエピ!』『ルーエピ!』『ルーエピ!』『ルーエピ!』『るーえぴサ〜ン』

『あわてない、あわてない、ひとやすみ、ひとやすみ。でも逃げたら負け犬だ。
あはははは。ちゃんと答えろよ、卑怯者! ワリャ!』

スキスキスキスキスキスキ ジュ・テーム♪
スキスキスキスキスキスキ るーえぴサン♪

口説きは 鮮やかだよ 一級品    (チャカチャッチャ♪)
不倫も お見事だよ 一級品     (チャカチャッチャ♪)
ベッドじゃ 激しく 一級品     (チャカチャッチャ♪)
だけど倫理は からっきしだよ 問題外 

オイ! ワリャ! 徴農だ〜!
浮気がバレれても 妻が泣いても 気にしない!
気にしない〜 気にしない〜 気にしない〜 
『人間尊重 文化理解』
『オレは善人 モテるのさ』 
フザケてんのか るーえぴサン♪」


スキスキスキスキスキスキ ジュ・テーム♪
スキスキスキスキスキスキ るーえぴサン♪

フランス語 流暢だよ 一級品  (チャカチャッチャ♪)
宣伝 お見事だよ 一級品    (チャカチャッチャ♪)
逆ギレ 激しく 一級品     (チャカチャッチャ♪)
だけど英語は からっきしだよ BE WARY! 

オイ! コラ! 徴農だ〜!
指摘をされても 爆笑されても 気にしない!
気にしない〜 気にしない〜 気にしない〜 
口説けて値切れりゃ OKさ!
不倫がいけないことですかあ?
「地球市民」だ るーえぴサン♪

スキスキスキスキスキスキ ジュ・テーム♪
スキスキスキスキスキスキ るーえぴサン♪



 処置無しである。スカイラーク中佐は呆れて黙ってしまった。



「『百舌鳥』級戦艦及び駆逐艦、輸送船により構成される艦船群が酉鳥港を出港。目的地は不明」

 同じ情報は、ヨン提督の司令部にも、ほぼ同時にもたらされた。通信参謀のムクマー少佐が報告したのだが、それを聞いてもヨン提督は眠そうな顔をしているだけで、ほとんど意味を理解していないようだ。

「あのー、ヨン提督?何か対応することないのでしょうか?」

 ウエスト中佐が質問を発するが、ヨン提督は全然聞いていない。ボーッとしている。何か言っても無駄なようだ。

「ところで、○○○○○○はどうなさったのでしょうか?」

 ムクマー少佐が不思議がる。情報が入ってきたというのに、○○○○○○が姿も現さないとは、かなり珍しい。いつもの○○なら、ボーッとしているヨン提督への、○○○○○○○○○を○○○○○○筈なのだが。

「ああ何でも、『○○を○○○なので、○○○○に○○○』なのだそうです。何を○○○いるのかは知りませんけど。かなり○○○○○○○○○○○○ようですが」

 ショウナー少佐が、珍しく他人の質問に答えた。普段は黙っているか自分が主張したいことを言うだけで、他者に対しては滅多に受け答えしない少佐である。早い話が「放送」しかしない訳だ。他人の言うことを聞く、とか議論に応じる、ということは全くない。しかも、いい加減で裏をちゃんと取っていない情報でも平気でたれ流すので、かなり迷惑な存在であるのも確かなようである。更に、結構武闘派なので、「こわひ」ところも多いようだ。今日のように饒舌なのは、かなり珍しいことだった。
(第20回終了)










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