悪ふざけ架空戦記2   暦新島上陸作戦




第41回〜第50回









「敵機大編隊接近中、敵機大編隊接近中!!迎撃戦闘機は全機発進、対空戦闘に備えよ!!」

 ヨン艦隊本隊の方では、一航戦・二航戦が防空戦闘の準備に追われていた。しかし、真剣にやっているのは一航戦だけで、二航戦は司令官のワイルドキャット少将が「阿呆司令部どもを震え上がらせる」方法の考案に熱中していたので、空母の飛行甲板上で待機していた上空警戒機12機が、戦闘機中隊指揮官の判断で上がっただけである。それに対し、一航戦の方は、全戦闘機を発進させつつあった。「フューチャーシンキング」「ヒストリー」には「アンジェロ」常用30機・補用2機が、それぞれ搭載されている。常用機だけでも両艦で60機、二航戦と合わせて72機であった。取り敢えず、艦隊上空を守るのにはこれだけあれば充分だろう。しかし、この期に及んでも、ヨン艦隊司令部のある三航戦は、何もしていない。ヨン提督もテイラー提督も、何の指示も出さないので、それはそれで仕方ないのだが。

「まったくもぉ〜、一体全体、何をどうやったら、こんなに訳の解らない戦闘指揮になる訳?そもそもあたいらは、とうの昔に出撃していないとおかしいぢゃないの!!」

「フューチャーシンキング」では、スター・プラスチック少佐がぶんむくれている。本来なら、黎明と同時にスター・プラスチック隊は出撃して、今頃は暦新島に爆弾を雨霰と降らせている筈なのだ。それがテイラー提督の「攻撃は許可しない」で、「フューチャーシンキング」に留まったまま、敵攻撃機の襲来を迎える羽目になっている。艦に爆弾や魚雷を喰らった場合、何もせずに本国に帰投になるか、最悪艦が沈めば海水浴の運命もあり得る状況だ。母艦航空部隊の強力な航空兵力をもって先制攻撃を行い、優勢を確保するなど本来常識の範疇の話である。

「ちょいと、艦隊司令部の連中に、あたいの名前で言ってやってよ!『やる気があるの?この穀潰しの能なし司令部連中!!何処の阿呆が、戦闘指揮をやっているのよ(怒)?!』って」

 エライ過激な言いようだが、そう言われた一航戦通信参謀のライカ少佐も、ヨン艦隊司令部の面々にはいい加減うんざりしていたので、そのまま司令部に打電してしまった。

「返事が来ました」

 三分ほどして、ライカ少佐は司令部からの返事を持ってきた。文面は以下の通りである。


「スター・プラスチック様、こっちも怒っている。

ウエスト中佐」


 何だこれは?と顔を見合わせる二人であった。

「おほほほほ、どうやら莫迦が更に増殖したみたいね。水に落ちた阿呆は叩けということで、次行くわよ!」

 ケタケタ笑いながら(←ここ、実はかなり「怒」マーク入ってます)、スター・プラスチック少佐は更に電文を打たせた。以後、しばらくやり取りが続く。


「だからどうなのよこのオタンコナス。ロクに仕事をしていないクセに、偉そうに威張るんぢゃないわよ!」


「真面目に軍務に勤しんでいるとは思えないような輩には、この程度で十分である。『鳥を籠に入れる会』支部副会長の立場にありながら、あっさりと脱会したヘリーのような卑怯女のことを忘れてはならない。

ウエスト中佐」


「ちょっと待ってよ!そりゃあたいはおかまだけど、別に仕事に手を抜いている訳ぢゃないわよ!!それに何?ヘリーさんがこの件について一体何の関係がある訳?!そんな下らない当て擦りなんか、何の意味もないぢゃないの!!無関係な女人を貶めてどーすんよっ!!!!」


「別に下らぬ当て擦りをやっているつもりはない。真剣に抗議している。『鳥を籠に入れる会』は、公的組織である。その支部副会長は公人であり、女人だからといって批判を免れる訳ではない。私は、『仲良し倶楽部』には入りたくない人間であるし、女人だという理由で差別することもない。批判すべき相手は批判する。

ウエスト中佐」


「知らんがな!そなもん!!一体何で『鳥を籠に入れる会』の話なんか出す必要があるのよ!論点シフトやっても疑問も持たないようなオカシナ人には、天下国家を語る資格なんかないわね。このイカレポンチ!!


「スター・プラスチック様。
 貴兄が『○○○おたく自閉症』でなければ公開の場で、私が『天下国家を語る資格なし』なのか、ご説明頂きたい。

ウエスト中佐」


「あたいはそこまで親切ぢゃないの。そんなことは自分で考えなさい!それぢゃおかまにも笑われるわよ、味噌汁で顔を洗って出直してこ〜い、このアンポンタン!!


「おかまとは、ゲイの未来について真剣に考え、実際に活動なさっている方のことを言う。貴兄のようなものは、『ゲイごっこ』『おかまごっこ』という。

ウエスト中佐」


 ・・・だんだんやり取りが訳が解らなくなってきたところで、ついに最悪の状況に陥る。
(第41回終了)




 もちろん、「対岸の火事に、嬉々としてガソリン注ぎ酸素ボンベを投げ込むような性格」の人物が、介入してきたからだ。その人物に、こんな面白いネタを放っておけ、と言っても多分無理だったろう。

ギャハハハハハハー、大丈夫やみぃ?ナンデスカその『ゲイの未来について真剣に考えている人』というのは。小生はそんなイカレポンチな人など、見たことも聞いたこともアリマセンが。後学のために是非そのイカレポンチを見物したいと思いますので、どこに行ったら『ゲイの未来について真剣に考えている人』に逢えるのか、教えてくれマセンか?ヨロピクお願いします

 まるっきり挑発そのものの、ワイルドキャット少将の割り込みであった。しかも、更に畳みかける少将である。

「それにナンデスかね?『鳥を籠に入れる会』がそんなにエライのですかね。小生は寡聞にして知りませんでした。いつ、『鳥を籠に入れる会』の活動家が、一般軍人の上位価値になったのですかな?小生は、日常の軍務を地道に行っている一般軍人は、十分偉いと思いますよ。しかしまあ、艦隊司令部の作戦参謀というのは、そこまでブチキレていても勤まるものなのデスかね。オモピロくて笑いが止まりません。『鳥を籠に入れる会』のことといい、もうちょっと認識を改められた方がよろしかろう。

庵野秀明


 ・・・・・・どうやらワイルドキャット少将の介入は、劇的に効果を上げたようで、ウエスト中佐はそれっきりダンマリを決め込んでしまった。ウンともスンとも言わなくなってしまう。しかもその後、どこからともなく次から次へと入電が続く。


「結局のところ、ヘリーさんに対する当て擦りであって、今回の戦闘指揮とは何の関係もないことを追認するものですね?

超人ゴトー一飛」


「『鳥を籠に入れる会』が全てに優先するのですか?それに、『ゲイの未来について真剣に考え、実際に活動なさっている方』がどうかしたので?!自分がやっている事だけが、無上の価値であると思いこまない方がよろしいでしょう。そんなことをやっていると、誰にも相手にされなくなりますよ。

陸軍工兵隊プッツン少佐・軍刑務所にて」


「正直、『私は「仲良し倶楽部」には入りたくない人間』というフレーズには薄ら寒くなりました。今どき、ツッパリ高校生でも言わないような野卑で陳腐なフレーズです。私は海軍の基本は礼節だと思っていますし、その礼節が「仲良し倶楽部」と映るのなら、それはそれで仕方がありませんが、『鳥を籠に入れる会』の話が、今回の作戦と何の関係があるのですか。何もないでしょう。

マッキートニー大佐・ドッグボード艦長」


いつの間にか、盛り上がってますねっ!ヘリーさんのことは、よろしくご理解願いましゅっ!!

グラスドッグ伍長・戦略空軍」


「私怨でネチネチと個人をあげつらい、話を本質から逸らすのは止めて下さい。今回の作戦と関係ないこと以外は、例え公の会の話であろうと『私』でしかありません。

コーメ」


 「ヘリーさんへの非難」への同調者を得られるどころか、逆に何人にも責め立てられ続けたウエスト中佐は、遂に頭の血管がブチキレて卒倒し、艦内病院にタンカで運ばれて行ってしまう。どうやら、四面楚歌の状況に、精神が耐えられなかったようだ。もともと、精神的に強いタチでもなかったらしい。
(第42回終了)




 中佐が退場したあと、後に残っているのは、実質的にヨン提督とテイラー提督だけになってしまっている。何を考えているか解らないこの二人が、ロクでもない結果を引き起こすことは先ず間違いないところだが、どちらにしてもウエスト中佐自身もイカレてしまっていたので、大して違いはないかも知れない。それにしても、間もなく敵機が攻撃してくるというのに、艦隊司令部と航戦司令部の間でこんな訳の解らない喧嘩をやっているのでは、ちゃちゃちゃ海軍は「おかしい」などというレベルどころではなく、「イカレポンチ」そのものになってしまったかも、というところだろうか。

 そんな訳の解らないことをやっているうちに、艦隊前方の空域では、大規模な空中戦が始まっていた。一航戦・二航戦の戦闘機隊が酉国海軍航空隊に襲いかかり、乱戦模様となっているようだ。



 ショーゴ中尉の「アンジェロ」戦闘機は、ヨン艦隊の偵察にやってきた「舌切雀」を迎撃した後一旦着艦し、燃料と弾薬の補給を行って、再度の出撃準備が整ったところだった。しかし、中尉機の着艦と入れ替わりに出ていった12機以降、戦闘機の発進命令がまるで来ない。実のところは、その12機も現場レベルで勝手に出したものであって、二航戦司令官ワイルドキャット少将の判断ではなかった。少将は相変わらず「阿呆司令部どもを、震え上がらせるような事を何か考える」ことだけに熱中しているので、それ以外の事はまるで気にしていないのである。

「いつになったら発艦できるのかなぁ・・・・」

 ショーゴ中尉は「アンジェロ」のコクピットで、困ったような声をあげていた。さっさと再発進して空戦に加わりたいのだが、発艦命令がまるで来ないのだ。中尉の「アンジェロ」は「ボッタクリー」の格納庫内で待機したままである。暦新島への攻撃準備は行われていないので、発進待機している戦闘機があるのなら、さっさと発艦させて防空戦に使用した方がいいに決まっているのだが、何故か発進命令が来ないのでは、どうしようもないところだ。それでもまだ、飛行甲板上で待機しているのなら、ショーゴ中尉機と入れ違いに出ていった戦闘機12機のように、現場の判断で発艦することも可能かも知れないが、格納庫内からではどうしようもない。上からの命令なしに、勝手にエレベーターを使う訳にはいかないからだ。

 間もなく、連続的な対空砲火の音が聞こえてきて、ほとんど同時に艦も回頭を開始した。こうなれば、もはや発艦どころではない。ショーゴ中尉は慌てて機体から飛び降りると、搭乗員待機所へ向かった。


 ヨン艦隊前方の空域で展開された空中戦は、迎撃側が圧倒的に有利だった。迎撃に飛び立った「アンジェロ」は72機あったのに対し、攻撃隊は総数で68機しかいない。戦闘機の「舌切雀」は半数以下の32機。倍以上の敵戦闘機相手に、攻撃隊を守りきれる訳もなかった。
(第43回終了)




 最初は遠巻きにしていた「アンジェロ」隊だが、酉国海軍攻撃隊を囲むように四方八方に展開した後、一斉に突っ込み、銃撃を開始する。「舌切雀」の方も応戦して来るが、防御ラインはあっさり突破され、「アンジェロ」隊は「伝書鳩」と「信天翁」に取り付き、好き勝手に撃ちまくる。それを阻止すべき「舌切雀」は、他の「アンジェロ」との空戦に追われていて、救援に来ることはできない。「アンジェロ」は「舌切雀」にとっても強敵であるのに、爆弾や航空魚雷を抱いた鈍重な陸爆や陸攻では、抵抗することは不可能だった。たちまち火を噴きながら墜落するもの、搭載した爆弾や魚雷に機銃弾が命中したのか、一瞬で砕け散るものなどが続出する。「伝書鳩」も「信天翁」も、後部機銃でか細い抵抗を行ってはいるのだが、滅多に命中しない上に、防弾も優れている「アンジェロ」には、仮にまぐれで2〜3発命中したところで、ほとんど効果はない。

 それでも、「伝書鳩」4機が囲みを突破し、三航戦の「ドッグボード」の上空に迫った。「信天翁」の方は3機が死の罠から逃れ、二航戦の「ボッタクリー」に迫る。


「敵機4機、本艦直上!」

「とりかぁーじ!」

 対空見張り員の報告とともに、「ドッグボード」艦長のマッキートニー大佐は、回頭の指示を出す。右でも左でもいいのだが先ずは軽く当て舵をやっておき、敵機が急降下してくると間合いを見計らって舵を一杯に切り、爆撃を回避する。大艦を素早く回頭させる為のテクニックだが、それは「家鴨」の図茂艦長のみならず、マッキートニー大佐も当然承知していることだ。その間にも「ドッグボード」の高角砲と機銃群は仰角を上げ、上空から迫り来る「伝書鳩」に照準を合わせる。「ドッグボード」周囲のエスコート艦群も、同じように高角砲・機銃の照準を合わせた。

「敵機、急降下開始!」


 先頭の「伝書鳩」がグラリと機首を下げると、高度五千メートル付近から猛然と急降下を開始した。残りの3機も先頭機に続き、一直線に「ドッグボード」を目指す。

「取り舵一杯!」

 頃合いを見計らって、マッキートニー大佐は回頭を命じた。最初は舵の利きが悪いが、予め舵を切っている効果はあって、回り始めたら急速に曲がって行く。

「高角砲、射撃始め!」

「ドッグボード」とエスコート艦群のVT信管付き五インチ砲が、直上から迫る「伝書鳩」に雨霰と浴びせられ始めた。たちまち、先頭の「伝書鳩」が至近距離で爆発した砲弾に絡め取られ、火を噴いて墜落してゆく。二番機はほとんど直撃状態で、砲弾が命中すると一瞬で爆発してしまった。更に、三番機は爆弾投下寸前に撃墜され、辛うじて投下に成功した四番機は、そのまま降下して海面スレスレの高度を待避している時に、エスコート艦の機銃射撃で撃墜された。結局、「ドッグボード」を攻撃した「伝書鳩」はこれで全滅である。四番機が投下した爆弾も、大きく逸れてしまい空しく水柱をあげただけだ。「ドッグボード」への攻撃は、全く効果がなかったようである。


「右舷より雷撃機3機接近中!距離三千メートル!!」

「ボッタクリー」の方には、「信天翁」3機が接近してきていた。海面を這うような低高度で接近し、魚雷を投下しようというのである。

「面舵一杯、急いで!」

「ボッタクリー」艦長のルジール大佐が命じた。魚雷の回避は艦と魚雷の進行方向を平行にし、対向面積を最少にすることで行わなければならない。それでも運が悪い時は命中してしまうが、それはそれで仕方がないのである。運不運はどのような戦場にでもついてまわるものであるのだから。

「ボッタクリー」は右に急旋回し、向かってくる雷撃機に艦首を向けるような形になった。その間にも、高角砲と機銃は全力射撃を続けている。「ボッタクリー」のみならず、エスコート艦からも撃ち上げられている対空砲火は、たちまち向かってきた「信天翁」2機を絡め取り、撃墜された機体が海面に飛沫を上げた。それでも残りの一機は魚雷投下に成功し、白い筋が「ボッタクリー」の方へ向かってくる。

「魚雷接近!本艦左舷五十メートル!!」

 五十メートル離れているのでは、これは命中することはない。「ボッタクリー」に迫ってきた魚雷はそのまま通過していった。

「残りの敵機一機、エスコート艦の対空砲火により撃墜!」

 離脱しようとしていた残りの「信天翁」もあっさり撃墜され、二航戦を攻撃した敵機もこれで全滅である。結局、酉国海軍航空隊はちゃちゃちゃ艦隊の鉄壁の防空を突破し有効打を与えることはできなかった。
(第44回終了)




「ホラ見なさいよ!運良く被害はなかったみたいだけど、好き勝手に攻撃されているだけぢゃないの!!どこの莫迦の責任よ、これは!!

 ウエスト中佐を黙らせて若干は溜飲を下げたスター・プラスチック少佐であるが、更にそれ以上にどうしようもない艦隊司令部が健在で意味不明の戦闘指揮をやっているのでは、不愉快なことには変わりはない。少佐としては、いっそのこと「ドッグボード」に一発喰らって司令官と参謀長が戦死でもしてくれた方がマシぢゃないか、と思い始めている。そうなれば、一航戦・二航戦で自主的に判断しての作戦が行えるようになるだろうからだ。

「どうしようもないですね、今のままでは。まあ、敵の攻撃隊の数も能力も今ひとつなので、何とか凌げるかも知れないですけど。結局、三航戦と二航戦を攻撃した敵機は、全滅したようですから」

 一航戦司令官のゾック少将が、スター・プラスチック少佐を宥める。

「そういう問題ぢゃないのよ!阿呆どもが莫迦な作戦計画を立てているのに、あたいらが何もできないことが問題なんぢゃない!『結果良ければ全て良し』って訳ぢゃないわよ!」

 スター・プラスチック少佐はかなりムカムカ来て、プリプリ怒っているようだ。それを聞いて、ゾック少将は苦笑せざるを得ない。



 暦新島上空に到達したオカスカ少尉の「カネカシテクレー」機は、上空五千メートルを旋回しつつ、地上の様子を監視していた。とうの昔に発見されている筈なのだが、何故か迎撃戦闘機は上がって来ない。

「暦新島南側の海岸線、上陸予定地『ウツケ海岸(仮称)』には敵影なし。防御陣地らしきものもなし。まるで無防備のようです。敵は、内陸にしかいないようですね(笑)」

 カドワーキ二飛は笑いながら双眼鏡を覗き、地上の様子を観察している。

               (↓ここ、重要です)
「本当に大丈夫ですか?しっかりと何度も見てから報告するようお願いしますね」
(↑ここ、間違えると大変なことになります!!)

 オカスカ少尉は、相変わらず楽しそうなカドワーキ二飛に、慎重に偵察するよう指示した。しかし、カドワーキ二飛は、オカスカ少尉の言うことは、あまり聞いてはいないようだ。

「酉京市上空に敵機なし(笑)。周辺に見える飛行場にも、機影は見えないようです。今のところ敵機の迎撃はなさそうですね。おや・・・あれは・・・・」

 カドワーキ二飛は、酉京市の先の港の沖合に、大型の戦艦が浮かんでいるのを目にしたようだ。

「雑談港沖に、敵戦艦一隻発見!シルエットは・・・・間違いありません、『百舌鳥』級戦艦(笑)です!!

 カドワーキ二飛は、「百舌鳥」級戦艦の実物を見たことはないが、写真で見たシルエットと頭の中で比較し、しばらくしてから断言した。

「おお、『百舌鳥』級戦艦ですかっ!!」

 ゴトー一飛も感嘆したような声を上げた。「百舌鳥」級戦艦は、ちゃちゃちゃ海軍の誰もが最大最強の敵艦として認識している。その「百舌鳥」級戦艦を目前にすれば、普段とは違う感情も起ころうというものだ。

「ゴトー一飛、艦隊に打電して下さい。『我、雑談港沖に『百舌鳥』級戦艦一隻を発見!』」
                        (↑ここ、楽しげにお願いします)

 オカスカ少尉の指示で、ゴトー一飛はすぐさま電鍵キーを叩き、暗号文を放った。
(第45回終了)




「『百舌鳥』級戦艦一隻発見」の報は、恐ろしく早くヨン艦隊にもたらされた。当然一航戦でもその報は傍受され、それを聞いたスター・プラスチック少佐は色めき立つ。

『もづ』が居たとなれば、当然あたいの出番よね。少将、いいわよね?」

 少佐は一航戦司令官ゾック少将に出撃を求める。しかし、ゾック少将は困った顔をしたままだ。

「お気持ちはよく解るのですが、何しろ艦隊司令部から出撃禁止命令が出てますからね。いかに司令部が訳が解らないにしても、こちらで勝手に命令を変更する訳にもいきませんし。残念ながら、どうしようもないです」

「すると何?『もづ』がウロウロしているのに、指をくわえて見ていろってーの?」

「そうですね、どうしようもないです」

 ゾック少将の「匙を投げた」と言わんばかりの諦めきった口調では、スター・プラスチック少佐も怒りのぶつけようがない。

「あたいの機体に、爆弾取り付けて貰う訳にはいかないかしら?『ドックボード』の艦橋に一発ぶち込んで、阿呆司令官と莫迦参謀長をあの世に送っておかないと、マトモな戦争にならないわよ、本当に」

 スター・プラスチック少佐はそれだけを言うと、敬礼しゾック少将の前から去った。いくら何でも、本当に「ドッグボード」に一発ぶち込む訳にはいかないだろう。今すぐにそうしたいとしてもだ。それに、これ以上苛立ちを少将にぶつけても仕方のないことでもある。



「酉京市上空を、敵偵察機旋回中」

 暦新島駐在の酉国陸軍司令部からも、「カネカシテクレー」偵察機が上空をウロウロしている姿は目に入っている。里在三将軍も、司令部の窓から、その姿を視認していた。

「領空侵犯した上に、領空内に居座ったまま動こうとしないのでは、撃墜しても問題ありませんね。直ぐに航空隊に連絡して下さい」

 里将軍が命じるが、はっきり言って対応が遅い。「敵機動部隊接近」の報が入ってから時間はそれなりに経っているのだから、酉京市上空には常時直援機を貼り付けておいてもいいくらいである。どうやら、里将軍には「戦争をやっている」という自覚は薄いようだ。

 里将軍の命令で、陸軍航空隊基地から「矢鴨」戦闘機10機が発進し、上空の「カネカシテクレー」機に向かって行く。



「左舷側、7時の方向下側より、敵機(笑)接近中、数は十機!」

 周囲を見回していたカドワーキ二飛は、下から迫ってくる「矢鴨」戦闘機を発見していた。ちなみに、海軍の場合は飛行機であっても「左舷・右舷」と呼称する。

本当ですか!!!!敵機の機種は、何でしょう?!」
            (↑ここ、思わず感嘆符を四つ付けてしまいました!)

 オカスカ少尉は、カドワーキ二飛に機種を確認する。

「敵は・・・・・『矢鴨』(笑)ですね。もの凄い勢いで上昇してきます」

 本当なら、余裕コイていられるような状況ではない筈だが、カドワーキ二飛はそれでも楽しそうだ。まあ、実際カドワーキ二飛の余裕にも、根拠(笑)がない訳ではない。

「少尉、ここは一つ、甘酒進上と行きませんか?」

 ゴトー一飛が提案した。

               (↓ここ、絶対に間違えないようお願いします!!)
「いいでしょう。それでは、タイミングをよく見ておいて下さい」

 オカスカ少尉は、カドワーキ二飛に指示を出す。

「諒解しました(笑)」

 二飛は手短に答えると、接近してくる敵戦闘機の方角を見据える。「矢鴨」の群は、急上昇しながら、「カネカシテクレー」の方へ向かってきた。間もなく、両翼に機銃の発射炎が見え始め、曳航弾の火箭が「カネカシテクレー」の周囲を通過する。

「ようそろ、ようそろ、ようそろ、よーし、今です(笑)!

 カドワーキ二飛の合図と同時に、オカスカ少尉はエンジンの回転数をフルに上げた。たちまち、「カネカシテクレー」は、何かに蹴飛ばされたかのように加速し、「矢鴨」を引き離し始める。エンジンが轟音を発し、機体があげる風切り音も凄まじいものとなった。「カネカシテクレー」の最高速度は時速698キロ、「矢鴨」の最高速度は時速624キロ。速度差が74キロもあるのでは、全速を出した「カネカシテクレー」に、「矢鴨」が追いつく道理がない。「矢鴨」隊はそれでも諦めず、しばらく「カネカシテクレー」を追ってきたが、引き離される一方なので、その内に反転してしまったようである。

「ゴトー一飛、本隊に打電して下さい。『我に追いつく矢鴨なし!』
                        (↑ここ、勝ち誇るかの如くお願いします!!!!)

「諒解しました」

 ゴトー一飛は電鍵のキーを叩き、ヨン艦隊本隊に「我に追いつく矢鴨なし!」を送信した。暗号は必要ないと思ったので、平文である。
(第46回終了)




「我に追いつく矢鴨なし!」との電文は、輸送船上の進攻部隊でも受信された。打ち出された電文を見て、ルドルフ将軍は爆笑する。

ギャハハハハハー、海軍にも、なかなか気の利いたことをやる方がいるようですネ。いや、実に楽しい電文(笑)ぢゃアリマセンか」

 ケタケタ笑っているルドルフ将軍である。ちなみに、これは日本の高速偵察機が、同じように米軍の戦闘機を振り切って「我に追いつくグラマンなし」と打電した、という有名な事例に倣っている。ルドルフ将軍は、当然由来を知っているので、バカ受けしていたのだ。

「こうなっては、ワタクシも負けている訳にはいきません。こちらも、あれを出しましょう(キッパリ!)」

 はしゃいでいるルドルフ将軍に対し、傍らのスカイラーク中佐は渋い顔だ。

「将軍閣下、面白がってそんなことをやったら、敵にこちらの意図を察知されるかも知れませんよ。閣下がやろうとしていることの、意味を知っている者がいてもおかしくはないんですから」

 しかし、ルドルフ将軍は、スカイラーク中佐の苦言をまるで聞くつもりはないようだ。

「ハハハハハー。すかいらーくサンは心配性ですね。大丈夫、酉国でコレを知っている奴なんか、いる訳アリマセンよ。ということで例のやつを、よろしく頼みますネ。確認しておきますが、文面は『秋の日の ヴィオロンの ため息の』(笑)です。時間を置いて、最低三回は繰り返し放送してクダサイ」

 将軍が言った文面は、オーヴァーロード作戦、ノルマンディー上陸作戦の前夜、ロンドンのBBC放送局からフランス・レジスタンスに向けて放送された、作戦決行の符丁であった。「暦新島上陸作戦」にあたり、ルドルフ将軍もそれに倣おう、という訳である。とは言っても、ノルマンディー上陸作戦とは違い暦新島にレジスタンスがいる訳ではないので、一々電文を打つ意味は全くない。単に、ルドルフ将軍が面白がって、やらせようとしているだけである。むしろ、酉国にこの文面の意味を知っている者がいた場合、こちらの意図を察知されてしまうだろう。

「本当に、どうなっても知りませんからね、私は」

 うんざりしているスカイラーク中佐であった。

「すかいらーくサ〜ン、何かの間違いで酉国でコレを知っている奴がいて、妄言将軍里在三(笑)にこちらの考えを知られたところで、構わないぢゃないですか。むしろ、それくらいの方が、多少なりとも歯ごたえ(爆笑)が出て、オモシロイというものです(キッパリ!)」

 ルドルフ将軍としては、里将軍など屁でもないと思っているので、事態が面白くなることなら、何をやっても構わないと考えているようである。
(第47回終了)




 ルドルフ将軍の座乗する輸送艦「ブリツクリーク」号から、ほとんど全世界に向け放送するように「秋の日の ヴィオロンの ため息の」の文句が流される。何度か繰り返したそれは、当然里将軍の司令部でも傍受されていた。

「何でしょうね?これは。どうやら、南方から接近している敵の艦隊から発せられたようなんですが、何の意味があるのだかさっぱり解りません」

 里将軍だけでなく、可口可楽大佐も首を捻っている。どうやら、二人とも由来を知らないらしい。それも、二人だけでなく、里将軍の司令部では、やはり誰もこの件については知らなかったようだ。どうやら、ルドルフ将軍の見通しは正しかったようである。酉国では、戦史研究所所長のの亜論有府亜大佐などの少数を除き、一般的な軍人の戦史の知識は今ひとつ、という傾向が強い。里将軍も、「今ひとつ」の方に入っていたようだ。

「何だかはよく解りませんが、どうも我々の知らないまともでもない計画が、着々と進んでいるような悪い予感がします。部隊に、警戒態勢を取らせましょう」

 里将軍は電話を取ると、麾下の各部隊に警戒レベルを上げ、即時臨戦態勢を取ることを命じた。



何ということです!!第一次攻撃隊が壊滅してしまうとは!!」

 暦新島駐在酉国海軍第6航空艦隊第222航空隊司令、院地気大佐は嘆息していた。南方に発見した敵機動部隊への攻撃隊を出したはいいが、敵の防空戦闘に阻まれ、爆撃機と攻撃機はほぼ全滅してしまった。第一次攻撃隊で帰って来たのは、戦闘機がほとんどである。それ以外は、エンジンの不調で引き返したものや、被弾して攻撃を中止し、爆弾や魚雷を捨て、引き返したものばかりであった。マトモに敵空母を攻撃した機は、全て撃墜されてしまっていたのだ。

「司令、第二次攻撃隊の発進中止を提案します。どうやら敵の戦力は、並大抵ではない模様。更に攻撃を続行しても、結局は戦力の逐次投入になってしまい、攻撃は失敗に終わるでしょう。それよりは、敵が間合いを詰めてから、奇襲的に投入すべきかと思います。取り敢えず用意させている第二次攻撃隊用の機体から攻撃装備を外し、分散させて偽装し、隠蔽しておくべきかと」

 第222航空隊副司令の左木機中佐は、攻撃中止を院地気大佐に進言した。それなりの規模の第一次攻撃隊が壊滅してしまった以上、更にこのまま攻撃を続行したところで、戦果をあげることはできないのは目に見えている。一応、第二次攻撃隊として、戦闘機28機、陸爆20機、陸攻20機を出す予定で準備をさせており、更に第一次攻撃隊の生還機と予備機を合わせ、第三次攻撃隊を編成し、敵に止めを刺す筈だった。しかし、実際のところは、第一次攻撃隊は攻撃隊の数を上回る多数の敵戦闘機に迎撃され、甚大な被害を受けてしまっている。

「いいでしょう。このまま、前と同じ規模の攻撃隊を放ったところで、上手くいかないのは解りきった話です。第二次攻撃は中止し、様子を見ましょう。それと、本国に連絡して増援の要請を」

 院地気大佐は左木機中佐の提案を受け入れ、攻撃隊の発進を中止させた。その上で、鳥酉艦隊司令部に一報を入れ、航空機の増援を要請する。そうでもしないと、敵の航空戦力に圧倒されるとしか思えなかったからだ。
(第48回終了)




 酉国海軍鳥酉艦隊司令部で、この増援要請の電文を受け取ったムエ少佐は、早速田岡参謀長に報告した。

「参謀長、暦新島の第222航空隊から増援の要請です。戦況はあまりよろしくない様子。この要請に応じ、本国の航空隊から戦力を抽出し、暦新島への移動を命じるべきかと思いますが」

 ムエ少佐の報告に、田岡参謀長は訳の解らない答をする。


「田岡は、この電文だけでは、増援を送るべきかどうかは判断できないと思うぞ。
#第222航空隊の院地気大佐は、
#敵戦力は空母3隻を含む大艦隊だ、と言っているようですが、
#この言動には根拠がありません。
#根拠のない物言いは、厳に慎まなければならない。
#大艦隊がいることを示したいのなら、
#証拠をあげて論証しなければいけません。

 証拠がない以上、暦新島南方に大艦隊がいるとは認定できません。
 大艦隊がいるとは言えない以上、増援を送るべきではないと田岡は思うぞ


 参謀長に意味不明な反論をされ、ムエ少佐は困ってしまう。これに更に反論したところで、泥沼の無限ループ状態になってしまうのは解りきった話だ。仕方がないので、話を司令長官の米鉢次帥の方に振ることにした。

「参謀長はこのように仰られているようですが、長官閣下のお考えはいかがでしょうか?」

 米鉢次帥に話を振ったムエ少佐だったが、これは失敗だったかも知れない。次帥は、とんでもないことを言い出したからだ。

「それでは、万一の事態に備え、核武器の用意をしておきましょうか。一撃でカタが付きますので、最悪の場合でも何とかなります」

 さすがに、これを聞いてムエ少佐は仰天した。

「か、か、か、核兵器ですか?それはいくら何でもやりすぎなのでは。それに、暦新島は敵地ではなく酉国領ですよ?!領内で核兵器を使うなど・・・・・・」

 絶句してしまうムエ少佐である。しかし、米鉢次帥は平然と言い放った。

「勘違いしないで下さい。必ず使用する、と言っている訳ではありませんね。あくまで最悪の事態に備える、という意味です。しかし、外道な敵が、酉国の尊厳を侵すようなことを行った時には、躊躇はしませんが。それと細かいことですが、『核兵器』ではなく、『核武器』です。偉大なるチョソン民族は、そう呼びますので」

 妙なことにこだわる米鉢次帥である。それにしても、いきなり核の用意とは、過激なことを考えるものだ。ルドルフ将軍でもそこまではやらない。
(第49回終了)




「ところで、第222航空隊から要請のあった航空機の増援は、却下するということで返事をしてよろしいのでしょうか?」

 ムエ少佐が問うが、米鉢次帥は知らん顔だ。大して興味がないらしい。その問いには答えようとはしなかった。

「司令長官閣下は、そんな細かいことまで気にはせんのや。適当に返事しときぃ」

 田町大佐が代わってムエ少佐に答える。結局、院地気大佐の航空機の増援要請は、鳥酉艦隊司令部ではマトモに取りあわれることはなかったようだ。



「静かになりましたね〜」  ヨン艦隊旗艦「ドッグボード」では、ヨン提督が暢気な台詞を吐いている。酉国海軍の攻撃機が撃退され、戦闘が終了したあと、静かになったところでの出来事である。何も戦闘がどうのこうのというだけでなく、○○○○○○○○○○に○○○くる○○○○○○は○○に○○○○○で○○○○○○○○○○○○○○し、ウエスト中佐は卒倒して艦内病院で治療を受けているしという状況では、それは静かにもなろうというものだ。

「あの〜、参謀長〜」

 ヨン提督は恐る恐るテイラー代将に話しかけた。

「ヤッ、ドモ。ドモドモ、ド〜モ、J.U.テイラーです。でわでわ。(^^)/」

 テイラー提督の方は、いつもの通りの受け答えだ。

「テイラー代将、少々お願いです。提督の得意のプロファイリングで、酉国海軍の今の心理を、分析してはもらえないでしょうか」

 ヨン提督は、テイラー提督にプロファイリングを依頼する。しかし、何でこんなことを突然言い出すのか、全く意味不明である。

「ヤッ、ドモ。ドモドモ、ド〜モ。でわでわ、僕の得意のプロファイリングの出番ですね(^^)/」

 ヨン提督も訳が解らないが、テイラー提督はそれに輪を掛けて訳が解らない。何の疑問も持たずに、「プロファイリング」に没頭し始める。しかも、何をプロファイリングしているのか、誰にも解らないところだろう。「酉国海軍の今の心理」といったところで、「酉国海軍」という人間がいるわけではないのだから。それでもその様子を見て、ヨン提督は嬉しそうに笑っていた。「プロファイリング」よっぽどに関心があるらしい。
(第50回終了)











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