悪ふざけ架空戦記2 暦新島上陸作戦
第1回〜第10回
「何と?上陸作戦ですか!?直接酉国に侵攻すると!!」
「そうデス。我がSS装甲擲弾兵師団が、酉国暦新島に上陸。完膚無きまでに敵を粉砕して、暦新島中心都市の酉京(とりきん)城を攻略してご覧に入れましょう(キッパリ!)」
戦艦「百舌鳥」への攻撃、「オペレーション・バードウォッチング」が行われた数ヶ月後、ルドルフ・ナンバー将軍は統合幕僚本部に赴き、麾下の装甲擲弾兵師団による、暦新島への上陸作戦を提案していた。
確かに「百舌鳥」の撃沈には成功した。しかし、ちゃちゃちゃ国も負けず劣らずの損害を受けている。いや、それどころかバランスシート上は、明らかに悪いだろう。「百舌鳥」ばかりか「啄木鳥」の撃沈にまで成功したのはとにかく、出動した味方の戦艦1隻も沈んでしまったし、3隻が大破してドッグ入りのありさまである。茶本日島ではルドルフ将軍のSS装甲擲弾兵師団も大損害を受けていた。戦死傷者数では、酉国を上回る状況だ。更に、マッドライフ犬柳田博士が、訳の解らない秘密兵器による攻撃を行ってくれたので(しかも失敗)、大怪獣「ジラコ」の爆発などにより、茶本日島自体の損害も、相当なものである。一応「勝った勝った」と宣伝しているのだが、それでもちゃちゃちゃ国は作戦目的(「百舌鳥」の撃沈)を達成しているところを考慮すると、実質痛み分けに近いと言えようか。
「確かに、我が報復兵器1号・2号の威力もあって、『百舌鳥』と『啄木鳥(ギャハハハハハハハー。るーえぴサ〜ン、生きてますかー?)』撃沈には成功しまシタ。しかしですネ、こちらの損害も多く、まだ戦争に勝ったとは言えマセン。ここらで一つ、決定的なダメージを酉国に与えなければ駄目です。その為には、暦新島の制圧は山猫うっけ(笑)、もというってつけです」
この戦争、始まったはいいが、陸軍が活躍する場がまるでない。唯一ルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団のみが、「百舌鳥」との戦闘に参加しただけだ。その後は、専ら海空軍の独壇場になってしまっている。しかも、お互い決定打がない手詰まりの状況だった。それに、ルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団は「百舌鳥」の艦砲射撃で一方的に叩きのめされただけであり、ちゃちゃちゃ陸軍としてはフラストレーションが溜まってしまっているだけである。それも考慮して、何とか陸軍部隊が直接戦闘に参加する機会が必要だ、というのがルドルフ将軍のみならず、ちゃちゃちゃ陸軍全体の考えだ。
「しかし、海を隔てた酉国相手の戦争なのですから、海空軍主体になるのは当然でしょう。陸軍が戦闘意欲旺盛なのは結構ですが、それを満足させる為の作戦、ということが根底にあるのはあまり関心しませんね。『とにかく何でもいいから、戦闘に参加して手柄を立てたい』では動機が不純です。それではあまりいい結果にならないと思いますが」
ルドルフ将軍に対応をしている、統合幕僚本部作戦課の「ブラック・アドミラル」こと、海軍出身のブラック代将は、将軍の提案に乗り気ではない。代将はもちろん軍事力の効果を否定している訳ではないが、どちらかと言うとそれの濫用には批判的なのだ。「何でもいいから酉国と戦いたい」という陸軍部の意志を代弁している、ルドルフ将軍の提案に好意的ではないのは、そもそもあまり仲のよろしくない陸海軍の間というだけではなく、ブラック代将の性格も考えれば当然の話だったろう。ちなみに、ブラック代将は、陸軍戦略兵器研究所所長のジュッキ・フォン=ブラック博士と血縁関係がある訳ではない。代将は貴族出身ではないし、姓が同じなのは偶然である。
(第1回終了)
「アドミラ〜ル。アナタはワタクシが何の勝算もなしに、このような提案をするとでも?駄目ですネ、彼我の戦力検討もロクにせずに、印象だけで成否を決めては。ハッハッハッハー、資料を渡しますから、ちゃんと読んでおいてクダサイよ。それに、酉京城を制圧できれば、面白いぢゃないですか。暦新島にルフトヴァッフェ(ドイツ語で「空軍」。単に「ルフトヴァッフェ」と言った場合は、ドイツ空軍を指すのが普通。一般名称として流通しているのは英語の「エア・フォース」ですので)の基地を得られれば、戦争全体が有利に進められますしネ。更に、酉国の面目は丸潰れになること間違いアリマセン」
とにかく状況を面白がっているルドルフ将軍である。ブラック代将の反対は、物の数ではないと考えているらしい。
「いや、しかしですね・・・・・」
なおも言うブラック代将に、ルドルフ将軍は覆い被せるように決めつけた。
「ですからアドミラ〜ル、反対するのなら、根拠(笑)を示さなければイケマセン。根拠のない物言いでは、論争にすらなりません(ワリャ!)。それに、動機などどうでもいいぢゃないですか。アドミラルの意見は、反論になっていませんネ。アドミラ〜ル・ブラッ〜ク、この件に関してはアナタの負けだ(キッパリ!)」
それでも口をパクパクさせながら、何とかルドルフ将軍に抗弁しようとしていたブラック代将だが、ついに断念したようだ。
「・・・・・・判りました。一応、上にこの案を提出しておきます。しかし、採用になるかどうかは保証できませんよ」
しぶしぶ、と言った様子で、ブラック代将はルドルフ将軍の作戦提案書と資料を受け取った。それを見て、ルドルフ将軍は笑っているだけだ。
「ハッハッハッハッハッハッハー、それでよろしいので〜す。ハッハッハッハッハッハッハー」
実に楽しそうなルドルフ将軍である。「暦新島」に何か思い入れがあるのかも知れない。将軍の副官、グラス・スカイラーク中佐も一応その場にいたのだが、特に口は挟んでいない。制海権・制空権を取れるのなら、上陸作戦の成功は、先ず疑いがないところである。中佐が心配する必要は、まるでなかったのだ。
(第2回終了)
「おいおい、おれにどうしろと言うんだよ。『家鴨』はまだ就役したばかりだぜ。ろくすっぽ訓練も終わっていないのに、何かができる訳がないだろう。そりゃな、『百舌鳥』の乗組員をかなり回しては貰ったので、同型艦だから経験のある連中はまごついたりはしないだろう。でも、「チーズ奪取作戦」では死人や怪我人は結構いたんだぜ。新兵だって決して少なくはないんだ。こんな状況で作戦行動など、本気でやれと言っているのか?何でお前さんたちは、おればかりをこき使おうとするんだ。いい加減にしてくれ。無事だった屋子帽の『鶏』でも作戦に使えばいいじゃないか」
ここは、酉国海軍鳥酉艦隊司令部。司令長官米鉢次帥(何と、戦艦2隻も失ったのに昇進した!ちなみに、「次帥」というのは「元帥」の下で、現世では北朝鮮軍だけにしかない妙な階級です)の前で、「百舌鳥」級戦艦2番艦、「家鴨」艦長の図茂大佐が文句を言っていた。
「これこれ、『こき使う』だなどと言ってはいけない。
#図茂艦長の意見は言いがかりです。
#この間の「チーズ奪取作戦」のような、
#敵地への進攻を伴う大規模な作戦をもう一度行うのであれば、
#確かに『こき使う』と言えるでしょう。
#しかし、今回図茂艦長の任務は、
#暦新島への輸送船団の護衛です。
#暦新島は敵地ではありません。
田岡は、『家鴨』が輸送船団の護衛を行う事は、無茶な任務ではないと思うぞ。
『鳥酉艦隊司令部が図茂艦長をこき使っている』というのは、根拠のない言いがかりですね」
参謀長の田岡中将(こちらは昇進なし)が、いつもの通り「論理」を駆使して反論する。端から見れば、よくもまあ意味不明の屁理屈をこね回せるものだ、とある意味で関心させられてしまうのも毎度のことである。
「図茂さんよぉ、今回は『家鴨』の慣熟航海って程度に思って貰いたいもんやな。なーに、暦新島は酉国領、すなわち我が軍の勢力圏や。敵がノコノコやってくる可能性などありはせんで。怖いのんは潜水艦やけど、そちらは専門の駆逐艦が護衛に付くさかい、『家鴨』が気にするこたないで。訓練航海と思って、気楽にやって貰いたいもんやな」
いきなり関西弁モードになっている田町大佐(これも昇進なし)も、同じように言う。それを聞いて、図茂大佐は憮然とした表情になった。
(第3回終了)
「まったくお前さんたちは、いつもお気楽極楽でいいもんだな。どうやったらそう脳天気になれるものだか。羨ましくなってくるぜ」
イヤミたっぷりに言う図茂艦長だが、米鉢次帥にも田岡中将にも、田町大佐にもまるで通じていないようだ。まあ、早い話が、何で「お気楽極楽」と評されたのか、3人には判らなかったからである。でも実際は、図茂艦長の言う通りなのだ。潜水艦の危険がある海域に、対潜対処能力が全くない戦艦を敢えて出す。護衛駆逐艦がいるとは言っても、そちらの目的は船団の護衛で、「家鴨」の護衛ではない。酉国海軍の現状からは、「家鴨」にも護衛駆逐艦を多数出せるとは思えない状況である。もし、訓練不十分な「家鴨」が、敵潜水艦の放った魚雷を喰らったりすれば、そのまま沈んでしまう事もあり得るのだ。実際、昭和19年に、艤装がロクに済んでおらず(缶も2/3しか無かった)、乗組員もまるで慣熟していなかった空母「信濃」が、偵察の為に遂に日本上空に姿を現したB29に、空襲されるかも知れないと海軍関係者が慌て、建造していた横須賀から呉目指して出港したものの、遠州灘で米潜「アーチャーフィッシュ」の雷撃を受け、しばらくは保ったものの浸水が徐々に進んで、熊野沖であっさり沈んだ、というような例がある。大和級戦艦の船体を流用した6万数千トンもの巨大空母が、たかだか4本の魚雷で、あっけなく沈んでしまったのだ。まあ、装がまだだったので、艦内に電線が這い回っており、防水隔壁が閉鎖できなかった、というのもあったようだが。乗組員が艦に不慣れで、対処指示が出ても、どこに行けばいいのやら、まるで解らなかった、という事もない訳ではない。「大和」などでも、新たに配備された水兵が、艦内で迷子になるのは珍しくなかったそうである。むしろ、「艦内旅行」と称し、ウロウロ歩き回って艦内地理の把握に務めるのは、当然であったのだ。
「図茂君。君はそう言うでしょうが、屋子帽大佐の『鶏』では、あまりに旧式過ぎます。艦のあちこちにガタが来ていますし、雨漏りも酷いそうですよ。そのようなものですから、燃費も相当悪くなってしまっています。あまり艦船用の燃料に余裕がある訳でもありませんしね。しかも、どこからともなく、燃料漏れが起こるのだそうです。大体、「家鴨」が就役したら、「鶏」は廃艦にする予定でした。この前の『チーズ奪取作戦』で、『百舌鳥』と『啄木鳥』を失ったから、やむを得ず現役に留まらせているのです、あの艦は。いくら我々酉国人民が、人類最高の指導者にて、百戦百勝の鋼鉄の聖将、鳥産主義未来の太陽、神聖不可侵かつ偉大なる王威皇帝陛下への忠誠心が篤いとは言っても、忠誠心だけで何事も成し得る訳ではありません。世界唯一絶対の最終思想、鳥産主義イデオロギーと雖も、物理法則までは変えられないのです」
「チーズ奪取作戦」の時はキレまくっていた米鉢上級大将、もとい次帥だが、今は精神の平穏が保たれているようだ。何と理性的に図茂艦長を説得している。前とペースを変えず、相変わらず訳の解らない「論理」を振り回す田岡中将よりは、マシな言いようだった。
「フン。何だかんだと言って、結局他人の尻拭いはおればかりだ。やっていられないぜ」
図茂艦長は吐き捨てるように言う。ついでに「あんなアホウなお子様皇帝に、忠誠心など持つ馬鹿がどこにいる!」と付け足したいところだったが、米鉢次帥がキレまくったりすると大変なので、さすがに止めておいたようである。
(第4回終了)
「まあまあまあ、そう言わんと。頼りにしているんやさかいな」
田町大佐が宥めた。
「ところで、何でまた急に輸送船団なんだ?別に暦新島への補給が滞っている訳ではあるまい。そんな話は聞いていないからな。戦艦を護衛に付けなければならない程の、大規模な輸送が何で今必要なんだ?」
図茂艦長の疑問ももっともである。暦新島が補給途絶状態にある訳ではない。大規模な増援部隊を送り込むのでもない限り、輸送船団など必要はない筈だ。それについては、直ぐに幕僚のムエ少佐が淀みなく答えた。
「いや、それは陸軍からの要請なのですよ。暦新島守備部隊の陸軍司令官、里在三将軍の要求により、新たに部隊を送り込む事になったそうで。図茂艦長のおっしゃる通り、増援部隊の輸送ですね」
「里在三?そいつが暦新島守備部隊の司令官なのか」
もちろん、図茂艦長は、陸軍内部についてはあまり知りはしない。「里在三将軍」と言われても、顔や経歴が浮かんでくる訳ではないのだ。
「風評では、『酉国陸軍随一の智将』だそうです。何でもゲリラ戦術の権威だとか。泥沼の戦いに持ち込ませたら、右に出る者はいないとのことです」
ムエ少佐が、さらっと里将軍についての評判を述べる。
「ゲリラ戦の権威?妙な将軍がいるものだな。それで『酉国陸軍随一の智将』なのかよ。ここの海軍も相当変だと思ったが、陸軍も同じくおかしな人間ばかりいるのか?」
図茂艦長の意見は常識的(ぶぶぶぶぶぶ)なセンである。ゲリラ部隊か何かならともかく、正規軍の司令官が、「ゲリラ戦術の権威」とは一体何事であろうか。しかもそれで「酉国陸軍随一」だと言うのだから、ますます以ておかしなものだろう。これでは、酉国陸軍は、「正面からマトモに戦争する能力はアリマセン」とでも言っているとしか思えない。
「これこれ、決めつけてはいけない。
#図茂艦長が言っている事は、単なる意見です。
#酉国海軍が変だというのは、一般常識ではありません。
#酉国陸軍におかしな人間ばかりいるというのも、
#図茂艦長個人が言っているだけなのです。
#もし、図茂艦長がそう言いたいのなら、
#根拠を挙げて証明しなければならない。
#そうでないと中傷になってしまいます。
田岡は、思い込みで軽率に発言する事は良くないと思うぞ。
中傷をやってはいけない」
またもや田岡中将の「論理」が炸裂した。本当に訳が解らない物言いである。「酉国海軍も陸軍も変だ」と言っただけで、「中傷だ」とか言い出すのだから。しかし、さすがにもう図茂艦長は相手にしなかった。それこそ「最後に言った者の勝ち・泥沼言い合い合戦」になってしまうだけで、収拾がつかなくなること請け合いだからである。
(第5回終了)
「で、船団の規模はどれくらいで、護衛駆逐艦は何隻付くんだ?正直言って、艦隊行動なんかやったことがないんだがな。そんな状況で船団を組もう、なんておれはいい度胸だと思うがね」
実際、図茂艦長は「百舌鳥」の時も、他艦との共同訓練など一度もやった憶えがなかった。大体、マトモに艦を動かせるのが図茂艦長だけという状況で、どうにかなる訳があるまい。
「それは心配せんでもええで。一応輸送船は6隻、護衛駆逐艦は10隻や。輸送船より護衛駆逐艦の方が多いさかいな」
田町大佐の答に、図茂艦長は呆れた。
「何だそれは。輸送船6隻に対し、駆逐艦が10隻かよ。1隻あたりの護衛艦が2隻ないじゃないか。しかも、『家鴨』の護衛もやってもらわなければならないんだぜ。足りそうに思えないな」
「いやいや、一応輪型陣を組んで貰う予定やさかい、大丈夫やろ。『家鴨』を中心に輸送船6隻を輪型に配置し、その外に駆逐艦10隻がもう一つの輪型を作るんや。外殻の駆逐艦の輪型陣を突破できなければ、潜水艦には攻撃できない、という寸法やな」
簡単そうに言う田町大佐だが、図茂艦長は仰天する。
「おい、そんな複雑な艦隊運動などできないぞ。そもそも輪型陣を組む訓練など行っていないじゃないか。それに、おれの『家鴨』は就役したばかりだ、と何度言っていると思っているんだ。洋上で輪型陣を組むだけで何時間かかるか解らないし、仮に組んだところで、それを崩さないようにするなど至難の業だ。普通に航進しているだけでも、その輪型陣を維持するのは難しいな。それどころか、衝突が続出するんじゃないか?」
実際のところは、図茂艦長の言う通りだ。艦隊運動というのは、結構難しい。何しろ、船は自動車のように急ブレーキを掛けて何mかで止まったりできる訳ではない。図体がでかく重量もあるので、旋回半径も各段に大きい。慣性の法則にかなり支配される代物なのだ。「艦を操縦している人間が思い描いた通りの位置を占める」という事は、簡単に見えて結構難しいのだ。それも、何隻もの船が一つの陣型を作るとなれば尚更の事である。
「なーに、案ずるより生むが安し、と言うやないか。何とかなるで」
田町大佐は気楽なものである。あまり深くは考えていないらしい。
「田岡は、やってもみないでは、結果は解らないと思うぞ。
#図茂艦長の言っているのは一つの意見です。
#輪型陣の訓練は、確かにやってはいません。
#ですが、やってもいない内に、
#『出来ない』と決めつけるのは根拠がない。
#根拠のない意見は、論理的ではありません。
図茂艦長は、論理的に話さなければいけません。
根拠のない物言いは、田岡が許さないんだぞ」
また訳の解らない「論理」を振り回す田岡参謀長であった。さすがの図茂艦長も、これ以上の抗弁を諦めたようだ。堂々巡りで、結論など出よう筈もないからだ。それに、どうせ田岡参謀長と田町参謀の言う通りになるに決まっていよう。
(第6回終了)
「ブラッド君ブラッド君、『例のモノ』の組立じゃが、仕上げは慎重にの」
ここは、ちゃちゃちゃ国の、鬱蒼と繁った森の中、マッドライフ犬柳田研究所。相変わらずマッドライフ犬柳田博士が、怪しい物体を作っている。Zオカダムを自爆させたり、大怪獣「ジラコ」にマッドライフ砲を撃ち込んで吹っ飛ばしたりしても、全く「懲りる」という事はないらしい。
「はあ、まあ普通にやっていますけど」
ブラッド主任は、気の無さそうな声で答えた。実際、今度作っている「例のモノ」は、またもやかなり巨大なものだ。部品もたくさんある。組み立てを間違えないように、慎重にやっているだけで精一杯だ。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、我が新作秘密兵器(笑)の出番も、間近なようじゃな。今度こそマッドライフ犬柳田研究所の名を、天下に轟かせてくれるわ!!ぶわははははははははは」
すでに充分、マッドライフ犬柳田研究所の名は天下に轟いている(但し悪名)と、チョーサカ君は思ったが、博士に一々そんなことを言っても仕方が無いので、黙って組み立てに没頭していた。ブラッド主任も、そんな博士の様子を見て、肩をすくめているだけである。
暦新島守備部隊の司令官、里在三酉国陸軍中将は、島の防備に不安を覚え、増援部隊を要請した、というのが実際のところである。これは、「虫の知らせ」とでも言うべき「勘」だった。別にちゃちゃちゃ陸軍ルドルフ将軍の、暦新島上陸作戦案について、何か情報を得ていた訳ではないのだが、なんとなく嫌な予感がしたので、増援を要請したらしい。
「どうも嫌な予感がしますね。何というか、途方も無く根性悪な外道が、ロクでもない事を企んでいるんじゃないかと」
里在三将軍自身、根拠のない物言いだと思っているようだが、どうも上手く説明できないようである。
「里閣下、唐突にそう言われましても、何だかよく解りませんが」
参謀長の可口可楽大佐が首を捻る。里将軍麾下の暦新島守備部隊は、実際のところは歩兵1個旅団分しかなかった。それを、砲兵1個連隊、騎兵1個連隊、戦車2個大隊、更に航空兵力の増強、とかなりの規模の戦力増強を行う予定だ。
「いや、私にも上手く言えないんですよ。勘で言っているだけですから」
里将軍は、根拠がない物言いである事を認めた。しかし、ここは鳥酉艦隊司令部ではないので、田岡参謀長の「これこれ・・・・」以下のツッコミはない。その点だけは、幸せだと言えよう。
「勘ですか・・・とは言っても、嫌な予感ってのは結構当たるものですからね。その『途方も無く根性悪な外道』が、ここへやってこないことを祈るだけです」
可口可楽大佐はそうは言っているものの、あまりそういう事態は想定していないようだ。所詮、勘だけで根拠がない物言いでは、他者を納得させることはできない。
(第7回終了)
「しかし仮に、この暦新島に敵が侵攻してきたとしても、我々には、最終的には城内に篭もって、ゲリラ的に市街戦を行う手段もあります。それなら我が軍得意の戦術ですし、市民の自発的な蜂起にも期待が持てます。何しろ、この場合は戦場は我が国の都市なのですから、侵攻側に非がある事は言うまでもありません。その場合、どのような手段を使用しようとも、我が方が正義なのです」
さすがに「ゲリラ戦の権威」だけあって、最初からゲリラ戦法を考えているようだ。酉京住民を巻き込む事も当然だと考えているらしい。もっとも、里将軍に言わせれば、「他国に攻め込む方が悪い」との事なので、それを撃退する為には、何をやっても許される、と考えているようだ。可口可楽大佐も異存はないようで、しきりに頷いていた。
さて、こちらはちゃちゃちゃ国。ルドルフ・ナンバー将軍発案の「暦新島上陸作戦」だが、結局、統合幕僚本部で審査された結果、実行される事になった。何しろ今まで戦果らしい戦果と言えば、「百舌鳥」と「啄木鳥」を撃沈した事だけ。しかも「チーズ装甲倉庫(手抜き工事だったものの)」を建設したり、戦費を掛けすぎている。そこまでやっていて、どうにもこうにも戦争の勝利への決め手がないのでは、何か動かなければならなかった。戦略空軍は「酉国への戦略爆撃の実施」を主張しているが、ブーイングB229スーパーエントロピー機でないと、酉国へ直接攻撃できる航続距離のある機体がない。しかし、スーパーエントロピー機は高価なので、第10戦略爆撃旅団に配備された30機しか、今のところ実物が無かった。この30機をフル回転させたところで、効果はあまりないだろうし、連日出撃させたりしたら消耗も激しくなるのは当然だ。効果が少ない上、機体の消耗が激しく、更に相手に「非戦闘員を大量殺戮するちゃちゃちゃ国の非道」と宣伝する材料を与えるのでは、スーパーエントロピー機による戦略爆撃は好ましい戦術ではなかったのである。仮に使ったとしても、「百舌鳥」撃沈作戦に使用したように、スポット的に奇襲作戦か何かで使用するしかないだろう。酉国領でも、比較的ちゃちゃちゃ国からの距離が近い佐世宇世島では、海空軍による激戦が展開されていた。何しろ、戦術レベルの航空機でも、酉国からでもちゃちゃちゃ国からでも、十分往復が可能なのだ。ここでは、優劣不明で情勢が推移しているだけである。一応酉国領の佐世宇世島だが、住民はおらず、なおかつ占領したところで島内いたる所が起伏の激しい地形なので、航空基地の適地もない。また、港湾も貧弱で、精々100トン以内の小舟が入港できる港が一つあるだけである。もちろん、島自体の面積も小さい。大規模都市の「酉京」を抱える暦新島とは訳が違う。茶本日島ともだ。実際のところ佐世宇世島は、両軍の手合わせの場になっているだけである。しかし、いくら佐世宇世島上空と近海で戦闘を継続していても、両軍ともに決定的なダメージを相手に与えられる訳はなかった。ちゃちゃちゃ国としては、罠とは云え一度は戦艦「百舌鳥」に、茶本日島にまで到達されてしまい、チーズを奪われた上に守備部隊のルドルフ・ナンバー装甲擲弾兵師団に損害を与えられている。今度は、こちらから攻勢を掛ける考えは、当然出てこようと云うものだ。
(第8回終了)
結局、侵攻兵力はルドルフ将軍の「ルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団」及び海兵隊2個連隊、それだけとなった。海兵隊が最初に上陸作戦を行って一旦橋頭堡を確保し、その後ルドルフ師団が続いて上陸し、内陸へ進撃する。上陸後、海兵隊は予備兵力として後衛に廻る、という手はずだ。一応建設工兵大隊や、補給部隊も定数以上付く。ちゃちゃちゃ陸軍情報部の調査結果では、暦新島の酉国陸軍守備兵力は歩兵旅団一個と海兵隊が若干、という程度である。装甲擲弾兵師団、実質機甲師団のルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団にとっては、酉国陸軍の標準である歩兵旅団程度が相手なら、楽勝と言ってもいいだろう。すでに「百舌鳥」との戦闘で受けた損害は補充し終えているので、ルドルフ師団の戦闘能力については全く問題はない。戦車・装甲車・自走砲などを主力とし、機械化された装甲師団の優位については、とうの昔に証明されていることである。更に、航空軍と連携した電撃作戦については、言うに及ばない。対戦車火器も貧弱な、酉国の歩兵旅団程度で対処するのは、かなり困難なことは間違いなかろう。
ルドルフ将軍は、暦新島守備部隊の総司令官が里在三酉国陸軍中将と聞いて、最初から爆笑していた。
「ギャハハハハハハー、そうですか。暦新島にいるのは、嘘ツキのイカサマ野郎、妄言将軍里在三なのデスカ。あの××××(自主規制。適当な罵倒文句を入れてみよう)野郎、『軍隊に志願するのは厭だ』、とか抜かしていたのではなかったのですかね(笑)。全く、大人しく引っ込んで檀君に詫びを入れていればいいものを(爆笑)。マヌケ面晒してノコノコ出てくるのなら、我がSS装甲擲弾兵師団の好餌にしてくれましょう(キッパリ!)」
まだ出撃前だと言うのに、すでにルドルフ将軍は勝利を確信している。里在三将軍麾下の軍など、屁でもないと思っているようだ。
「将軍閣下、最初から敵を舐めてかかるのは、さすがにいかがなものかと思いますけどね」
すかさず、グラス・スカイラーク中佐がルドルフ将軍を諫める。敵を呑んでかかるのは悪い話ではないが、最初から完全に舐めているのはいくら何でも困りものだ。
「すかいらーくサ〜ン、そんな事を一々イワン(笑)、もとい言わんでも解っていますって。アナタはワタクシがろくすっぽ情勢を考えず、根拠(笑)のない楽観論を述べているとでも思っているのですか?アドミラ〜ルみたいな事を言ってはイケマセンね」
とにかくルドルフ将軍は面白がっているようだ。スカイラーク中佐も、それ以上いうべき言葉がない。
ところで、地上侵攻兵力はすんなり決まったのだが、援護の海軍部隊の兵力と指揮官が問題だった。前回作戦の指揮を取ったトロローテン提督は退役後鬼籍に入ってしまい、すでにこの世の人ではない。艦船自体も、自慢の新鋭戦艦部隊は一隻が沈み、三隻は当分ドッグ入りで使用不能。取り敢えず空母部隊が健在だったので、そちらが主となる。対酉艦隊司令部の幕僚も全てミソがついてしまったので、総入れ換えになってしまった。
(第9回終了)
司令官に抜擢されたのは、ヨン・ベンリー提督(中将)である。はっきり言って、無茶苦茶不評な人事だった。と言うのは、ヨン提督のあだ名が「痴呆提督」である事だけでも解るだろう。若年性痴呆症に罹ってしまっているので、ひどい場合は10秒前に自分が言った事すらロクに覚えていないということである。どうも、過去の実績だけはあったそうなので、それによる順送り人事らしい。誰も文句が言えず、そのまま決まってしまったという事だ。更に、参謀長はジェスティ・ウメキ・テイラー提督(代将)。こちらはこちらで思いこみが激しく、人の言う事はろくすっぽ聞かない上、自分の思い付きばかり声高に訴えたがるという性格である。その上、相手によっては取り繕う為だけに、その場しのぎのテキトーなことを平然と放言するので、信頼度もほとんどないようだ。後で支離滅裂な対応を批判されても、何とも思わないどころか、「これほど皆の為に努力している私を支持しないとは、非国民、国賊である!」と言い出したりするような、どうしようもない難点の持ち主だった。作戦参謀ウエスト中佐、情報参謀○○○○○○、補給参謀ショウナー少佐、通信参謀ムクマー少佐と幕僚は一応揃ったが、組み合わせとしては総統、もとい相当こわひものがある。特に、○○○○の○○○○○○は、ヨン提督と○○○○○○○らしく、○○○○○○○○○○が常なのであった。とは言っても、年がら年中惚けていて訳が解らないヨン提督が相手なので、○○○○○○が○○で○○○○、○○○○している○○○○○○に○○○○である。○○○○○○自身も、テイラー代将と○○○○○○○○であるが、「○○○○○○○○○○」というのが、○○○○○であった。
作戦に参加する艦艇だが、当然空母「ヒストリー」「フューチャーシンキング」の二隻が中心である。更に、新造艦の空母「ボッタクリー」「モンキーボード」「ドッグボード」が加わり、空母5隻でほぼ400機の航空機の運用が可能だ。暦新島への上陸支援のエアカバーとしては十分な戦力であり、敵艦隊が出撃してきた場合でも、酉国海軍に空母はなく、水上艦艇だけを気にすればよいので、かなり楽に対処できる。敵の艦載機による空襲は警戒する必要はないのだから。戦艦も「百舌鳥」と「啄木鳥」がすでに沈没しており、可動艦は旧式戦艦の「鶏」しかない。「百舌鳥」級の新造戦艦一隻が就役したという情報は、もちろんちゃちゃちゃ海軍も掴んでいたが、それこそまさしく就役したばかりなので、数ヶ月は戦場に出てくる筈がないだろう。無理に出てきたところで、使い物にならないことは疑いないのだ。そもそも、空母5隻による400機にも上る航空打撃能力があれば、戦艦の一隻や二隻、何も恐れる事はない。むしろ、酉国海軍航空隊による酉国本土からの攻撃の方が問題だった。佐世宇世島まで来られるのだから、暦新島へエアカバーを与えることは、さほど難しくはない。しかも、酉京城内にも使用可能な飛行場はあるので、中継基地や不時着場としても使用可能であり、条件としては酉国側はかなり有利である。しかし、酉国陸軍航空隊は、酉京に駐留している部隊以外は、作戦不能だった。何しろ、酉国陸軍航空隊は、海洋上を飛行する訓練を全く行っていないのだ。地形と照合しながら進む、地文航法の訓練しか行っていないので、酉国では陸軍航空隊は海上を飛べないのである。ここは、ちゃちゃちゃ国とはまるで違うところだった。ちゃちゃちゃ国ではすでに、陸軍航空隊を主体にした空軍が成立しており、独立した戦闘単位になっている。「空軍だから海上は飛べない」ではさすがに言い訳にならないので、そういう事はない。とは言っても、ちゃちゃちゃ国から暦新島までは遠いので、それこそ戦略爆撃機でもないと往復は不可能であろう。やはりスーパーエントロピー機が必要になる。結局、ちゃちゃちゃ空軍は使用できず、母艦航空隊で上陸時と以後の戦闘の航空支援を行うしかない、ということだ。
(第10回終了)
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